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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

"ステロイドは2割の患者に効かない"

ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎に対する有効な治療薬であるとされています。世界中で半世紀以上使用されてきた歴史があり、有効性と安全性が科学的に十分に検討されている薬剤とされ、日本のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインにおいては第一選択薬に位置付けられています。

しかし、ステロイド外用薬には副作用が伴います。

2009年版ガイドラインの作成委員長であった古江増隆氏は、論文 *1 において、次のように指摘しています。 

ステロイド外用薬や保湿剤、経口抗ヒスタミン薬が、アトピー性皮膚炎の第一選択薬として使用されているけれども、患者のかなりの割合で、皮膚萎縮や毛細血管拡張症などの局所的かつ不可避の副作用を伴う

 

また、副作用の問題の他にも、一部でステロイド外用薬が "効かない" 患者がいることを古江氏は指摘します。

ステロイド外用薬の総使用量は、"コントロール良好" 群よりも "コントロール不良" 群の方が予想外に多かった。統計学的差異は、小児群よりも青年/成人群でより明らかであった。ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の治療に有用であるが、ステロイド外用薬の塗布量を増やしているにもかかわらず、重症のままの患者のサブグループが存在するように思われる。

他の患者よりステロイドを多く塗っているにもかかわらず、重症のままの患者がいるということです。

 

まとめると、

  1. かなりの割合の患者で副作用が生じる。
  2. ステロイド治療で改善しない患者がいる。

私は、古江氏が指摘するこの2点が、アトピー性皮膚炎に対するステロイド治療の大きな問題点であると考えます。

 

1. の副作用の割合については、副作用ごとに細分化して検討することが必要です。加えて、ガイドラインや添付文書等に記載のない「ステロイド依存」や「リバウンド」についても検討する必要があります。

一例として、代表的な副作用である「皮膚萎縮」は、薬剤のランクや使用期間にもよりますが、不可避であるといわれます*2 。こうした情報は患者に伝えられるべきです。

 

2. のステロイド治療で改善しない患者の割合はどのくらいなのでしょうか。

古江氏の同論文から、青年及び成人アトピー性皮膚炎患者群について検討します。

 

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出典:Furue M et al. Current status of atopic dermatitis in Japan. Asia Pac Allergy 2011; 1: 64-72.

 

  • 改善しない患者(変化なし又は悪化)は505人中317人で63%です。
  • 重症のままの患者(Severe又はVery severe)は505人中94人で19%です。
  • 論文が定義する「コントロール不良群」は505人中98人で19%です。

つまり、63%は寛解に至らず、19%はコントロール不良で重症のままであったことがわかります。

 

この結果から、患者群ごとの治療中の心理状況が推察されます。

例えば、患者群のうち、「治療前Moderate、治療後Moderate」と「治療前Moderate、治療後Mild」の患者群は、ステロイド外用薬を有効な薬であると考えることでしょう。

この2群はサンプル数でも上位2群であり、合計すると、 505人中253人で50%と約半数を占めます。患者から聞かれる「ステロイドはきちんと使えば怖くない」などの声は、この患者群から挙げられているものと考えられます。

一方で、患者群のうち19%を占める重症のままの患者は、ステロイド治療に不安を抱えているであろうことが想像できます。ステロイドからの離脱を試みる患者も、この患者群に多いのかもしれません。

また、重症のままである原因として、ステロイド依存に陥っているかもしれません。そのため、副作用のひとつとしてステロイド依存を検討する必要があると考えられます。

 


ところで、古江氏は、重症のままである患者群が存在する理由として、ステロイド等の過少治療のためかもしれないと述べています。

とはいえ、"コントロール不良" 群のすべての患者が "コントロール不可能" ではないのかもしれない。なぜなら、"コントロール不良" 患者のうち50%において、6か月の総塗布量が非常に少なかったからである。過少治療が "コントロール不良" 群を発生させたり、増加させているのかもしれない。日本におけるステロイド外用薬の最も一般的なチューブサイズは5gであり、ヨーロッパやアメリカのチューブよりもかなり小さい (Fig. 3) 。このことは、少なくともある程度は、日本におけるステロイド外用薬過少治療の一因かもしれない。

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Fig. 3. 日本では、5gチューブが日常診療で一般的に使用されている。ヨーロッパやアメリカではより大きなチューブ(100gまたは50g)がより一般に使用されている。

そして、古江氏は、フィンガーティップ・ユニットにより適量の塗布をすれば、 コントロール不良群を減らすことができるかもしれないと推察しています。

標準治療の推進に伴いフィンガーティップ・ユニットについても診察で指導が行われていることと思われます。フィンガーティップ・ユニットが周知されたことで重症アトピー性皮膚炎患者は減少したのか、調査が俟たれるところです。 

 

 

さて、"ステロイドは2割の患者に効かない" というのは、古江氏の論文を基にした私の恣意的な解釈であり、古江氏がそのように指摘しているわけではありません。

古江氏が指摘した点のなかで、私が重要だと考える点を再掲します。

  • かなりの割合の患者で副作用が生じる。
  • ステロイド治療で改善しない患者がいる。

私は、医師が患者をアトピー性皮膚炎と診断し、治療を開始するにあたり、この点を患者に伝えるべきだと思います。

 

かなりの割合の患者で副作用が生じることが予めわかっているのであれば、そのリスクを患者に伝えるべきです。

よく持ち出される "外用薬では内服薬でみられる副作用は生じない" といった論点をずらした頓珍漢な説明は必要ありません。"ステロイドはきちんと使えば安全な薬である" などの曖昧で根拠のない説明も必要ありません。

外用薬の長期使用により、皮膚萎縮や毛細血管拡張、ステロイド外用剤依存などの副作用のリスクが生じることを説明すべきでしょう。

 

ステロイド治療で改善しない患者がいることが予めわかっているのであれば、その臨床的事実も患者に伝えるべきです。

"がんばって治療を続ければ絶対に良くなる" などの根拠のない説明は必要ありません。

さらには、ステロイド治療は対症療法であるがゆえに、症状が再燃する場合は、治療を一生続ける必要がある点も伝えるべきでしょう。

 

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