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デュピルマブ続報

ミクスOnlineの17日付の記事によれば、サノフィ日本法人のナトン社長が、昨日(2016年11月16日)都内で記者会見を行い、デュピルマブ(Dupilumab)を成長ドライバーとする6製品のうちのひとつに挙げたということです。申請予定時期は非開示*1

つまり、サノフィは、日本でデュピルマブを上市する予定であるということです。商品名は「Dupixent®」となるようです。

 

また、サノフィ社のプレスリリースを読むと、アメリカでの申請状況がわかります。

Dupixent®の生物学的製剤承認申請(BLA)は、米国食品医薬品局(FDA)に優先審査の対象として受理されており、審査終了目標日は2017年3月29日に設定されています。*2

 

日米はアトピー性皮膚炎患者が多い国ですから、デュピルマブが投入されるのも当然かもしれません。

トムソンロイターによれば、業界アナリストは、デュピルマブの2021年までの平均の予想年間売上高が30億ドルにのぼるとみているようです*3

 

 

米メディアでもデュピルマブが取り上げられる機会が増えています。

 

New Drug for Severe Eczema Is Successful in 2 New Trials

「2つの新しい試験で重症湿疹の新薬が成功を収めた」

(2016年10月1日付 ニューヨーク・タイムズ)

数週間のうちに、彼女の身体の90%を覆っていた醜い赤い湿疹はほとんど消え去った。さらに良いことには彼女はこう言った。「初めて薬を使ったときから、まったくかゆみがないんです」。

副作用は、結膜炎のわずかな増加、眼の外膜の炎症、注射部位の腫れである。

研究に関わった国立ユダヤ医療センター及びコロラド大学医学部のアトピー性皮膚炎専門家であるMark Boguniewicz博士は言う。「我々にとってアトピー性皮膚炎における画期的な研究です。私たちは新しい時代に入ろうとしています」。

記事の中で、サノフィのパートナーであるリジェネロンのYancopoulos博士は、デュピルマブの価格は「薬の価値に見合ったものになる」と述べています。

 

New Drug Offers Hope To Millions With Severe Eczema | The Huffington Post

「重症湿疹をもつ無数の人々に新薬は希望をもたらす」

(2016年10月6日付 ハフィントン・ポスト)

最新の臨床試験で、デュピルマブという新薬が極めて有望であることを示した。試験参加者の最大38%で、16週間の治療後に、皮膚紅斑が完全に消失するかほとんど消失した。

「病気が中等症から重症になると、生活のすべての面に影響が及びます」。ニューヨークにあるアイカーン医科大学の皮膚科学及び免疫学の教授であり、治験の参加者を採用し治療した治験責任医師の一人 Emma Guttman-Yassky 博士は指摘する。

「私たちは、患者たちが、病気があまりに悪いために自殺すら考えることがあると何度も聞いたことがあります。結婚生活を終わらせようとしたり、法律事務所を閉じようとした患者もいました。」彼女は続ける。「しかし、この薬は彼らが生活を送れるようにすることができたのです」。

 

New Drug May Revolutionize Treatment For Skin Disease Eczema « CBS New York

「新薬は皮膚疾患の革命的治療薬になるかもしれない」

(2016年10月17日付 CBS New York)

アメリカやヨーロッパで演奏活動をしているコンサートハープ奏者の Lisa Tannebaum さんは、日夜彼女を苦しめるひどい湿疹をもっていた。

「かゆみはとても強いものでした。それは説明できるものではありません」。Tannebaum さんは言う。「毎晩毎晩かゆいのです。皮膚にバリアがないので、黄色ブドウ球菌やウイルスが感染します。生活のすべてに影響します」。

Tannebaum さんは、湿疹が全身に広がったために演奏することを中止しなければならなかった。最も強力な治療でさえ役立つことはなかった。

(中略)

(デュピルマブの)隔週の注射は Tannebaum さんの湿疹を治し、他には何もなくなった。彼女は演奏活動を再開することもできた。

「デュピルマブは私にとって奇跡です。私の生活を取り戻してくれました。とても感謝しています」。

今のところ、CBSのウェブサイトで、Tannebaum さんを取材した動画を見ることができます(30秒のCMの後で本編が始まります)。

 

 

 

いずれの記事もわかりやすくまとめられています。デュピルマブの試験結果はもとより、特に従来の薬物治療がいかに有効でないかについても、客観的な視点から記述されています。日本メディアの「ステロイド安全キャンペーン」とは大違いです。

 

 

さて、米メディアで注目されているのは、上記にもあるように、最近デュピルマブの試験結果が発表されたためと思われます。

この研究については、オープンアクセスの論文にまとめられています。

Simpson EL, Bieber T, Guttman‑Yassky E, et al. Two phase 3 trials of dupilumab versus placebo in atopic dermatitis. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa1610020

 

また、サノフィ社の資料の中にも試験結果の内容が盛り込まれたスライドがあります。

 

試験結果の一部について記します。

2014年から2015年にかけて、SOLO1 及び SOLO2 という同一に設計された2つのランダム化プラセボ対照第Ⅲ相試験が行われました。外用治療ではコントロールできない中等症から重症の成人アトピー性皮膚炎患者が対象となりました。

2つの試験の参加者はそれぞれ671人と708人。参加者は、毎週デュピルマブを投与する群、毎週プラセボを投与する群、隔週でデュピルマブとプラセボを交互に投与する群の3群に1:1:1の割合で割り当てられ、16週間投与を受けました。

主要評価項目は、16週時点で、IGA(Investigator’s Global Assessment 治験医師による包括的評価)スコアが0または1(病変なし又はほぼなし)、または、スコアがベースラインから2ポイント以上改善とされました。

副次評価項目は、16週時点で、EASI(Eczema Area and Severity Index 湿疹面積・重症度指数)スコアがベースラインから75%以上改善(EASI-75)、などとされました。

主要評価項目を達成した患者の数と割合は次の通り。

  • SOLO1
    プラセボ 23人(10%)
    デュピルマブ隔週 85人(38%)
    デュピルマブ毎週 83人(37%)
  • SOLO2
    プラセボ 20人(8%)
    デュピルマブ隔週 84人(36%)
    デュピルマブ毎週 87人(36%)

副次評価項目のうち EASI-75 を達成した患者の数と割合は次の通り。

  •  SOLO1
    プラセボ 33人(15%)
    デュピルマブ隔週 115人(51%)
    デュピルマブ毎週 117人(52%)
  • SOLO2
    プラセボ 28人(12%)
    デュピルマブ隔週 103人(44%)
    デュピルマブ毎週 115人(48%)

複数の評価項目で、プラセボ群と比較してデュピルマブ投与群で統計的に有意に改善が認められました。

 

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(出典:Sanofi - IR Thematic call on dupilumab October 01, 2016)

 

留意点としては、試験期間が16週であり長期的な有効性および安全性が未評価であること、子供に対する有効性および安全性も未だ評価できていないこと、などが挙げられるでしょう。

 

ところで、この治験結果について、先月MEDLEYニュースが取り上げており、国内ではこのニュースを目にした人もいるかもしれません。

アトピーの新薬デュピルマブの注射で297人が90%改善 - MEDLEYニュース

記事タイトルに「90%改善」という文言があります。タイトルを見ると、90%改善するならデュピルマブはすばらしい薬だという印象を受けるかもしれません。

しかし、この90%改善した患者というのは、複数の評価項目があるなかで、副次評価項目のうちの「EASI-90」という項目を達成した患者です。その患者297人というのはデュピルマブ投与群全体の32%です。

つまり、90%著明に改善したのは3人に1人だったということです。

なお、先に示した通り、主要評価項目を達成したのはデュピルマブ投与群の40%弱です。副次評価項目「EASI-75」を達成したのはデュピルマブ投与群の50%前後です。

数字だけを見て誤解する方もいらっしゃるかもしれませんので、一応指摘しておきます。いずれにせよ、正確かつ詳細な情報を得たい方は、サノフィ発表資料または論文に目を通すことをお勧めします。

 

(※追記)

デュピクセント(デュピルマブ)がアメリカFDAから承認されました。


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