アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

脱ステロイドで死ぬ?

脱ステロイドで死亡例?

医療関係者のなかには、脱ステロイドを目の敵にする人たちがいます。

そうした人たちは、脱ステ患者に脱ステロイドをやめさせるための方法や、ステロイド忌避患者に翻意を促すための方法を、あれこれと考えているようです。

いろいろと方法は考えられますが、相当に有効なのは、死のリスクを伝えることではないでしょうか。

 

「脱ステロイドで死ぬこともある」

 

と言っておそれさせることです。

 

次に引用するのは、皮膚科医の江藤隆史氏と小児科医の大矢幸弘氏の対談からの抜粋です。

ステロイド治療を受けていなかった子どもの死亡例が報告されたことから、ステロイド治療の必要性を説いています。

江藤 大矢先生は小児科医として、皮膚科も驚くほどアトピー性皮膚炎の治療に力を入れておられます。成人と小児のアトピー性皮膚炎の違いをお話いただけますか。

大矢 発症からの期間が短いことから、軽症の方が多いことが特徴です。また、自然に治癒してしまう人たちの割合も多いと言われています。しかし、重症の方たちの多くは乳児期、幼児期に発症しており、そのまま治癒せずに成人を迎えてしまう人もいます。

 私たちが注意しなければならない点は、軽症な人たちが多い一方、重症患者さんが一部におり、その人たちはきちんと治療しないと発達障害などの重要な合併症を起こすということです。中には生後半年を過ぎても首が据わらなかったり、次第に痩せてしまうお子さんもいます。新聞報道にもあったように、亡くなってしまう患者さんもおられます。

江藤 この間、新聞報道がありましたね。

大矢 ですから、子どものアトピーは軽いから自然に治るだろうと期待しながら、ステロイドを使わずに治療していると、場合によっては命取りになることもある。そのような怖さがあると思うのです。*1 

ステロイドを使わなければ死ぬこともあり得るなどと、恐ろしい話をしています。

 

ところで、この当時の新聞報道というのは、おそらく、宗教法人信者の家庭での乳児死亡例と思われます。

両被告の長男(当時7カ月)は昨年6月から体重が増えず9月以降はアトピー性皮膚炎が悪化したのに、両被告は協会の協議に沿って手かざしなどをするだけで病院に行かず、同年10月に敗血症で死亡させた。*2

この患者のケースは、病院等で治療を受けておらず、一度もステロイドを使用していないと推察されるので、脱ステロイドとは無関係でしょう。

また、乳児の死因は敗血症とのことです。アトピー性皮膚炎と敗血症の因果関係がわからず、ステロイドの不使用と敗血症の因果関係もわからないので、ステロイドを使わない治療が死亡の原因であったかは不明です。

そもそも、乳児が本当にアトピー性皮膚炎であったかもわかりません。

 

脱ステロイドで脳梗塞?

このように、脱ステロイドを批判したい人たちは、死に結びつけて、脱ステロイドの恐ろしさを説くことがあります。

より扇動的な脱ステ批判もあります。死亡例ではありませんが、脱ステで脳梗塞が生じたとする話をして、絶対に無茶な脱ステロイドをしてはならないと説いています。

ドクター牧瀬氏のサプリメントクリニックというサイトからの引用です。

最悪の例をあげましょう。30歳の男性です。ステロイド軟膏は危険だからということで、脱ステロイドを始めます。急に止めたため、当然、ひどいリバウンドがおこり、全身をかきむしります。 掻き傷が体中にできます。そこから、細菌が入り、心臓の弁にいたり、心臓弁膜症をおこします。そこで、開胸手術で、心臓の弁を人工弁に置換します。これだけでも、たいへんなことです。 しかし、それだけではすまなかったのです。人工弁にするとどうしても血栓ができやすく、それが脳に飛び、脳梗塞をおこし、幸い体の麻痺は残りませんでしたが、 軽い言語麻痺が残ってしまいました。アトピー → 無謀な脱ステロイド →心臓弁膜症 → 脳梗塞 という図式です。絶対に、無茶な脱ステロイドを試みてはいけません。*3

この話については、参照文献が示されていないので、事実かどうかもわからず、コメントのしようがありません。

ところで、ドクター牧瀬氏は、ステロイドの使用とともに、サプリメントの摂取を推奨しています。そのようなウェブサイトに掲載されている、脱ステロイドの危険をあおる話だということです。

 

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アトピー性皮膚炎に合併する感染性心内膜炎

ここまでは、印象操作といいますか、兎にも角にも脱ステ患者を怖がらせるための情報でした。

ここからが本題です。

脱ステロイドやステロイド忌避などにより、皮膚炎を放置していた場合に、感染性心内膜炎を発症するかもしれないという話です。 

 

死亡例もあります。

アトピー性皮膚炎患者に、黄色ブドウ球菌(MSSA)による急性感染性心内膜炎が併発し、最終的に細菌性脳動脈瘤破裂によると考えられる脳出血で亡くなったという症例です。

近年、アトピー性皮膚炎の治療に際し、ステロイドを忌避し、医療機関を受診しなかったり、自宅にひきこもったりする患者が問題となっている。そのため、アトピー性皮膚炎が重症化する可能性がある。一方、アトピー性皮膚炎患者の皮疹部からは、黄色ブドウ球菌が高頻度に検出される。さらに、重症例ほど細菌数も大量となる。アトピー性皮膚炎患者にときに黄色ブドウ球菌をはじめとする種々の細菌感染症が併発することがよく知られている。
今回、われわれは長年、治療を拒否し重症化したアトピー性皮膚炎患者に、メチシリン感性黄色ブドウ球菌(MSSA)により感染性心内膜炎、さらに播種性血管内凝固(DIC)を併発し、死亡に至った症例を経験したので、報告する。*4

脱ステロイドをすると、感染症が問題になることは、脱ステ医からも指摘されているところです。

黄色ブドウ球菌などの細菌感染や、カポジ水痘様発疹症などのウイルス感染、マラセチアなどの真菌感染などが代表的なところでしょう。

なかでもアトピー性皮膚炎患者における黄色ブドウ球菌検出率は、無疹部で約40%、紅斑部や苔癬化部、糜爛部で約90%、感染部で100%という報告があります *5

この、多くのアトピー性皮膚炎患者の皮膚から検出される黄色ブドウ球菌が、何らかの理由で、心臓に感染する可能性があるというのです。

アトピーで死ぬことはないといわれますが、アトピーに合併する感染症で死ぬ可能性があり、脱ステはそのリスクを高めるかもしれないという話です。

 

この話は、脱ステロイドを目の敵にする人たちにとっては、大変に都合の良い情報でしょう。そして、次のような指導がなされることでしょう。

「脱ステロイドをすると、皮膚炎が悪化して感染症にかかりやすくなります。皮膚から侵入したとみられる細菌が心臓に感染して亡くなった人もいます。」

「皮膚炎を放置しておくと死ぬこともあり得ますから、しっかりとステロイドを塗りましょう。」

確かに、感染性心内膜炎のリスクについては、認識しておくべき情報であると思います。

 

ただ、私自身は、次のようにも考えます。

感染性心内膜炎のリスクの発生頻度はどれくらいかということです。

私は、これまで、感染性心内膜炎にかかったという人に出会ったことはありません。

死ぬかもしれないと言うけれど、実際どれくらいのアトピー性皮膚炎患者が、感染性心内膜炎で死亡に至っているのかが重要な情報であると思います。

死ぬかもしれない脱ステロイドによるQOLの上昇と、ステロイド治療の副作用によるQOLの低下を、比較衡量して、前者のベネフィットが上回るのであれば、私は脱ステロイドを行う意思決定をします。

 

そこで、アトピー性皮膚炎における感染性心内膜炎の発生頻度について調べてみると、次のような参考情報が得られます。

アトピー性皮膚炎と感染性心内膜炎の関連を示すような症例報告は十数例が報告されているのみで,両者の因果関係を明確にした報告は少ない. *6

近年アトピー性皮膚炎と S. aureus による感染性心内膜炎との関連性が指摘されている.本邦の848例の感染性心内膜炎を調査した疫学研究では,5 例(0.6%)が基礎疾患としてアトピー性皮膚炎を有していたと報告されている.*7

これらの情報をみて、アトピー性皮膚炎における感染性心内膜炎の発生頻度が高いかどうか、それは個人の判断に委ねられるでしょう。

 

また、「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」における次の記述も参考となることでしょう。

ことにステロイド剤長期服用例や免疫不全状態にある例では感染の可能性が高いことが予測される.ときにアトピー性皮膚炎の患者が感染性心内膜炎を発症する例を経験する.両者の関連に関する明確なエビデンスはないが留意しておいてよいであろう.*8

 

リスクの発生頻度

上記に示したように、脱ステロイドやステロイド忌避と、死の危険を結びつける情報を目にすることがあります。

これは、嘘ではないでしょうけれども、具体的な事例や因果関係が明示されないこともあり、リスクの程度が不明確で、やや無責任な情報発信にみえます。

「よく分からないけど死ぬこともあるよ」と言っているように私には聞こえます。

このような情報に接した場合、死に至る場合の発生頻度を確認することが肝要かと、個人的には考えます。

私は、脱ステ患者が感染症でバタバタ死んでいるのであれば、免疫抑制剤の治療もやむを得ないと判断するでしょうし、そうでなければ、免疫抑制剤の副作用リスクの方がはるかに高いと判断することでしょう。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:江藤隆史, 大矢幸弘, 小児アトピー性皮膚炎の治療とは. 日本医師会インターネット生涯教育協力講座<アトピー性皮膚炎における外用療法の実際>実例を通して学ぶ診療のポイント 小児の場合ー1, 2011.

*2:毎日新聞2010.07.17, 西部朝刊, 25頁. 名前を伏せて引用.

*3:完治をあせる、危険なアンチ・ステロイド療法 | ドクター牧瀬の「アトピー性皮膚炎の完治を目指して」

*4:足立準ら, 感染性心内膜炎を併発し死亡したアトピー性皮膚炎の1例. 皮膚・第42巻・第2号・2000年4月, 148-152.

*5:平田雅子ら, アトピー性皮膚炎における黄色ブドウ球菌―皮疹部,無疹部における黄ブ菌検出率,ファージ型および薬剤感受性について―, 日本皮膚科学会雑誌 Vol.104 (1994) No.11 p.1353-.

*6:深川一史ら, アトピー性皮膚炎を基礎に発症した感染性心内膜炎の2例. 日本内科学会雑誌第101巻第6号・平成24年6月10日.

*7:福光研介, 鈴木雄二郎, アトピー性皮膚炎と心室中隔欠損症に合併した右心系感染性心内膜炎による敗血症性肺塞栓症の1例. 感染症学雑誌第86巻第3号, 2012.

*8:宮武邦夫, 赤石誠, 川副浩平, 北村惣一郎, 中澤誠, 中村憲司, 他:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版). 日本循環器学会. 2008.