アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

アトピーにはどんな石けんがよいか

アトピー性皮膚炎の人は、どのような石けんを使ったらよいのでしょうか。

石けんの良し悪しについて、色々な人たちが、色々なことを言っています。

本稿では、主にアルカリ性と弱酸性の性質の違いを中心に、アトピーと石けんについてみていきます。

 

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弱酸性支持派が多い印象

まずは、環境再生保全機構の情報誌から。

石けんは弱酸性のものがベターで、よく洗い流すことも大切です。

(「すかやかライフ」2008 Spring No.31より)

 

次に、川島眞医師監修の鳥居薬品パンフレットからです。

石鹸は刺激の少ない弱酸性を。薬用石鹸は殺菌を目的としているため刺激が強いので避けましょう。

(川島眞監修「もう迷わない アトピー性皮膚炎」2005年1月改訂版より)

 

さらに、江藤隆史医師が監修に携わったアイセイ薬局の雑誌でも、弱酸性の文字がみえます。

弱酸性の石けんを泡立てネットかスポンジでホイップクリーム状になるまで十分に泡立てて、やさしくなでるように洗いましょう

(「特集 アトピー性皮膚炎」ヘルス・グラフィックマガジン, 夏号 2016, 第22号, 2016年7月15日より)

このように、権威筋は弱酸性の石けんがお好きのようです。

なお、"弱酸性の石けん" という表現について、原文を尊重し、本稿では問題としないことにします。

 

弱酸性のメリット

なぜ弱酸性の洗浄剤が良いという意見が目立つのでしょうか。

それは、皮膚がそもそも弱酸性だからでしょう。次は東京都の見解です。

Q6 石鹸やシャンプーは、どのようなものを使えばよいですか。

A6 添加物などが入っていない、皮膚と同じ弱酸性の普通の石鹸とシャンプーでかまいません。(後略)

(東京都福祉保健局「アレルギー情報navi. アトピー性皮膚炎 Q&A」より)

普通の石けんは弱アルカリ性のため、使用すると皮膚がアルカリ性に傾くとされます。一方、弱酸性の洗浄剤は、皮膚表面のpHにあまり変化を与えないようです。

そのため、弱酸性は "肌にやさしい" とされているのです。

 

宮地良樹医師は、このアルカリ性に傾くというデメリットとともに、石けんの問題点をもう1つ指摘しています。

せっけんに関してはいくつか問題があって、1つは使用後に皮膚がアルカリ性に傾くことです。ただし自然に元の状態に戻るので、これはそれほど深刻な問題ではないでしょう。もう1つは、皮膚を清潔にするというのは、皮膚から保湿成分や皮脂を汚れもろとも除去することなので、肌が余計に乾燥してしまうことです。(中略)

そのため日本には低刺激性洗浄剤と呼ばれる、皮膚をあまりアルカリ性に偏らせず、同時に皮膚から保湿成分を除去しすぎることのない洗浄剤があります。

(座談会「アトピー性皮膚炎診療における日本および韓国のスキンケアの展望」より)

 

普通のアルカリ性石けんのデメリット

以上のように、普通のアルカリ性の石けんには、次の2つのデメリットがあると考えられます。

  1. 皮膚表面のpHがアルカリ性に傾く。
  2. 皮膚から保湿成分や皮脂が多く除去される。

 

弱酸性洗浄剤のメリット

一方、弱酸性の洗浄剤は、弱酸性として作られ、かつ、洗浄力があまり強くないので、この2つのデメリットをクリアすることができるだろうというわけです。

  1. 皮膚表面のpHに大きな変化を与えない。
  2. 保湿成分や皮脂などを落としすぎない。

 

普通の石けんのメリット

普通のアルカリ性石けんにもメリットはあります。

とりわけアトピー性皮膚炎においては、

  1. 皮膚の汚れや細菌をきちんと落とすこと。

でしょう。

ただし、上述したように、同時に多くの保湿成分を落としてしまいます。

 

きちんと汚れを落とす「洗浄力」。洗浄力を重視する場合は、普通の石けんを選ぶ方が良いのでしょう。

例えば、アトピー性皮膚炎の標準治療のサイトでは、弱酸性とは明示せず、普通の石けんを勧めています。

石鹸は添加物などが入っていない普通の石鹸を使います。

(九州大学医学部皮膚科「アトピー性皮膚炎の標準治療 入浴と保湿のスキンケア」より)

 

次に、滋賀医科大学医学部付属病院のリーフレットから引用します。こちらは、普通の石けんの方が良いとしています。

なるべく毎日入浴し、普通の石けんをタオルにたっぷりつけて、湿疹の部分も含めて全身をよく洗うことが大切です。

低刺激性の石けん、弱酸性の石けんは、刺激は少ないのですが、洗浄力が劣ります。長い間使っていると、皮膚によごれが残り全身のかゆみがひどくなります。

(植西敏浩「アトピー性皮膚炎の生活指導と治療」滋賀医大病院ニュース TOPICS Vol.50, 第23号別冊, 2009.6. より)

弱酸性の洗浄力の弱さがあだとなって、汚れを落とし切れず、かゆみがひどくなる可能性があることを指摘しています。かゆみには細菌が影響しているかもしれません。

 

というわけで、アトピーにおける石けん選びのポイントは、

「汚れは落としたいが、保湿成分は残したい」

という相反する要求に、いかに応えるかということだと思います。

汚れをしっかり落としたいなら普通の石けんを選ぶ方が良いかもしれませんし、皮膚表面のpHに影響を与えず保湿成分を残したいなら弱酸性洗浄剤を選ぶ方が良いかもしれません。体の部位によって使い分けるという考え方もあります。

 

健康な成人の場合

ただ、実は、弱酸性であろうとアルカリ性であろうと、石けんの細菌を減らす効果に違いはないという試験結果があります。ただし、皮膚疾患のない健康な成人を対象としています *1 。一部引用します。

弱酸性石鹸とアルカリ性石鹸の清拭前後の細菌数の変化を調べた結果,弱酸性石鹸もアルカリ性石鹸も清拭前に比べて清拭後では明らかに細菌数の減少がみられた。

また、

弱酸性石鹸およびアルカリ性石鹸のどちらを用いても,ひりひり感・発赤・掻痒感を訴える者はいなかった。

弱酸性またはアルカリ性石鹸のどちらを用いても皮膚表面のpHの変化には差がみられなかった。

ということで、健康な成人を対象とした場合、どちらの石けんでも大差はなかったとのことです。

 

アトピー性皮膚炎の場合

一方、アトピー性皮膚炎患者ではどうでしょうか。

少なくとも、「皮膚表面のpHの変化」に関しては、アトピー性皮膚炎患者特有の事情が関係していそうです。

肌のpH変化についてですが、弱アルカリ性の石鹸で洗っても、水で洗い流すと皮膚表面はほぼ中性近くまで戻ります。その後、酸性の皮脂や汗などが分泌されることで、肌は自然に弱酸性へ戻ります。皮脂や汗がほとんど出ないような状態のお肌であれば話は別ですが、特にトラブルの出ていない健康な肌であればアルカリ性の洗浄料で洗って肌がアルカリ性に傾きっぱなしになるようなことはありません。 *2

アトピー性皮膚炎患者において、皮脂や汗が出にくいケースが多いことはよく知られています。

すると、普通の石けんを使って皮膚表面のpHがアルカリ性に傾いたとき、皮脂や汗が出ないためにpHがアルカリ性にとどまり、好アルカリ性菌等の繁殖が促されてしまうかもしれません。

アトピー性皮膚炎では、皮膚表面のpHが常時上昇していることが知られており、pH の上昇そのものが、過度の角質剥離を誘導し、表皮の過増殖や黄色ブドウ球菌の増殖を促進すると考えられています。このように常時pH が上昇した状態が続くと、バリア機能が低下し、角層が剥がれ易くなるだけでなく、慢性炎症が生じ易くなると考えられています。*3

アトピー性皮膚炎のドライスキンを考慮すると、弱酸性の洗浄剤を使うことによって、皮膚表面のpHに変化を与えないことが優先されるべきかもしれません。

 

石けんを使わないという選択

以上の情報を総合的に勘案すると、アトピー性皮膚炎患者においては、皮膚表面のpHを考慮すれば、弱酸性の洗浄剤が良いのではないかと考えられます。

ただ、次のような指摘もあります。脱ステ医の佐藤医師による指摘です。

ポンプ式の液体石鹸(ボディソープ)は使わないでください。泡で出る石鹸もだめです。弱酸性、敏感肌にもやさしい、赤ちゃんにも使えるなどと、メーカーはコマーシャルが上手です。じつは1回に出る量も多く、強い界面活性剤が入っていたりするので、皮膚が荒れる子どもが多く見受けられます。

石鹸を使うとすれば、固形の石鹸を使ってください。牛乳石鹸の青箱や植物物語、純石鹸など、あまり何も入ってない物がよいでしょう。

(佐藤健二, 佐藤美津子「赤ちゃん・子どものアトピー治療」より)

弱酸性の洗浄剤には、強い界面活性剤が含まれているといいます。合成の界面活性剤が皮膚に悪影響を与える可能性があることは従来から指摘されているところです。

そこで、佐藤医師は、弱酸性ではなく、普通の固形の石けんを使うように述べています。

また、佐藤医師は、季節によって石けんの使用頻度を変えるよう指導しています。

例えば、汗をかく時期は石けんを使用しても問題が少ないこと、乾燥した時期は石けんの使用をなるべく控えた方がよいこと、などです。

その他、石けんの泡立て方について、手や泡立てネットで泡立てるのではなく、綿タオルで泡立てる方法をすすめています。

といっても、それは石けんを使うとすればの話です。

 

佐藤医師は、患者の状況次第では、石けんを使わない選択肢も提示しています。

石鹸を使わないことで、「皮脂」や「皮膚にある常在細菌」や「表皮細胞が作り出す抗菌物質」を洗い落とさないようにすることになります。

(佐藤健二, 佐藤美津子「赤ちゃん・子どものアトピー治療」より)

石けんのデメリットとして、皮脂が落ちるほか、皮膚微生物叢や抗微生物ペプチドに影響を与えてしまうことを指摘しています。

石けんを使わなければ、皮脂はある程度残り、皮膚表面のpHに大きな影響を与えることもなく、合成界面活性剤の影響も心配はいりません。

ただし、汚れや細菌がどこまで落ちるか、という問題があります。 

 

個人的経験から

私は長年アトピーを患っていることもあり、さまざまな石けんを試してきました。

基本的には無添加で石けん素地100%の固形石けんです。ただ、無添加と一口に言っても、本当にたくさんの種類の石けんが市販されています。使用感も若干異なります。

実は、一番良いと思ったのは、自分で作った石けんでした。ほとんど泡立たないので、使用感はあまり良くありません。でも、肌にやさしい感じがしました。

しかし、自分で石けんを作るのはかなりの時間と労力と材料(とくに苛性ソーダが難点)が必要となるので、今は作っていません。

 

石けんの素材も大切な要素であると思いますが、洗い方やすすぎ方も、劣らず大切な要素であると思います。 

入浴時に石けんを使わなかった時期もあり、その時はうまくいきました。けれども、ここ数年は、石けんを使わないと、かゆみが強くなる場合が多いです。なぜかはわかりません。これは石けん成分とは無関係のような気がします。

結局のところ、石けん以外の要素にも左右されるため、その時の自分の症状に合う洗浄方法を地道に探していくほかないように思います。

普通の石けんが合う場合もあれば、弱酸性が合う場合もあるかもしれません。石けんを使わないのが一番かもしれません。

 

最後に、大阪大学皮膚科の室田医師の意見を紹介します。

石鹸の弱アルカリ性は泡立ちと洗浄力に貢献し、弱酸性の皮膚表面で中和され適度な洗浄力となります。石鹸の使用で皮膚表面は短時間弱アルカリに傾くので、このpHの変化に配慮した弱酸性の洗浄剤(合成界面活性剤)もあります。弱酸性洗浄剤は皮膚表面で中和されないため洗浄力を損ないにくく、皮膚に物質を移し込む特性も併せ持ちます。界面活性剤は刺激性接触皮膚炎(使用直後の刺激感と皮膚炎)の原因になることもありますが、最近ではより刺激の少ない合成界面活性剤が用いられているようです。石鹸・洗浄剤の進化は日進月歩で種類も豊富ですが、選択基準がないので患者さんと試行錯誤しているのが実情です。皮膚の状態を観察しながら、患者さんが実際に使って使用感のよいものを選んでもらっています。

(室田浩之「アトピー性皮膚炎と手湿疹のスキンケア」 日常生活のスキンケアに役立つ 情報ア・ラ・カルト2(2016.12.8)より)

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の赤字による強調表示は当サイトによります。) 

*1:岡田ルリ子ら, 弱酸性石鹸を用いた清拭の皮膚への影響─ アルカリ性石鹸との比較において─. 愛媛県立医療技術大学紀要, 第1巻 第1号 p.35-39 2004.

*2:弱酸性のボディソープや洗顔料のほうが、弱アルカリ性の石鹸よりお肌に優しいのでは? - 石鹸百科

*3:肌のpH