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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

草津温泉のアトピー性皮膚炎に対する効果

温泉

魅力あふれる草津温泉

日本を代表する温泉地のひとつ、草津温泉。

群馬県の北西部、白根山の近くにあります。

上越新幹線や関越自動車道のルートから離れているので、ややアクセスに難があります。東京からは、車でも電車でも3時間以上はかかると思います。

高速バスが便利かもしれません。東京駅と草津温泉バスターミナルを結ぶ「東京ゆめぐり号」と、バスタ新宿から渋川・伊香保を経由して草津へ向かう「上州ゆめぐり号」があります。

 

 (出典:国土地理院ウェブサイト

 

アクセスが悪いとしても、訪れる価値があると考える人が多いのでしょう。湯畑を中心とする温泉街は賑わいをみせています。

最近は、中国など海外からの観光客が増えている印象です。

 

草津温泉は昔から世間にその名を知られていました。

江戸時代の温泉番付「諸国温泉効能鑑」では、上州草津の湯が、最高位の大関に位置付けられています。

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自然湧出量は日本一

草津温泉の特徴のひとつは、その豊富な湯量です。

草津温泉の「自然湧出量」は日本一といわれます。

なお、掘削による湧出を含めた「湧出量」の日本一は別府温泉といわれます。

明治初期に別府温泉などで温泉掘削が始まる前までは、温泉といえば自然に湧き出しているものでした *1 。これを「自然湧出泉」といいます。

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人為的に手を加えなくても自然に湧出する温泉です。自然条件や周辺環境の影響を受けやすく、特に降水に伴い湧出状況が変化しやすい特徴があります。

(出典:環境省自然環境局「温泉モニタリングマニュアル」平成27年3月)

 

その後、掘削技術の確立により「掘削自噴泉」が増え、また、ポンプで湯を汲み上げる「掘削揚湯泉」が増えていきました。

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(出典:環境省自然環境局「温泉モニタリングマニュアル」平成27年3月)

 

最近では、ポンプの動力を利用する温泉の方が多いです。それだけに、自噴、それも自然湧出の温泉が貴重であることがわかると思います。

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(出典:環境省「自然湧出の温泉利用施設、日帰り温泉施設の扱いについて」)

 

自然湧出量が豊富な草津温泉。そのため、源泉かけ流しの湯を当たり前のように楽しむことができるのです。

 

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泉質

草津温泉の泉質は、おおむね「含鉄泉」(旧泉質名:緑礬泉 Al・Fe(Ⅱ)-SO₄泉)か「硫黄泉」(SO₄泉(H₂S型))に分類されるようです *2

また、草津温泉は酸性度が高いのが特徴で、pHは2前後です *3

なお、日本一の酸性度とされる秋田県の玉川温泉がpH1.2です *4 。単純に数字を比較すると、玉川温泉の方が効果が高いと思われるかもしれません。しかし、個人的な経験から言うと、皮膚病をもつ者にとっては、玉川温泉は刺激があまりにも強すぎて、とても入浴できたものではありません。

皮膚病をもつ者でも何とか入れると思われるのが草津温泉です。とはいえ、刺激は十分に強いです。

次に引用する記述は半世紀以上前のものですが、草津温泉の入浴により皮膚炎が生じることが記録されています。

草津温泉は含硫化水素明ばん緑ばん泉で強酸性であるため、皮膚に対する刺激作用が強く、この温泉に1日数回連日入浴すると、股陰部、肛門周囲、腋窩、臍窩等に皮膚炎が発生してくる。これを俗に "ただれ" と称しているが、土脂慶蔵教授により酸性泉浴湯皮膚炎と名付けられた。

草津温泉には時間湯という特殊な浴法が行なわれているが、この時間湯とは48℃ の高温の温泉に1日4回3分ずつ連日入浴させて、患者に "ただれ" を発生させ、これによって難治な種々の慢性疾患を治癒させんとする経験的療法である*5

 

病気を治すために、あえて "ただれ" を生じさせるという考え方です。

日本における皮膚病の湯治場の多くが強酸性硫黄泉です。その湯治は、穏やかな回復を期待するというよりも、皮膚を厳しい強酸性にさらす荒療治の性格が勝っているのかもしれません。

 

草津温泉特有の殺菌作用

酸性度の高い草津の湯には殺菌作用があると、しばしば指摘されます。

この点について、元群馬大学医学部附属病院草津分院長の久保田一雄氏は、草津温泉の殺菌作用が、単に酸性泉の作用のみではないことを指摘しています。

私たちは、既に、草津温泉療法が成人型アトピー性皮膚炎患者の皮膚症状やかゆみの改善に有効であることを報告してきた。その作用機序は皮膚症状の悪化因子の一つである黄色ぶどう球菌に対する殺菌作用であり、さらに、その殺菌作用は草津温泉水中に含まれる水素、マンガン及びヨウ素イオンに因ることを明らかにした。*6

 

草津温泉療法の効果

久保田一雄氏は、長年にわたる草津温泉の研究において、アトピー性皮膚炎に対する効果についても調査しています。 

1999年に100例のアトピー性皮膚炎患者についての治療報告 *7 がまとめられていますので、概要を紹介します。

  • 対象は1990年~1998年までに入院した成人型アトピー性皮膚炎患者100例。
  • 全例でステロイド軟膏による治療既往歴あり(入院時には2例を除き全例中止、2例は入院後1週間で中止。治療中使用なし)
  • 泉質は酸性 (pH2.0) ーアルミニウムー硫酸塩・塩化物温泉。
  • 出湯後はタオルで水分をすばやく吸収させ、30分以内にワセリン、アズノール軟膏などを保湿目的で使用。
  • 入院日数 19~228日
  • 皮膚症状 79例(79%)で改善 21例(21%)で不変 悪化症例なし

結果として、皮膚症状に対する効果は、おおむね8割で改善、2割で変化なし、とのことです。

 

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上図の左側は、皮膚表面黄色ぶどう球菌のコロニー数を、治療前後で比較したものです。コロニー数を検索できた症例は、改善69例(a)、不変14例(b)で、改善例での黄色ぶどう球菌の消失ないし減少が目立ちます。

上図の右側は、皮膚表面pHの治療前後での変化を示しています。温泉の温度はaが42℃、bが32℃で、黒丸がアトピー性皮膚炎患者、白丸が正常対照者です。温度で基本的な違いはないものの、アトピー性皮膚炎患者で皮膚表面pHの低下が著しいことがわかります。

 

個人的体験から

以上のように、草津温泉のアトピー性皮膚炎に対する効果が示唆されています。

しかしながら、これまで私は、草津温泉に入浴して、皮膚症状が改善したと感じたことはありません。

前掲の久保田氏の報告によれば、アトピー性皮膚炎患者の8割が改善するといいます。なぜ私は改善しなかったのでしょうか。

おそらく間違っていると思いますが、私なりにその理由を考えてみました。

 

  • 湿潤系に向き、乾燥系には向かない
  • 限局性に向き、全身性には向かない
  • 黄色ブドウ球菌の影響が少ない
  • 治療期間が短すぎる

 

まず、乾燥系のアトピーには向かないかもしれないという点について述べます。

一般的には、「温泉に入ることは保湿である」と考えられています。しかし、私は、むしろ「温泉に入ると乾燥する」と思います。皮膚病患者であればなおさらです。

もちろん、湯につかっている間は保湿なのですが、湯から出ると、水分はどんどん蒸発していきます。

加えて皮膚病患者の場合は、皮膚バリアが損なわれていたり、皮膚に炎症があるなどして、角層の保水力に乏しいため、患部ではひときわ乾燥が進みます。結果として、入浴前よりも、入浴後しばらくは乾燥が強くなります。

実のところ、入浴後の乾燥は自宅の風呂でも起きるのですが、温泉の泉質が酸性泉や硫黄泉であると、さらに輪をかけて乾燥することになります。

温泉でよく馬油などが売られているのは、乾燥することがわかっているからでしょう。

 

下の図は、環境省のパンフレットからの抜粋です。療養泉のうち「酸性泉」と「硫黄泉」の泉質別適応症を確認すると、「アトピー性皮膚炎」が挙げられています。

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(出典:環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」平成26年8月)

その一方で、皮膚が敏感な人や、皮膚乾燥症の人は、「酸性泉」や「硫黄泉」には入ってはいけないとの注意書きがあります。 

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(出典:環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」平成26年8月)

 

いったいどっちなんだ、という感じですが、草津温泉などの硫黄泉では、乾燥系のアトピーは悪化する可能性があるとも読み取れます。

他方、湿潤系のアトピーは、ジクジクしている患部の痂皮化が乾燥により促進されると推測されるのです。

ただ、入浴により炎症がおさまれば乾燥が和らぐような気もしますし、季節によっても異なるとは思います。

 

次に、全身性のアトピーには向かないのではないかという点についてです。

これは、患部が限局されていれば、乾燥も患部のみに限局されて、乾燥による悪化の影響が少ないと考えられるからです。

また、乾燥系かつ全身性アトピーの私の経験上、症状がひどいほど、入浴後の全身の乾燥が強く、大変辛い経験をしたことがあるからです。

 

その他、改善しなかった理由について、当時の私は黄色ブドウ球菌が主たる悪化要因ではなく、効果が限定的だったのかもしれません。また、そもそも1週間にも満たない湯治期間では、効果が表れなかったのかもしれません。

 

以上、当ブログに記してきたように、私は、草津温泉でも、豊富温泉でも、効果を感じることができませんでした。

しかし、温泉は2つだけではありません。また、この2つの温泉は、強酸性であったり、タールが含まれていたり、かなり特異な温泉といえます。個性が強すぎるともいえるでしょうか。

他にも、皮膚病に効果があるとされる温泉はたくさんありますし、実際に私自身効果が感じられた温泉もあります。

自分に合う温泉は有名な温泉とは限りません。

 

草津温泉療法の留意点

最後に、草津温泉療法における留意点を挙げます。

それは、次の2点です。

  • 保湿剤の使用が基本であること
  • 草津温泉でアトピーが治るわけではないこと

入浴後の乾燥対策として、保湿剤を使用するのが一般的であるといえます。

久保田氏は、草津温泉療法において、入浴後の保湿が重要であること、また、温泉療法は対症療法にすぎないことを指摘しています。 

草津温泉療法:当院で行っている温泉療法は温泉入湯とワセリンなどの保湿剤の塗布を組み合わせた治療法である。

(中略)

草津温泉療法の効果持続期間は3~6カ月くらいと推定されるので、本法もやはり対症療法の一つである。しかし、安全で、安価な治療法である。*8

 

私は保湿剤が肌に合わないので、入浴後に保湿剤を使用しませんでした。そうであれば、乾燥で悪化しても仕方ないといえるかもしれません。 

また、いわゆる脱保湿をしている人にとっては、あまりお勧めできないかもしれません。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:由佐悠紀,「温泉・湯けむりの自然科学的概要」,『文化的景観 別府の湯けむり景観保存計画』第2部 第3章.

*2:http://www013.upp.so-net.ne.jp/balneology-res/sensitu.htm

*3:天下の名湯!草津温泉! | 湯Love草津(草津温泉観光協会ホームページ

*4:玉川温泉について│玉川温泉 秋田県 田沢湖 効能溢れる癒しの湯治宿

*5:小嶋碩夫, 草津温泉の医学的考察, 日本温泉気候物理医学会雑誌
Vol. 32 (1968-1969) No.1-2 P 24.

*6:久保田一雄, 皮膚疾患-代替・相補医療としての温泉療法の将来展望-, 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 66 (2002-2003) No. 1 P 23-24.

*7:久保田一雄ら, 成人型アトピー性皮膚炎に対する草津温泉療法-100例の治療経験-, 日温気物医誌第62巻2号1999年2月.

*8:久保田一雄, 皮膚疾患-代替・相補医療としての温泉療法の将来展望-, 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 66 (2002-2003) No. 1 P 23-24.