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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイドによるリバウンド

ステロイドでリバウンドは起きない?

「私の皮膚はひどく赤く腫れて、ひび割れ始めました」ノーマンさんは説明した。「それはますます赤くなり、症状はどんどん強くなっていきました。最終的に私の皮膚は裂け、浸出液が出て割れ始めました。大量の出血と、ひどい痛みがあり、髪の毛は抜け落ちました。私はまったく悲惨な状態でした。眠ることができず、食べることもやっとの状態でした」*1

 

アトピー性皮膚炎の治療においては、炎症を抑えるための対症療法として主にステロイド外用薬が用いられます。ステロイド外用薬は非常に作用の強い薬なので、原則として短期の使用にとどめるべきとされています。薬の添付文書には、長期大量使用・長期連用などに関する注意書きがあります。

けれども、アトピー性皮膚炎は慢性疾患であり根治療法が確立されていないため、短期的に寛解導入に至らない場合には、薬の使用が長期に及ぶ可能性があります。

長期使用においても、患者の多くは、ステロイド外用薬を、悪化時に使用したり、間欠的に使用したり、ときには保湿剤を併用しながら、症状を抑えて生活することができています。

しかし、問題がないわけではありません。一部の患者において、標準的なステロイド治療によっても皮疹の再発を繰り返し、毎日のようにステロイド外用薬を塗らなければ症状を維持できないような、長期連用に陥る患者がいることです。

こうした患者がよく訴えるのは、薬がだんだんと効かなくなることです。ステロイドを強いランクに変更し、使用量や使用頻度を増やしても、ステロイドを塗っていない部位に患部が広がったり、再発する皮疹が炎症の度合いを増し、全体として症状が悪化していきます。

医師の指示通りに "適切" にステロイドを塗っているにもかかわらず、症状の解決には至らないのです。

なかには、さらに症状が悪化し、ステロイド外用薬では炎症を抑えきれず、免疫抑制剤を内服せざるを得なくなるような患者もいます。

このような、いわばステロイド外用薬への依存状態に陥った患者が、ステロイドを中止すると、ほぼ例外なく離脱症状が生じます。いわゆる「リバウンド」と呼ばれる状態です。

皮膚は赤く腫れ上がり、浸出液が染み出し、冒頭で引用した患者のような状態になります。皮膚が裂けた傷が痛むために、あるいは、鏡を正視できない外見のために、外出できなくなることもあります。

やむを得ず休職や休学に追い込まれ、家では寝たきり同然になります。微熱が続く一方で寒さに震え、夜は猛烈なかゆみのために明け方まで眠れなくなります。まったく悲惨な状態です。

 

このリバウンドについて、多くの患者はステロイドの副作用によるものと考えています。それまでのアトピー性皮膚炎の悪化とは比較にならないほどの劇的な悪化であり、何より薬を塗ってきた経験を通じての皮膚感覚から薬の影響であることは間違いないと考えます。

一方、多くの医師は、リバウンドはステロイドの副作用ではなく、アトピー性皮膚炎そのものの悪化だと考えているようです。ステロイドによって抑えられていたアトピー性皮膚炎の症状が、ステロイドを中止することによって抑えきれなくなったのだといいます。

どちらの言い分が正しいのでしょうか。残念ながら、ステロイドによってリバウンドが生じるメカニズムは、現時点ではよくわかっていません。ですから、はっきりとした結論は出ていません。ただ、確かであるのは、これまでにステロイド外用薬を使用した患者におけるリバウンドの報告が数多くなされていることです。

数多くの報告がなされているのだから、皮膚科臨床医が患者に何が起きているのかを調査するのが皮膚科学のあるべき姿かとも思われます。しかし、日本皮膚科学会が一貫してリバウンドの存在を認めていないので、これらの報告は無視され続けているのが現状です。

例えば、アトピー性皮膚炎の標準治療を紹介している九州大学のサイトでは、リバウンドは患者の勘違いであり、治療中にステロイドをやめたために炎症がぶり返したものと説明されています。

ステロイド外用薬を使って皮膚の炎症を抑えている途中でステロイド外用薬をやめてしまうために、炎症がぶり返して以前よりさらに悪化したように思うことを「リバウンド」だと思っている人がいます。*2

しかし、患者は次のように考えるでしょう。ステロイド治療をやめたのではなく、やめざるをえなかったのだと。リバウンドの皮疹は、炎症のぶり返しなどという生易しい悪化ではないのだと。

 「リバウンドは存在しない」と日本皮膚科学会は今も主張しています。一方で、ステロイドによるリバウンドの報告は存在します。

本稿の目的は、ステロイドによるリバウンドの報告を列挙することで、日本皮膚科学会の主張を相対化することを試みるものです。

相対化されることで、その主張の妥当性がより客観的に評価されることでしょう。

 

ステロイド内服薬によるリバウンド

最初は、皮膚科医であれば知らぬ者はいないであろうHanifin氏による報告から紹介します。Hanifin氏は、ステロイドの内服薬によりリバウンドが生じることを報告しています。

アトピー性皮膚炎は慢性疾患であるために、プレドニゾンによる臨時治療のような短期(2-6日)ではない場合の、全身性ステロイドの使用は、高リスク治療の長期化が要求されるために責任を伴う。タキフィラキシーが生じ、中止すれば常にリバウンドをもたらす。*3

Hanifin氏は、リバウンドのみならずタキフィラキシーが生じることも指摘しています。タキフィラキシーとは、一般に、薬の連用により薬の効果が減弱すること、言い換えれば「薬が利かなくなること」を意味します。つまり、ステロイドが徐々に効かなくなり、中止によりリバウンドが生じると述べているのです。

日本皮膚科学会は、ステロイド薬を使用してもタキフィラキシーは起こらないとしています。つまり、ステロイドが効かなくなることはないし、リバウンドもないという主張です。

 

さて、ステロイド内服薬のあまりの作用の強さに、もはや処方をしたくないと考える医師もいます。米アイカーン医科大学教授のGuttman-Yassky博士です。

Guttman-Yassky博士は指摘する。患者がステロイド内服を中止すると、湿疹症状はすさまじい勢いでリバウンドを起こす。あまりの猛烈さに、博士はこの薬をもはや処方しようとは考えないという。*4

 

ステロイド外用薬によるリバウンド

顔に使用した場合

内服薬は外用薬よりも影響が大きいと考えられているので、内服薬でリバウンドが生じるという事実は受け入れやすいかもしれません。

それでは、外用薬でもリバウンドは起きるのかについてみていきます。 

ステロイド酒さは、病変を消失させるために作用の弱いステロイド外用薬を用いて顔の発疹を治療したときに生じる。もし、その症状が再発を繰り返し、ステロイドの強度が徐々に増加しているなら、酒さは追加治療に対し難治性となっている可能性があり、ステロイドを中止しなければならない。その結果、重症のリバウンド紅斑と膿疱の突発が生じる可能性がある。 *5

この報告は、ステロイド外用薬を、「顔」に使用した場合にステロイド酒さが生じることがあり、そのステロイド酒さが難治のためにステロイドを中止した結果、リバウンドが生じる可能性があると述べています。

顔は皮膚が薄いために、ステロイド外用薬の吸収率が高いといわれています。そのため、顔にステロイド外用薬を使用すると副作用が起こりやすいので、使用には慎重さが求められます。そして、正にこの顔において、リバウンドが生じることが報告されているのです。

中等から高力価の顔面へのコルチコステロイド使用に伴う問題は、ステロイド外用薬が最初に血管収縮を引き起こした部位でリバウンドの紅斑を誘発することである。*6

ステロイド誘発性酒さ様皮膚炎は、丘疹、膿疱、小水疱性丘疹、ときおり瀰漫性紅斑や浮腫を伴う毛細血管拡張結節からなる発疹である。それは長期のステロイド外用薬使用、またはステロイド外用薬中止後のリバウンド現象の結果として生じる。*7

 

ここまで、顔はステロイド外用薬の吸収率が高いために、副作用が生じやすく、リバウンドも生じるとする報告をみてきました。

ステロイド外用薬の副作用が顔に生じやすいことは、皮膚科医にとっては常識であろうと思います。そうであるから、酒さの生じる頻度がより低いとされるタクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)が処方されることが多くなりました。

ここで問題となるのは、ステロイド外用薬の副作用が「顔」に生じた場合、その状態をどのように呼ぶかということです。

従来から、長期のステロイド外用薬使用、または中止後のリバウンドとして顔に赤い皮疹が生じる副作用を「ステロイド酒さ」や「酒さ様皮膚炎」などと呼んできました(以下、酒さ様皮膚炎という)。

ところが、ステロイド外用薬の使用中に生じた顔面の皮疹について、ステロイド外用薬の副作用とは無関係であると主張する皮膚科医も一部いるのです。そうした皮膚科医は、リバウンドはもちろんのこと、副作用の名称として認識されている「酒さ様皮膚炎」という言葉を使いたがらず、顔面に皮疹が生じた原因を、アトピー性皮膚炎自体の炎症の悪化、またはストレスによる悪化、などと主張しています。

リバウンドの存在を否定したい立場としては、酒さ様皮膚炎の存在は目障りでしょう。そのため、酒さ様皮膚炎はステロイドでは起こらない、または、酒さ様皮膚炎はまれにしか起こらない副作用だと主張されるのでしょう。

次の記述は皮膚科の教科書『皮膚科学』からの引用です。酒さ様皮膚炎が、「酒さ素因」をもち、かつ「不適当」に外用することでしか生じない「まれ」な副作用であり、さらには、「20世紀末の日本でみられた」として、あたかも現在では存在しない副作用であるかのように記述されています。

ステロイド酒皶 steroid rosacea(酒皶様皮膚炎 rosacea-like dermatitis)

酒皶素因を持つものがステロイド剤を不適当に外用することにより発症する,顔面全体にみられる酒皶様の皮膚炎である.欧米ではまれで,主に20世紀末の日本でみられた医原性,あるいは市販剤を顔面皮膚炎の治療の後も化粧の下地に使用したことによるものであった.治療は口囲皮膚炎に準じる.*8

日本皮膚科学会の重鎮が編集者に名を連ねるこの教科書、酒さ様皮膚炎の存在を無くしてしまいたいという意図を感じずにはいられません。

ともあれ、この記述については相対化する必要がありそうです。

 

そこで、別の皮膚科教科書『標準皮膚科学』から引用します。酒さ様皮膚炎が、ステロイド外用薬の長期連用で生じ、リバウンドも生じることが記述されています。

何らかの素因のある個体に副腎皮質ステロイド外用薬の長期連用で起こる。外用中止によりほぼ全例症状が悪化する(リバウンド現象)ため外用を続けてしまいがちである。*9

続いて、皮膚科教科書『あたらしい皮膚科学』からの引用です。こちらも、酒さ様皮膚炎が、ステロイド外用薬の長期使用による副作用であり、ステロイド中止によりリバウンドが起こることが記述されています。

 中年女性に好発し,不適切なステロイド外用による副作用の代表である.(略)

ステロイド外用薬の長期使用による皮膚萎縮,血管拡張などの副作用が基本.(略)

ステロイド外用薬を中止する.これによりリバウンド(反跳現象)が起こり、発赤腫脹の増悪,びらんが数週から数か月持続する場合がある.*10 

このように、皮膚科教科書においても、ステロイド外用薬を「顔」に使用することにより、酒さ様皮膚炎ないしリバウンドが生じ得ることが記述されています。

 

顔以外におけるリバウンド

ここまで、ステロイド内服薬でリバウンドが生じ得るという報告、また、ステロイド外用薬を「顔」に使用した場合にリバウンドが生じ得るという報告についてみてきました。

では次に、リバウンドが「顔」以外の「全身」でも生じ得るのかについてみていきます。

私見ですが、ここが一番の論点ではないかと考えます。

ステロイド外用薬を吸収率の高い顔に使用すると、酒さ様皮膚炎等の副作用が生じるリスクが高く、それを「リバウンド」と呼ぶかどうかはさておき、ステロイド外用薬の使用を中止すれば劇的な悪化を招くという事実は、多くの皮膚科医にとっては常識であると思われます。

しかし、顔以外の部位にステロイド外用薬を "適切" に用いた場合には、リバウンドが生じるはずがない、と考える皮膚科医が多いと考えられるのです。

それは、比較的多くの患者が、ステロイド外用薬を用いながら、長期的にも皮膚症状の良い状態を維持できているという事実からも裏付けられます。

 

ところが、一部の患者において、顔以外の全身でも、リバウンドが起こることは報告されています。むしろ、全身で起こることが、リバウンドの特徴といえるかもしれません。

次の報告は、ステロイド外用薬 topical steroid を中止すると離脱症状 withdrawal syndrome が起こり得るとしたうえで、それが全身型の副作用であることを指摘しています。

topical steroid withdrawal syndrome 様症状(以後TSWSと略す)とは、そうしたステロイド長期外用患者が突然に外用を中止した際にみられ、38℃以上の発熱とともに、ほぼ全身に非常に浮腫の強い紅斑が出現し、適切な治療を行わないとついには心不全に至る病態である。(中略)

TSWSはこの(引用者注: 酒皶様皮膚炎の)全身型でリバウンド皮膚炎に加え withdrawal syndrome にみられる全身症状を伴うものと理解していただきたい。

アトピー性皮膚炎や乾癬などの難治性疾患では副作用のことを十分理解していても、ステロイドに替わり得る治療手段があまりないため、つい長期外用になりがちである。その結果、依存性が生じ、中止によりリバウンドが起こる。リバウンド症状は患者に相当の苦痛を与えるものである。*11

薬物依存症やアルコール依存症では、依存物の摂取の中止により離脱症状が起きることが知られています。同様に、ステロイド外用薬においても、長期使用により依存性が生じ(ステロイド外用剤依存)、 使用を中止すると全身型のリバウンドが起き得ることが報告されているのです。

リバウンドが全身に広がる過程には様々なパターンがあることが観察されています。また、リバウンドの皮疹はステロイド外用薬を塗布したことのない部位にも広がります。

ステロイドを中止すると、治療抵抗性の湿疹が残っていた部位に紅斑が生じ、日々ゆっくりと拡大していきます。元々あった厚みを持った湿疹(上述のように痒疹が混在している)は平坦化し、拡大する紅斑との境界は不明瞭となっていきます(図1b)。このリバウンドの皮疹はステロイド外用剤を塗ったことの無い部位にも広がります。典型的なリバウンドの皮疹の広がり方は、顔から首、上肢、体幹、そして下肢へというものですが、ほかにも様々なパターンがあります。*12

ステロイド外用薬の長期使用において報告されている、この全身型のリバウンドは、その見た目から、レッド・バーニング・スキン・シンドロームなどとも呼ばれます。

ステロイド外用薬中止後のリバウンドの炎症は、珍しいことではない。アトピー性皮膚炎のような基礎皮膚疾患を背景としても、また、ステロイド外用薬の長期使用後では正常な皮膚においても、リバウンドの炎症は発生する。(中略)
ステロイド外用薬の中止につづくリバウンドの炎症の極度の形態は、‘レッド・バーニング・スキン・シンドローム’である。報告されたすべてのケースで、患者は、顔や陰部などの敏感な皮膚に長期間ステロイド外用薬を使用していた。*13

 

リバウンドが起きるまで

いち早く、この全身型のリバウンドを報告していたのが、Kligman氏とFrosch氏です。Kligman氏らは、強力なステロイドによっても皮膚炎を解消できないケースがあり、長期的な治療が継続した結果、原疾患の悪化ではなくリバウンドによる皮膚炎が生じるとしています。

リバウンドが起き、慌ててステロイドを塗っても、改善は一時的であり、リバウンドが前よりも強烈な激しさをもってぶり返してくることを観察しています。強力なステロイドによってもコントロールが不能になる可能性があることを示唆しています。

約40年前の報告になりますが、ここで報告されていることが、現在も繰り返されているといえるのではないでしょうか。

強力なステロイドが一部の炎症性皮膚疾患のために処方される。すべての患者が満足することには、病気は速やかに改善する。しかし、完全には解決しない可能性もある。治療は楽観的に数週間または数か月間続く。それから、意図的にあるいは偶然に(薬をもたずに休暇に出かけたり、補充を忘れたりして)皮膚に薬が塗られないことがある。直ちに、1日または2日以内に、治療部位が赤くなり、痛く、かゆく、ひび割れ、落屑が生じ、特に顔で膿疱が噴出する可能性がある。原疾患が悪化したのかもしれない。しかし、ここでの重要事象は、非常に不快で悲惨なリバウンドの皮膚炎である。患者は慌ててステロイドを再び塗り、即座の解決策を確保する。かゆみ、乾燥、落屑は速やかに軽快する。すべてはうまくいく。リバウンドの皮膚炎が前よりも強烈な激しさをもって帰ってくる次の時までは。患者は悲惨を生むリバウンドの炎症を防ぐために "中毒" になる。しかし、何か月も経ってから、他の恐ろしいことが起こる。

皮膚は明白に薄くなり、毛細血管が拡張する。時折、ポイキロデルマ様変化が起きる。特に露出部の皮膚で、星状瘢痕に続いて紫斑が生じる可能性がある。間擦部位または "伸縮" 部位で皮膚線条が続発する。特に顔では、強度の持続性紅斑が、すでに鮮明な状況にさらに色彩を加える可能性がある。この段階になると、ステロイドの中止は、1日または2日以内に、亀裂、滲出液、(顔面の)膿疱とともに、猛烈なリバウンドをもたらす。それは常に耐え難い不快を伴う。*14

 

以上見てきたように、ステロイド外用薬を長期連用することによってリバウンドが生じ得ます。では、なぜ患者はステロイド外用薬を長期連用するようになってしまうのでしょうか。

この点、多くの患者は同じような経過をたどっていると考えられます。最初に弱いステロイド外用薬を使用した後、皮疹が再発し、徐々に症状が悪化し、処方される "適切な" ステロイドのランクは、ベリーストロングからストロンゲストへと、次第に強くなっていきます。

ここまでくると、患者はステロイドに対してすでに依存状態になっている可能性があります。そこでステロイドを中止すれば、離脱症状としてリバウンドの生じる可能性も高くなります。

最初の問題が何であるかは関係ない。それが、眼瞼皮膚炎、掻痒のある股間の発疹、脚の軽度の乾燥性湿疹、体躯の貨幣状湿疹による軽度炎症であろうとなかろうと、その経過は非常に似ている。最初の治療は、弱いものから強いものまであるが、しばしば市販のヒドロコルチゾンクリームの使用から始まる。持続または悪化する症状とともに医師を受診すると、中等から強力クラスのステロイドクリームや軟膏の処方箋が手渡される。発疹は消失しても再発し、かゆみや発疹はさらに悪化し、より頻繁にクリームを塗るようになる。この依存は、4-6週間くらい頻繁に使用した後に始まる。クリームは効かず、発疹は広がるので、さらなる治療が探し求められる。そうすると、超強力なステロイド外用薬が処方され、リバウンドの紅斑がより速やかに引き起こされる。*15

強力なステロイドが処方される段階に入ると、患者は肉体的にも精神的にもステロイドがなくてはもたない不安定な状態に陥ると考えられます。そうなると、たとえ医師がアドバイスをしたとしても、患者の方で "不適切" な使用がなされるかもしれません。

強力なステロイドが患者の手に入ると、医師のアドバイスにかかわらず、患者はステロイドの継続使用に陥りやすいことを覚えておくべきである。なぜなら、治療を中止すると、炎症のリバウンドが再発するかもしれないからである。小児や若年者への強力なステロイドの処方には特に慎重になるべきである。*16

 

リバウンドは誰のせい?

リバウンドが存在するという前提に立つと、問題となるのは、ステロイドを処方する医師が悪いのか、使用する患者が悪いのか、ということです。

医師は、患者の "不適切" なステロイドの使用が原因で副作用が起きると主張しています。一方、患者は、医師が "適切" にステロイドを処方していないと感じていると思います。ステロイドを長期に漫然と処方し続けたり、患部を視診すらせずにステロイドを処方するような医師が現実に存在するからです。

 

次に引用するのはある製薬会社のウェブサイトにおけるリバウンドについての解説です。リバウンドの存在については認めながらも、"適切な治療" であればリバウンドは起きないとしています。薬そのものには問題はなく、薬の用い方に問題があるという立場です。

“ステロイド外用剤のリバウンド”とは、使用前の状態よりも患部が悪化してしまう、ということを意味します。(中略)
適切な治療であれば、リバウンドと呼ばれる現象は起きません(起きないような治療が行われています)。 *17

 

一方で、"適切な治療"、すなわちアトピー性皮膚炎に対する標準治療が普及した現在でも、リバウンドに見舞われる患者は後を絶ちません。次の報告は、適切な治療を行っていたとしても、患者の一部で、その治療が奏功しないケースがあることを示唆しています。

多くのアトピー性皮膚炎患者は、悪化因子の除去、保湿剤の外用、ステロイドおよびカルシニューリン阻害剤の外用という標準治療により有効に治療されうる。しかし、少数のサブグループでは、適切な標準治療にもかかわらず、困難なアトピー性皮膚炎やクオリティオブライフの低下が続く。これらの患者では、免疫抑制剤や光線療法を含む二次治療が考慮されるべきである。(中略)

経口プレドニゾンのようなステロイド内服薬の使用は推奨されない。多くの場合に最初は劇的な臨床的改善を示すが、中止後のリバウンドが一般的であり顕著である。*18

標準治療が奏功しなかった患者のなかに、ステロイド外用薬を長期連用する者が出てきて、リバウンド発症のリスクを負う患者となってしまうことが考えられます。

リバウンドが生じた責任を誰に問うのか、ケースごとに事情が異なり断定することは困難ですが、その前にリバウンドの存在を認める必要があります。

 

製薬会社、政府は

製薬会社の中には、ステロイド外用薬によるリバウンドへの効果をねらった薬の開発を試みた会社もあります。リバウンドを既知の事実として捉えているのです。

抗ヒスタミン薬の一部の薬には、ステロイド外用薬治療中止後のリバウンド現象を抑制する作用があるかもしれないという、マウスでの研究が報告されています。

これらの結果は抗ヒスタミン薬のオロパタジンがステロイド外用薬治療中止後のリバウンド現象に対する阻害作用をもつことを示唆している。このようにオロパタジンはステロイド外用薬を用いた長期治療の中止後の逐次的治療薬となることが期待されている。*19

 

また、日本の厚生労働省は、リバウンドの存在を認識しています。

医薬品成分(副腎皮質ステロイド)が検出された外用剤について

これらの製品には、医薬品成分である副腎皮質ホルモン誘導体(いわゆるステロイドホルモン)が含まれており、繰り返し使用していた方が急に使用をやめるとリバウンド現象と呼ばれる副作用を生じるおそれがあり、専門の医師の診断を受けて、徐々に使用をやめる必要がある場合もあります。*20

 

ニュージーランド政府も、リバウンドの存在を認識しています。ニュージーランド保健省の機関 Medsafe はステロイドによるリバウンドについて重大な問題になり得るとウェブサイトで注意を呼びかけています。

Medsafe はステロイド外用薬の重篤なリバウンドの影響に苦しむ患者がいることを認識している。皮膚病治療におけるリバウンドは、一般的ではないが、ステロイド外用薬使用における重大な問題になり得る。*21

 

リバウンドは生き地獄

リバウンドは大変に激しい症状を伴うもので、患者の苦痛は計り知れません。

多くの患者がステロイド外用薬で症状をコントロールできているとしても、その陰で、一部の患者が、"適切な治療" によってもステロイド外用剤依存に陥り、使用中止により激烈なリバウンドを起こすことが報告されています。

副作用のない薬はない、という声をよく聞きます。どんな薬にも副作用はあるのだから、ベネフィットとリスクを衡量して、ベネフィットが勝るなら薬を使用するべきだという考え方があります。その通りかもしれません。

しかし、だからといって、副作用を起こした患者を見捨てて良いという話にはなりません。数々の報告から目を背けてはいけないと思います。

おそらく、リバウンドは、どんな薬にも副作用はあると諭す人が、目の当たりにすれば絶句するほどの苛烈な症状を呈します。ある皮膚科医は、リバウンドを「生き地獄」と形容しています。

顔や首などの皮膚に、長いことある程度強いステロイド外用剤を塗って赤ら顔になった状態では、ステロイドなしではいられなくなり、激しい炎症が起こり、顔は腫れ、目も開けられなくなります。これを反跳現象(リバウンド)とよんでいます。ちょうど麻薬の禁断症状と同じように、ステロイドをやめられず、塗ることをつづけざるをえなくなります。最後は真っ赤な顔をして、強いステロイドを一日何回も塗らずにはいられないという、まさに生き地獄のような状態です。*22

このような目にあいながら、皮膚科医から、リバウンドは存在しないなどと主張された日には、患者は誰に助けを求めればよいのでしょうか。

 

最後に

さて、ここまで、ステロイドによるリバウンドについての報告を紹介してきました。 

患者も、製薬会社も、政府も、一部の皮膚科医も、リバウンドの存在を認識しています。

最近アメリカで発表された、アトピー性皮膚炎を論じたある総説論文は、当然のようにリバウンドに言及しています。

(ステロイド外用薬の)長期または1日1回以上の使用は、潜在性のバリア破壊と関連し、中止後のリバウンドの炎症を引き起こす可能性がある。*23

 

一方、日本皮膚科学会は、リバウンドの存在を認めておらず、その推進する標準治療においてもリバウンドが生じることを想定していません。

標準治療を解説する九州大学ウェブサイトの記述を再掲します。

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いつまでこの記述が掲載され続けるのか、それを見届けるのも一興でしょう。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:B.C. Woman Whose Skin Fell Off Warns About Steroid Cream Addiction

*2:患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

*3:Hanifin JM., Breaking the cycle: how I manage difficult atopic dermatitis. An Bras Dermatol. 2007;82(1):79-85.

*4:New Drug Offers Hope To Millions With Severe Eczema | The Huffington Post 10/06/2016

*5:Ference, J.D., & Last, A.R., Choosing Topical Corticosteroids. American Family Physician, January 15, 2009 Volume 79, Number 2.

*6:Fisher DA: Adverse effects of topical corticosteroid use. West J Med 1995; 162:123-126.

*7:Chen AY et al. Steroid-induced rosacealike dermatitis: case report and review of the literature. Cutis [2009, 83(4):198-204].

*8:片山一朗ほか(2006)『皮膚科学』文光堂.

*9:富田靖監修; 橋本隆ほか編(2013)『標準皮膚科学 第10版』医学書院.

*10:清水宏(2011)『あたらしい皮膚科学 第2版』中山書店.

*11:榎本充邦, ステロイド外用剤による withdrawal syndrome 様症状. 治療: Vol.79, No.12 (1997,12), 72-76.

*12:Fukaya M et al. Topical steroid addiction in atopic dermatitis. Drug Healthc Patient Saf. 2014; 6: 131–138.

*13:S. Reitamo, T. A. Luger, and M. Steinhoff, Textbook of Atopic Dermatitis, Informa Healthcare, London, UK, 2008.

*14:Kligman, A. M., and Frosch, P. J. (1979), Steroid Addiction. International Journal of Dermatology, 18: 23–31.

*15:Rapaport, M.J., & Rapaport, V., The red skin syndromes: corticosteroid addiction and withdrawal. Expert Rev. Dermatol. 1(4), 547-561 (2006).

*16:SNEDDON, I.B. (1976), Atrophy of the skin. British Journal of Dermatology, 94: 121–123.

*17:薬局でよく聞く!ステロイド外用剤の誤解|教えて薬剤師さん|ヒフノコトサイト|田辺三菱製薬

*18:Arkwright et al. Management of Difficult-to-Treat Atopic Dermatitis. J ALLERGY CLIN IMMUNOL: IN PRACTICE VOLUME 1, NUMBER 2.

*19:Tamura, T., Matsubara, M., Hasegawa, K., Ohmori, K. and Karasawa, A. (2005), Olopatadine hydrochloride suppresses the rebound phenomenon after discontinuation of treatment with a topical steroid in mice with chronic contact hypersensitivity. Clinical & Experimental Allergy, 35: 97–103. doi:10.1111/j.1365-2222.2005.02147.x

*20:医薬品成分(副腎皮質ステロイド)が検出された外用剤について|厚生労働省

*21:Steroid Rebound - A Topical Issue

*22:田上八朗 (1999). 皮膚の医学 中央公論社.

*23:Siegfried et al. Systematic review of published trials: longterm safety of topical corticosteroids and topical calcineurin inhibitors in pediatric patients with atopic dermatitis. BMC Pediatrics (2016) 16:75.