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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

温泉水のpHと黄色ブドウ球菌

前回、草津温泉水の黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用について触れました。

では、草津以外の温泉水でも同様の殺菌作用を期待できるのでしょうか?

その答えを探るため、今回は、温泉水の黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用を調べた研究をみてみます。

 

北海道立衛生研究所が、道内温泉水の黄色ブドウ球菌の消長に及ぼす影響について調査を行っています *1

調査方法の概要は次の通り。

  • 温泉水は、北海道内27地域の温泉から採取(対照は、秋田の玉川温泉水、自然海水、蒸留水、生理食塩水)。
  • 黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎患者2名の皮膚病変部から採取した2株(A、B)。
  • 温泉水3mlに黄色ブドウ球菌液30μlを添加し、37℃で24時間保温。さらに生理食塩水で100倍に希釈した希釈液30μlを37℃で1夜培養後、コロニー数をカウント。

その結果を示したのが下図です。

 

f:id:atopysan:20170120191536j:plain

pH3未満(酸性)の温泉水では、7か所のうち6か所(弟子屈町の2か所、恵山町、登別市No.4、豊浦町、ニセコ町)で、A・B株とも生菌は全く検出されませんでした。pHが低いほど、殺菌作用が強いことがうかがえます。

ところが、pH6.6~pH9.1(中性~弱アルカリ性)でも、生菌が全く検出されなかった温泉水がありました(中頓別町、音威子府村、遠別村、清里町)。

なぜ、これらの温泉水では、pHが高いにもかかわらず殺菌作用が現れたのでしょうか。

この点、研究者らは、温泉水の化学成分のうち、とくにホウ酸に着目しています。

pH6.6~7.6の中頓別町、音威子府村、遠別町の温泉水でも、先と同様に菌の生育抑制効果が認められた。これらの温泉水の特徴として、ホウ酸含量が630~1360mg/kgと極めて高いことが挙げられる。また、比較的強い殺菌、生育抑制作用が認められた豊富町と稚内市の温泉水においても、ホウ酸含量は各々440および415mg/kgと高い値を示した。

そして、結語では次のように述べています。 

pHが3以下の酸性泉では、24時間の時点で成分含量の多少に関わらず、黄ブ菌に対して著しい殺菌、生育抑制作用が認められた。同様に、ホウ酸濃度の高いpH6.6~7.6の中性の温泉でも著しい殺菌、生育抑制作用が認められた。

このように、温泉水の黄色ブドウ球菌に対する生育抑制作用は、pHだけではなく、ホウ酸濃度も関与している可能性があるのです。

ところで、草津温泉の研究者である久保田一雄氏は、草津温泉水の黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用について、その作用機序が水素・マンガン・ヨウ素の3イオンに因るものであると指摘しています *2

つまり、pHのみが、黄色ブドウ球菌の殺菌作用に影響するのではないことが示唆されているのです。

中性泉や弱アルカリ泉でも、黄色ブドウ球菌に対する殺菌作用が認められる場合があります。温泉を選ぶ際のひとつの参考になるかと思います。

 

温泉水にはさまざまな化学成分が含まれています。それらの含有量や組み合わせによっても人体への影響が変化するものと考えられます。

個人的には、温泉の作用としては、温熱作用などの物理作用よりも、化学作用の方が効果的であるように感じます。

温泉の効果は、現代科学では未だ解明できていません。殺菌作用にとどまらず、まだまだ未知の力を隠し持っているのではないでしょうか。

*1:内野栄治ら, 健康維持・増進を目的とした道内温泉の有効利用に関する基礎的研究(第5報)黄色ブドウ球菌の消長に及ぼす道内温泉水の影響, 北海道立衛生研究所報, 第49集, 1999.

*2:久保田一雄, 皮膚疾患-代替・相補医療としての温泉療法の将来展望-, 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 66 (2002-2003) No. 1 P 23-24.