読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイド軟膏はアブナクない?

メディア情報

21日、読売新聞のウェブサイトに次の記事が掲載されました。

yomidr.yomiuri.co.jp

内容に目新しい要素はひとつも見当たりませんでした。従来から繰り返されているような標準治療の内容を、小児科医が紹介するコラムです。

結論は、

適正適量のステロイド軟膏は、ちっともアブナクありません!

なのだそうです。

読売新聞は、2016年になっても、まだこのような記事を掲載しているのです。

 

記事を書いた小児科医は、ステロイドを怖がることなく、標準治療の3本柱に沿った治療を受ければ改善するといいます。なお、3本柱とは次の3つです。

  1. 入浴と保湿のスキンケア
  2. 炎症を抑える薬物治療
  3. 悪化因子探しと対策

 

このような記事を読んで、私のようないわゆるアトピーを長く患っている患者がどのような感想を抱くかとういと、

  • 標準治療が奏功しない患者がいることを知らない医師もいるらしい。
  • このように考える医師がいるからステロイド依存患者が減らないのだろう。
  • 治療に "適切" とか "適量" という言葉をつけておけば良いと考えているらしい。

という感じです。ますます医師にかかりたくないと思います。

 

現在、アトピー性皮膚炎の診療において問題となっているのは、標準治療によっても症状がコントロールできない患者がいること、そして、その事実がほとんど無視されていることです。 

例えば、いまアトピー性皮膚炎の新薬の開発が進められている最中ですが、新薬が対象としているのは、「外用治療によってもコントロール不十分な中等症から重症のアトピー性皮膚炎*1 」です。

このような標準的治療によってもコントロール不十分な患者に対して、お題目のように、"ステロイドはアブナクない" と主張し続けても、何の実効性もありません。

加えて、"アブナクない" とする情報を目にした患者が、ステロイドは "アブナクない" ものと勘違いして長期連用を続けた場合に、大変危険な状況に置かれる可能性があります。

大切なのは、標準治療によっても一部でコントロール不十分な患者がいることを踏まえて、情報を発信することです。

 

さて、記事の内容について、患者の立場から、説明のなかで違和感を覚える箇所について指摘したいと思います。 

まず、小児科医は、「悪化因子探しと対策」における悪化因子の除去について、次の内容を挙げています。

  • ダニ対策は、フローリングと掃除
  • 夏の汗には1日2回のシャワー
  • 石けんは「敏感肌用」や「低刺激」のもので泡立てて洗う

ダニ対策は、アトピー患者なら誰もがやっているでしょう。

1日2回のシャワーは重症患者には酷です。また、汗はかいたときにかゆくなるので、シャワーの回数をいくら増やしたところであまり意味はありません。

石けんについての知識も多くの患者には既知のものですし、これが正しいかどうかは議論があることでしょう。

こうした対策は、多くの患者が実践していることであり、それでも改善しないから悩んでいるのです。そして、その程度のアドバイスしかもらえないから医師を受診しなくなるのです。

 

次の「入浴と保湿のスキンケア」は、さし障りのない内容です。入浴で皮膚を清潔にして、しっかり保湿しましょうというもの。患者であれば、誰もが行っている、あるいは、行ったことがある内容です。これも同上で、この程度の対策は、多くの患者がすでに実践していることです。

また、ここで肝心なことは、ステロイド外用薬使用経験者の保湿依存症についての知識が抜け落ちていることです。

プロペトやヒルドイドを肌が光るくらいたっぷり塗ると良いそうですが、保湿依存症に陥っている場合は、保湿剤をたっぷり塗っても10分後にはガビガビに乾いてしまいます。その場合はどうすればよいのでしょう。

 

最後は、「炎症を抑える薬物治療」です。小児科医は、ステロイド外用薬は、適正適量使用すれば副作用はないと主張します。

基本はステロイド軟膏です。え? 副作用が怖いので避けたい? いいえ、適正適量使用すれば副作用はありません。

この小児科医のいう適正適量とは、適切なランクのステロイド外用薬をフィンガー・ティップ・ユニットの量で1日2回1~2週間塗ることのようです。その後は、塗る回数を徐々に減らし、保湿剤に移行するとのことです。

いったいどれだけの患者が、この "適正適量" のステロイドで、保湿剤のみの塗布に移行できるというのでしょうか。

悪化すれば適正適量ではなかったからだ、と言われてしまいます。そのような責任逃れのような言い訳に終始するので、患者の信頼を失うのです。

繰り返しになりますが、その方法で全ての患者が症状を維持できれば良いけれども、一部でコントロール不能に陥る患者がいることが問題なのです。

だんだんと "適正" なランクが上昇していき、ストロンゲストでも抑えきれず、シクロスポリン内服にいたる患者もいます。

ステロイド外用薬で万事解決するというのなら、なぜプロトピックやシクロスポリンが存在し、さらにはデュピルマブなどが導入されようとしているのでしょうか。

 

さらに、この小児科医は、ステロイド外用薬を中止した際の再燃は「リバウンド」とは言わないといいます。

ステロイド軟膏をいきなりオフにすれば必ず再燃します。こうした現象をリバウンドと言う人がいますが、これはとんでもない言いがかりです。高血圧の人が毎日降圧剤を飲んで、血圧が下がったからと言って薬をやめれば、また高血圧に戻ります。当たり前です。でも、こういう時に、リバウンドなどとは誰も言わないですよね? 

何が言いたいのかややわかりにくいのですが、ステロイド中止後の再燃などリバウンド様の症状は存在するけれども、それをリバウンドとは呼ばない、ということでしょうか。

呼び方はさまざまあることでしょう。そんなことは些末な話です。重要なのは、長期連用していたステロイド外用薬を中止した際に、「再燃」という言葉では到底表しきれないような、すさまじい劇症型の皮膚炎が生じるということです。それを一般に「リバウンド」と呼んで、「再燃」という言葉が惹起するイメージとは異なるものとして、認識しようとしているのではないでしょうか。

呼び方は、それこそ「レッド・バーニング・スキン・シンドローム」でも良いし、「全身型酒さ様皮膚炎」でも良いし、「リバウンド」でも良いのです。症状の存在を認め日本皮膚科学会などが適切に名付ければよいでしょう。ただし、呼び方の問題のみに矮小化しないことです。

私はステロイド中止後のリバウンドを経験したことがあります。経験者として、アトピー性皮膚炎の症状の「再燃」と、ステロイド外用薬中止後の「リバウンド」について、それぞれの重症度をグラフ化してみましょう。

まず、一般的なアトピー性皮膚炎の経過です。現在、私は、ステロイド外用薬などの免疫抑制剤および保湿剤を使用していません。その場合、汗や乾燥などの増悪因子によって、季節変化とともに悪化と改善を繰り返します。再燃するのは、アトピー性皮膚炎そのものの炎症、すなわち「原疾患の悪化」といえるでしょう。

 

f:id:atopysan:20161122173812j:plain

 

次に、ステロイド外用薬中止後に「リバウンド」を起こした場合の経過です。かなり簡略化していますが、おおむね次のようになるでしょう。私の場合、炎症をステロイドで抑え込んだ後は、前の炎症よりも強い勢いで炎症が再燃してきました。ステロイドのランクも塗る量も回数も増やしたうえでのことです。

そして、長期連用後にステロイドを中止すると、多くの例で「リバウンド」が生じます。これは、「原疾患の悪化」やアトピーの再燃というには、比較にならないほどの劇的な悪化です。

 

f:id:atopysan:20161122174451j:plain

 

繰り返しますが、呼び方は何でも良いのです。大切なのは、この臨床的事実を認識すべきということです。標準治療が奏功しなかった一部の患者は、このようなリバウンドを経験しています。ですから、リバウンドは存在しないとか、リバウンドなどとは言わない、などの主張については苦笑せざるを得ないのです。

標準治療を受けている患者も、受けていない患者も同じだと思いますが、多くのアトピー性皮膚炎患者は、皮膚科医や小児科医のアトピーについての知識の浅薄さに、不安を抱いていると思います。何しろリバウンドの存在すら信じない医師がいるのですから。

そのために、医師を受診しなくなり、民間療法に流れていく患者が出てくるのです。ステロイドをアブナイと思うのではなく、ステロイドを処方する医師をアブナイと考えているのです。

 

この読売新聞の記事を読んで10年前の記事を読んでいるような錯覚に陥りました。しかし、これがアトピー診療の現実というべきなのでしょう。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:Simpson EL, Bieber T, Guttman‑Yassky E, et al. Two phase 3 trials of dupilumab versus placebo in atopic dermatitis. N Engl J Med.