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天下の霊湯・玉川温泉

天下の霊湯・玉川温泉

秋田県は田沢湖の北、八幡平の西にある玉川温泉。

湯治場のなかの湯治場といっても過言ではありません。

日本一の強酸性の水が、がんに効くという噂があります。万病に効くともいわれます。医者から見放された難病患者が最後の望みを託して訪れる場所とも聞きます。

ともかく、この温泉にまつわる逸話は枚挙に暇がありません。

この温泉が発見されたのは、徳川時代の初期の頃か?下流の猟師が "鹿"(カモシカのこと)を射て、傷つけて、逃亡した鹿の血痕を追って来たところ、温泉の下流の湯滝の淀に寝ている鹿を発見、死んでいると思って近寄ったところ、鹿は傷が治って走り去った。*1

古くから、マタギをはじめ地元の人々が湯治に利用してきたようです。昭和初期、湯瀬温泉で旅館を経営していた関直右衛門が、自分の難病の皮膚炎が玉川温泉で完治したことに驚き、温泉療養所として玉川温泉の経営を始めました *2 。関直右衛門は、玉川温泉を「天下の霊湯」であるとして、その開発に意を注いだといわれています。

 

玉川温泉の特徴は、何といっても日本一とされるpH1.2の強酸性にあります。

泉質は、「酸性-含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)・アルミニウム-塩化物泉」です。

玉川温泉の源泉は大噴(おおぶき)と呼ばれ、ここから毎分9,000ℓという大量の強酸性水が下流の玉川に注がれています。かつて田沢湖に玉川温泉水を引水したところ、田沢湖のクニマスは絶滅してしまいました *3。玉川温泉の水が「玉川毒水」といわれる由縁のひとつです。

 

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毒にも薬にもなる玉川温泉。玉川温泉の効能について、公式ホームページは、次の5つの総合作用であると紹介しています。

 

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玉川温泉の効能|湯治について│玉川温泉 秋田県 田沢湖 効能溢れる癒しの湯治宿

 

プロゴルファーの青木功氏は、玉川温泉について、体をリセットできる最高の温泉であると述べています。

とにかく"5分間浸かって、5分間休む" を繰り返し、30分もすると体全体がグッタリするが、運動して疲れた感覚とはまた違う。上手く表現できないけれど、体がリセットされた気分になれるんだ。

何日か滞在すると、知らない内に吹き出物が出てくるのにはびっくりしたが、それが山を降りると、ポロっととれちゃうんだ。面白いよね。*4

 

皮膚病に関してはどうでしょうか。 

強酸性のためか、黄色ブドウ球菌の殺菌作用にすぐれています*5 。また、水虫が7~10日間の湯治で完治した例もあるそうで、抗真菌作用も期待できるのかもしれません*6

玉川温泉の附属診療所を訪れていた皮膚科医の野口順一氏は、玉川温泉の効果について、次のように観察しています。

その42℃の浴泉に因り、皮膚は刺激され、皮膚に酸性硫黄泉浴独特の反応を招来する。すなわち:「毒を出す」,「かすける」,「痂疲形成」,「よる」などの経過をたどる。

ことに、その痂疲形成は、厚い硬い痂疲が皮疹上に密着して形成され、皮疹を痒感掻破の暴力から保護する。

また、泉水の乾燥作用と強度の酸性に因り、皮膚上の病原性の細菌や真菌は殺菌される。

この殺菌作用は、MRSAその他の耐性菌などでは、抗生物質の投与よりは有効である。*7

痂疲形成の促進、乾燥と強酸性による細菌・真菌の殺菌作用があることを指摘しています。

このあたりの作用は、草津温泉に似ているように思います。3日~10日くらいで特有の温泉皮膚炎が生じる場合があるのも草津温泉と同様です。

 

岩盤浴

玉川温泉は岩盤浴も有名です。

岩盤浴といっても、都市部で行われている岩盤浴サービスとは一線を画しています。

天然の岩盤に身を横たえます。

地下から噴出している蒸気により地面が加熱され、岩盤が高温になっています。一種の温熱療法です。

また、周辺に存在する北投石などの放射性鉱物から微弱な放射線が出ており、低線量の被曝に効果があるともいわれています。

いたるところから噴出する蒸気、立ちこめる硫黄のにおい。決して安全とはいえません。それでも、少しでも良い場所を確保しようとする人たちの姿があります。みな、病を治すために必死なのです。

 

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自炊部がある

最近は、利用客の減少のためでしょうか、どこの温泉地でも湯治宿が湯治部(自炊部)をなくしてしまう傾向にあります。

しかし、玉川温泉では、冬季以外、湯治客のための自炊部を営業しています。食事が付かないぶん宿泊料金は5,000円前後と安めです。朝食付のプランもあるようです(2017年1月現在)。

湯治客は長期滞在が前提なので、宿泊料金は安ければ安いほど助かります。

また、看護師常駐の湯治相談室もあります。冬季以外は月2日程度、温泉療法医が診察を行っています。

湯治に対してここまで考えて対応している温泉は珍しいのではないでしょうか。 

 

経営について

ただ、その経営は順調満帆とはいえないようです。

先月、二つの宿泊施設「玉川温泉」「新玉川温泉」を運営する株式会社玉川温泉および親会社の関直右衛門合資会社の2社は、政府系の株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)の再生支援を受けることが決定しました。

REVICは秋田銀行など地元企業と折半出資、経営権を獲得し、新たに経営陣を派遣します。

REVICの公表資料によれば、玉川温泉は、団体客の減少、2011年の東日本大震災、そして2012年に起きた雪崩事故などの影響により、大幅な減収を余儀なくされたとのことです。

なお、この2012年の雪崩死傷事故のあと、冬季は、岩盤浴場への立ち入りができず宿泊施設「玉川温泉」も休館、「新玉川温泉」(源泉は同じ、自炊部なし)のみの営業となっています。

REVICは、支援の意義として、玉川温泉郷を「秋田の至宝」と位置付けています。そして、宿泊施設「玉川温泉」については、「これまで以上に湯治療養客に支持される宿泊施設を目指します」とのこと。

ぜひ、お湯を大事にして、再生をめざしてほしいものです。

 

*1:阿部眞平, 世界の奇蹟玉川温泉, 鹿角タイムス社, 1971.

*2:玉川温泉・新玉川温泉監修, 玉川温泉公式ガイドブック, 秋田文化出版, 2011.

*3:田沢湖のクニマス(標本) 文化遺産オンライン

*4:玉川温泉・新玉川温泉監修, 玉川温泉公式ガイドブック, 秋田文化出版, 2011.

*5:内野栄治ら, 健康維持・増進を目的とした道内温泉の有効利用に関する基礎的研究(第5報)黄色ブドウ球菌の消長に及ぼす道内温泉水の影響, 北海道立衛生研究所報, 第49集, 1999.

*6:玉川温泉・新玉川温泉監修, 玉川温泉公式ガイドブック, 秋田文化出版, 2011.

*7:野口順一, 東北地方にある特異な泉質の温泉とそれらの皮膚科的適用. 日温気物医誌第59巻2号, 1996.