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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ほんとうにアトピー性皮膚炎なのか?

アトピーについての複数の診断基準

あなたは本当にアトピー性皮膚炎ですか?

医師からアトピー性皮膚炎と診断されたら、間違いなくアトピー性皮膚炎なのでしょうか。

 

「あなたはアトピー性皮膚炎と診断できるか?」

この演題は、実際に日本小児アレルギー学会で取り上げられたものです。

アトピー性皮膚炎(AD)は、その診断については今でも医師間による不一致、ばらつきが多い。その理由として、依然としてADの診断基準が一つではないこと。それらは現在も流動的であること、またAD自体の病態にいまだ不明な点が多いことなどがあげられる。*1

アトピー性皮膚炎の診断基準がいくつもあるし、アトピー性皮膚炎そのものがよくわかっていないので、診断は医師によって異なることがある、ということです。

 

医師からアトピー性皮膚炎と診断されても、本当はアトピー性皮膚炎ではないのかもしれません。

現在、代表的な診断基準は、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン記載の診断基準です。 

基本的には、1)搔痒、2)特徴的皮疹と分布、3)慢性・反復性経過の3基本項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断します。

アトピーと診断されたあなたは、医師から「かゆいですか?」と聞かれましたか?

裸になって、好発部位に左右対称に特徴的皮疹(浸潤、苔癬化、痒疹、鱗屑、痂疲)があることを確認してもらいましたか?

「この症状はいつからですか?」と聞かれましたか? その答えは6カ月以上前(乳児では2カ月以上)でしたか?

まさか、皮疹をよく確認もせずに、「ああ、アトピーですねえ」と診断されたわけではないですよね?

単なる乾燥肌や手湿疹ではないのですよね?

 

もちろん、この基準を満たしたとしても、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版の診断基準がいうところのアトピー性皮膚炎であるというにすぎません。アトピー性皮膚炎の病態の解明が進み診断基準が変われば、あなたはアトピー性皮膚炎ではなくなるかもしれません。

つまり、真のアトピー性皮膚炎というものが解明されていないなかで、とりあえずアトピー性皮膚炎と診断されているようなものです。

 

アトピーのようで、アトピーではない

次に紹介するのは、ある患者のブログからの引用です。診察における皮膚科医との実際のやりとりが示されています。

患者は自分がアトピーだと思い診察を受けたところ、皮膚科医から驚くべき言葉を聞かされたといいます。

言われたんです!

問診票を見て、紹介状を見て、私を一目見た瞬間に!

あんたは、アトピーじゃないよ

って!

私は体中にぶつぶつができていたので、
全部見てもらって、患部の写真を撮りました。

そして、
取り終えた写真を
大画面で見せてくれ、
『ほら、症状が出てる所が左右の腕で違うでしょ。
アトピーならこんなふうにならない。』と*2

 

他の例を紹介します。こちらは、ある患者の皮疹画像を見た医師の見立てです。

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これは、最近送られてきたケース20の方の皮疹の画像なのですが、どう見ても私にはアトピー性皮膚炎には見えません。「アトピー性皮膚炎様」くらいなら言えます。*3

 

 

鑑別は、難しいかもしれませんが、大切です。

アトピーと診断され、アトピーとして治療を受けているうちに、アトピーの名の下に隠れた疾患が、気付かないまま進行してしまうかもしれません。

アトピー性皮膚炎の診療ガイドラインでは、はじめに「確実な診断」が強調されている。アトピー性皮膚炎は一般的に認知度が高く、この病名が一旦つけられてしまうと、医療側・患者側ともそれ以上に診断について疑義を抱かなくなる可能性がある。(中略)

菌状息肉症やセザリー症候群は、一般的にはかなり希少な疾患であるので、患者本人には「皮膚リンパ腫」のひとつといった自覚はもちろんなく、皮膚科医による診察を含め医療機関受診時に見逃されてしまうと、「適切な検査や治療が受けられないまま、徐々に進行した」ということにもなりかねない。以下に、実際にわれわれが経験した症例を示す。3症例とも元々はADとされていたが、精査の結果、菌状息肉症やセザリー症候群であった。*4

皮膚リンパ腫は稀であるかもしれませんが、生死に関わる問題です。

 

次のリンクは、疥癬をアトピーなどと誤診された方のケースです。自ら疥癬ではないかと医師に訴えても、否定され、ステロイドを処方されたりしたそうです。


また、アトピー性皮膚炎と誤診されたケースで問題となるのは、多くの場合でステロイド薬を処方されることです。そうすると、原疾患にステロイドの副作用が加わり、より複雑な病態が作り上げられてしまいます。 

かつて、先天性魚鱗癬様紅皮症の患者が、アトピー性皮膚炎と誤診され、ステロイド外用薬の治療を10年以上にわたって行われた結果、成人型アトピー性皮膚炎と同じ赤ら顔、頸部の色素沈着、体幹四肢の紅皮症状態を示した症例を経験したことがある。 (略)

単なる主婦手湿疹にステロイドの内服が行われ、成人型アトピー性皮膚炎と同様の症状を呈した例も見られる。*5

 

なぜ、アトピー性皮膚炎として誤診されるケースが後を絶たないのでしょうか。

医師の診断能力に差がある、あるいは、アトピー性皮膚炎の診断基準が複数ある、等々、いろいろと考えられる理由はあるでしょう。

この点、皮膚科医の西岡清氏は、アトピー性皮膚炎を確定診断するための特徴的な皮膚症状が存在しないことを指摘しています。

日常診療において、アトピー性皮膚炎の診断は比較的簡単に下され、治療が行われている。アトピー性皮膚炎の診断には、その皮膚症状の認識が重要であり、皮膚症状の確認によって確定診断が行われなければならない。しかし、アトピー性皮膚炎に特徴的とされる皮膚症状は本来存在しない*6

つまり、「これがアトピー性皮膚炎だ」といえるような物的証拠が存在しないので、情況証拠によってアトピー性皮膚炎と推定しているにすぎないというわけです。 

 

アトピーではなくて、ステロイド依存

もしアトピー性皮膚炎でなかったとしたら、今の皮膚炎を生じさせている原因はいったい何なのでしょうか。 

接触皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、脂漏性皮膚炎、皮膚カンジダ症、疥癬、汗疹など、色々な可能性があります。

ここで、皮膚炎を長引かせたり、悪化させているのは、実はアトピーを治療するための薬が原因だといったら、信じる人はいるでしょうか。きっと医師は怒り出すに違いありません。

けれども実際に、アトピー性皮膚炎と診断されている大多数はアトピー性皮膚炎ではなく、薬をやめるにやめられなくなった「ステロイド依存症」であると指摘する皮膚科医がいます。

野口順一医師です。長年にわたり、ステロイドを一切使わずに患者を治療してきました。野口医師は、多くの患者を診てきた経験から、次のように問題提起しています。

私が多くの患者を診察して感ずることは、他の医療機関でアトピー性皮膚炎といわれた(診断された?)患者のうち、ほんとうのアトピー性皮膚炎の患者はごく少数で、大多数はそれらの皮疹に対する治療方針が誤っていた場合、殊にステロイド剤が麻薬中毒者のようにやめられなくなったステロイド剤依存症の患者がほとんどであるということである。*7

 

次に、野口医師は、乳幼児期にありがちな誤診を指摘します。

乳幼児期におけるアトピー性皮膚炎の診断が難しいために、誤ってアトピー性皮膚炎として診断され、ステロイドによる治療を受けているケースが非常に多いというのです。

三歳未満の乳幼児期に皮膚病が出現した時に、その皮膚病がアトピー性皮膚炎であると診断するのは至難の業であり、よほど経験を積んだ皮膚科医でも困難である。喘息が合併していたり、総IgE値が急激に上昇したりするという根拠がなければならない。

しかし、現実には、さほどの根拠も確認できないまま、乳幼児期からアトピー性皮膚炎と診断されている例が非常に多い。

実際はそれらの大多数は脂漏性湿疹や接触性皮膚炎、また、分芽菌症(カンジダ症)や細菌感染症である場合が多く、それらが不適切な治療により、ステロイド剤依存症に移行したと考えられる症例が大部分である。

後述するように、この時期に正確な診断が下されて、それらの皮疹に対応する適切な治療がなされれば、小学校入学後まで遷延する、いわゆるアトピー性皮膚炎の患者は、現在見受けられるほど多数にはならないと思われる。*8

冒頭で引用したように、小児アレルギー学会で「あなたはアトピー性皮膚炎と診断できるか?」という演題があるくらいですから、小児科医が誤診することも十分にあり得る話です。

そうすると、赤ちゃんにステロイドを塗るという、患者としてはあまり好ましくない経過をたどることになります。

 

一方、野口医師は、成人アトピー性皮膚炎については次のように述べています。 

最近は、成人のいわゆるアトピー性皮膚炎の患者が多く見受けられるようになった。

その原因は、いわゆるアトピー性皮膚炎の患者で、幼児期や少年期にステロイド軟膏を濫用されて治療されていた患児が、年を経て成年に達したということにあると考える。(略)

皮疹は顔や頚に限局し、いわゆるアトピー性皮膚炎に似ているが、総IgE量はそれほど高値ではない症例がある。

これは、少年期に発病した接触性皮膚炎をステロイド軟膏で加療し、遷延して、その離脱が困難になった患者で、いわゆるアトピー性皮膚炎とは似て非なる疾患であり、むしろステロイド軟膏依存症というべきである。*9

成人型アトピー性皮膚炎についても、幼児期や少年期におけるステロイドの濫用が影響していると推察しています。

 

ほんとうにアトピー性皮膚炎なのか?

アトピー性皮膚炎は誤診されやすい疾患です。そして、誤診された場合に問題となるのが、ステロイド外用薬を処方されてステロイド依存症を合併することです。

そのため、ステロイド依存症にならないためにも、医師の診断を一旦落ち着いて受け止めることが必要かもしれません。

そこで、アトピー性皮膚炎と診断されたあなたは、改めて次のように問いかけることも有意義でしょう。

「あなたの皮膚病はほんとうにアトピー性皮膚炎なのか?」

 

再び野口医師の言葉を引用します。

今までアトピー性皮膚炎の治療に失敗していた患者あるいはその家族達は、医者へのかかりかたが下手で、盲信的で医者まかせであり過ぎたというべきである。

これから自分の皮膚病を治療しようとする人は、まず自分の皮膚病の種類を自分で確かめ、また、その治療に際して、はっきりした治療計画を立て、いかにしてステロイド剤を使わないですませるかということを考えているようにすれば安全である。

自分の皮膚病の種類を自分で確かめることは、容易ではないと思います。しかし、ステロイド依存症になってからでは遅いので、意識的であるべきです。

皮膚炎が起きて、皮膚科へ行き、ステロイドが処方され、気付いたら長期連用しており、ステロイド依存になる、という典型的な流れがあります。

この流れに流されないよう、患者が自ら管理する必要があるでしょう。ステロイド剤を使わないで済むなら、そうするに越したことはありません。

  • ほんとうはアトピーではないかもしれない
  • ステロイドを使う必要はないかもしれない

ほとんどの患者は気にかけないと思いますが、個人的には重要なチェックポイントだと思います。

 

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ある時、私の職場の同僚が、「私アトピーなのー」と、周囲の人に肘の湿疹を見せていたことがありました。

しかし、私には、どう見てもただのあせもにしか見えませんでした。

インターネット上には、アトピーを自称する人たちの声や画像がたくさん見られます。しかし、自分ではアトピーと訴えていても、ほんとうはアトピーではないかもしれません。

例えば、IgE値が高くないような、アトピー素因をもたない人も、アトピー性皮膚炎なのでしょうか。ガイドラインの定義では「患者の多くはアトピー素因を持つ」とされているので、定義には当てはまらないかもしれません。

その症状がアトピーによるものかどうかわからないし、アトピーが治ったのかどうかもわかりません。何しろ真のアトピー性皮膚炎がどのようなものか、わからないのです。

したがって、現時点では、患者はアトピーに向き合うというよりむしろ、皮膚炎の原因を探りつつ、ステロイドにどう向き合うかを考えることが、現実的であるように思います。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の赤字・太字による強調表示は当サイトによります。)

*1:村田卓士ら, あなたはアトピー性皮膚炎と診断できるか? ~適切な治療のために, とくに一般小児科医として~. 日本小児アレルギー学会誌 30(1): 63 -74 2016.

*2:今山修平クリニック&ラボ、初めての診察編 - 私、アトピーじゃなかったの!?

*3:http://steroid-withdrawal.weebly.com/124651252312475124811253165288quercetin6528912399124521253112479125401252312424124261241821177265241236424375123566528865291124651254012473652986529612289652976529.html

*4:濱田利久, 岩月啓氏, アトピー性皮膚炎に隠された、菌状息肉症/セザリー症候群. 皮膚アレルギーフロンティア2010年7月号(Vol.8 No.2)

*5:西岡清, アトピー性皮膚炎診療の実際. アレルギー, 46(11), 1095-1099, 1997.

*6:西岡清, ミート・ザ・プロフェサー2 : アトピー性皮膚炎の治療. アレルギー, (2・3) Vol. 45 (1996) No. 2-3.

*7:野口順一, アトピー性皮膚炎の温泉・水治療法. 光雲社, 1995.

*8:野口順一, アトピー性皮膚炎の温泉・水治療法. 光雲社, 1995.

*9:野口順一, 皮膚病の温泉・水治療法. 光雲社, 1996.