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ステロイド外用剤依存および離脱-総合診療医のための概説

オーストラリア総合診療学会(The Royal Australian College of General Practitioners)発行の学会誌に、2016年、次の概説が掲載されました。

「ステロイド外用剤依存および離脱-総合診療医のための概説」

Belinda Sheary. Topical corticosteroid addiction and withdrawal – An overview for GPs. Aust Fam Physician. 2016 Jun;45(6):386-8.

(リンク:RACGP - Topical corticosteroid addiction and withdrawal – An overview for GPs

総合診療医である著者は、ステロイド外用剤離脱(依存)が、ステロイド外用剤治療において起こる可能性がある合併症であると述べています。

短くよくまとまっていますので、いわゆるアトピー患者の方は一読することをお勧めします。医療関係者も、言うに及ばす、お勉強が必要です。

日本やアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、インド等においては、ステロイド外用剤依存に対する認識が広まりつつあります。

これまでステロイド依存が存在するという報告が積み重ねられてきましたが、最近になって、医師らが知見を共有しようとする段階まで来ました。

医師がステロイド依存を理解することの意義を、著者は次のように述べています。

ステロイド外用剤依存や離脱に気付くことにより、患者に対し、医師はこの副作用を防ぐことを助けたり、支持療法を提供することがもっとうまくできるかもしれない。それは総合診療医にとっても有用であろう。なぜなら、非医学的情報源から集めた情報を明らかにさせたい患者と、ステロイド外用剤依存や離脱について話し合うことができるようになるからである。

 

この概説のなかで、個人的に興味をもった点をいくつかご紹介します。

 

著者は、ステロイド外用剤依存を指し示す言葉が様々にあるなかで、その形態としては、次の2つがあることを説明しています。

  • 紅斑浮腫タイプ
  • 丘疹膿疱タイプ

 

また、ステロイド外用剤(潜在的)離脱の臨床兆候として、次の3つを挙げています。

  • ヘッドライト・サイン(Headlight sign)
    – 鼻および口周りのエリアは、顔の赤みから免れる。紅斑はしばしば頬の中央、両耳にかけての正常皮膚で途切れる。

    http://www.racgp.org.au/download/3455120/Topical-3-.jpg
    ヘッドライト・サイン(出典:http://www.racgp.org.au/download/3455120/Topical-3-.jpg

  • レッド・スリーブ(Red sleeve)
    – 手背側または手掌側の縁における急な中止による四肢のリバウンドの皮疹。
  • 象の皺(Elephant wrinkles)
    – 皮膚弾力性の減少、例えば、膝前部、肘伸側、首。

なお、皮膚萎縮や毛細血管拡張などのステロイド外用剤による皮膚損傷の兆候が、ステロイド外用剤中止前の依存患者において報告されていることにも言及しています。

 

予防については、ステロイド外用剤を2週間以上継続して使用することを避けること(深谷らによる推奨)、また、ステロイド外用剤を2~4週間以上継続して使用せず、その後の頻度は週2回に減量すべきこと(アメリカ全国湿疹協会のアドバイス)などが紹介されています。

 

そして、皮膚科医や小児科医に、何度も繰り返し読んでいただきたいのが、「なぜ患者はステロイド外用剤をやめたがるのか」についての考察です。

なぜ私の湿疹患者はステロイド外用剤をやめたがるのか?

患者は、定期的かつ無期限に、臨床効果が減少している(しばしば強力な)ステロイド外用剤を使用し続けることへの不安や、ステロイド外用剤離脱プロセス完了後の皮膚改善への期待などのために、ステロイド外用剤をやめたいのかもしれない。

ステロイド忌避は別問題であり、これらの患者には当てはまらない。ステロイド外用剤依存はステロイド外用剤の誤用(使用量が少ないのではなく過剰使用)の結果であると考えられている。離脱完了後、ステロイド外用剤依存患者は、正常皮膚または元の湿疹症状を期待できる。

日本では、皮膚科医らが、"ステロイドの副作用を過大に煽ったメディア報道により患者がステロイドを怖がるようになった" などという根拠に乏しい言説を、メディアを通して流布しています。患者としての意見を述べれば、これは全く誤りです。

実際は、この考察が指摘するように、「臨床効果が減少している」にもかかわらず、「強力なステロイド外用剤」を、「定期的かつ無期限に」使用し続けることが不安なのです。不安であるし、そのような治療はおかしいと思うのが常識的な反応でしょう。

また、皮膚科医らは、患者がステロイドを怖がり避けて(ステロイド忌避)"ちょい塗り" しているから、量が不十分で炎症を抑えきれず悪化してしまうと主張しています。これも誤りでしょう。

この考察では、ステロイド外用剤依存は、ステロイド外用剤の「過少使用」ではなく、「過剰使用」の結果であるという考えを紹介しています。ステロイド「忌避」ではなく、まさにステロイド「依存」なのです。

私が依存に陥ったときのことを思い返すと、"ちょい塗り" していた記憶はありません。次々と湿疹が再発するので、徐々に使用量が増えました。また、ステロイドを塗っていない部分に湿疹が広がったので、塗る面積が増えました。そのうち、日中もかゆみに悩まされるようになったので、1日2回の塗布では間に合わず、外出時はカバンにステロイドをしのばせてトイレで塗るなど、1日に何度も塗るようになりました。果てはリバウンドです。

その後、ステロイド外用剤から離脱することで、このような依存状態から脱することができました。

 

最後に、著者は、概説の結論において次のように述べています。

自分の症状をオンラインで探す患者が増加しているので、総合診療医にとってこの問題に関する相談はより頻繁なシナリオとなるかもしれない。

ステロイド外用剤依存および離脱に関する冷静かつ情報に基づく議論が、信頼できるソースからの答えを探している患者にとって大変有用であろう。 

昨今は、インターネットから情報を得る患者が増えています。その是非には議論があることでしょう。

ただ、私がステロイドから離脱する際に頼りにした情報は、他の患者による自身の離脱経験を記したウェブサイトの情報でした。そこには、ステロイドの危険性と、ステロイドを止めるために実践したことなどが綴られていました。ステロイドから離脱した人がいるという事実は、私にとって大きな希望となりました。一方で、医療関係者による情報は、私には全く役に立ちませんでした。

医療関係者がステロイド外用剤依存に無知である場合、患者はもはや医療機関に足を運ぼうとしません。患者が引きこもるのは、患者の無知のためでなく、医師の無知のためです。医師が本当に患者のことを考えるのであれば、ステロイド外用剤依存についての認識を深め、両者の断絶を少しでも埋める努力をしていくべきでしょう。

 

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