アトピー覚書ブログ

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大気汚染がアトピーの原因?

11日、東北大などの研究チームが、

「大気汚染物質がアトピー性皮膚炎の症状を引き起こすメカニズムを解明」

と題するニュースリリースを発表しました。

ニュースリリースを読んだ限りでは、

「大気汚染物質がマウスのアトピー性皮膚炎に似た症状を引き起こすメカニズムを一部解明」

と題した方が個人的にはしっくりくるものでした。

以下、ニュースリリースを引用しつつ感想を述べます。

 

これまで、大気汚染とアトピー性皮膚炎の患者数や重症度に相関があることが知られていましたが、その理由は不明でした。

大気汚染とアトピーに相関があることを、私は初めて知りました。ニュースリリースには、大気汚染物質は「ディーゼル排気に含まれる物質など」と書かれています。

しかし、それなら幹線道路沿いでアトピー患者が多かったり、中国でアトピーが激増していてもおかしくないと思いますが、そういった話は聞いたことがありません。

下図は、大気汚染物質(窒素酸化物NOx)の年間排出量を示したマップです。2003年時点ですが、日本では1980年からそれほど大きな変化はありません。

この図から、日本では、比較的西日本で窒素酸化物の排出量が多いことがわかります。

 

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出典:大気汚染物質(マップ) - 東アジアの広域大気汚染マップ|環境GIS | 環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

 

次は患者数のデータです。下図は、2014年の都道府県毎のアトピー性皮膚炎を含むアレルギー疾患患者数を示したものです。

年度が異なるので上図と比較はできませんが、おおむね患者数に地域差はみられません。

 

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出典:厚生労働省 健康局 がん・疾病対策課「アレルギー疾患の現状等」(平成28年2月3日)より

 

大気汚染とアトピーは本当に相関するのでしょうか。

東北大は、相関が存在するとし、かつ、その理由を解明したとしています。

工業化によって大気汚染が進みアトピー性皮膚炎患者も増加したのではないか、というような説は過去にも聞いたことがあります。そのため、先進国にアトピー性皮膚炎が多いのだという話も聞きます。

しかしながら、個人的には、ステロイド薬の普及している国で、薬により慢性化したいわゆるアトピー性皮膚炎が多いだけではないかと思います。

 

原因論はさておき、次はartemin(アーテミン)に注目してみます。

ニュースリリースの図を見ると、アーテミンの発現がひとつのポイントであることがわかります。

大気汚染物質が転写因子 AhR を活性化させることで神経栄養因子 artemin を発現させ、皮膚表面の表皮内へ神経が伸長し、過剰に痒みを感じやすい状態を作り出すことがわかりました。

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大まかにまとめると、

「大気汚染物質→AhR活性化→アーテミン発現→表皮内神経伸長→痒み(アトピー)」

となるようです。

また、アーテミンを働かなくする抗体の投与によって表皮内神経伸長と痒みが改善するとのことです。

 

ところで、アトピー性皮膚炎とアーテミンの関係については、大阪大学が先行して研究発表しています。

「アトピー性皮膚炎など「温もると痒い」メカニズム解明 ー病変部で神経栄養因子アーテミンが皮膚の温感を増強させ痒みを引き起こすー」(2012年7月12日付)

というものです。

大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座(皮膚科学)室田浩之講師らの研究グループは皮膚病変部にサブスタンスPによって皮膚の真皮線維芽細胞から誘導される神経栄養因子の一つであるアーテミンが「温もると痒い」現象を引き起こす事を発見しました(図1)。

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図1:皮膚の構造と真皮の位置(左)、およびアレルギー炎症がアーテミン発現を介して温感過敏と痒みを誘発するメカニズム(右)*1

この大阪大学の発表をまとめると、次のようになるかと思います。

「炎症→サブスタンスP→線維芽細胞→アーテミン発現→神経増加→温感→痒み」

先ほどの東北大学のものを再掲します。

「大気汚染物質→AhR活性化→アーテミン発現→表皮内神経伸長→痒み」

 

大阪大学の発表は、アトピー性皮膚炎患者がしばしば温感に対して痒みを感じるのはなぜかについて考察しています。

私も、冷感より温感に対して痒みを感じることは多いです。ですから、大阪大学の発表については、納得させられるものがあります。

もう一つ言えば、私だけかもしれませんが、掻いて炎症がおきると過敏になって、さらに掻いてしまうことが多いです。つまり、皮膚炎が起きる過程で過敏になるわけで、過敏になって皮膚炎が起きるというのは何となく違うような気がします。そして皮膚炎が起きるのは、過敏性をはるかに上回るような発汗や乾燥による掻破が主です。大阪大学の考察は炎症から出発しているので、その点でも納得感があります。

一方、東北大学の発表には戸惑いを感じてしまいます。やはり、私にとっては大気汚染物質という原因に違和感があるからではないかと思います。

マスメディアが注目しないのも妥当かもしれません。私が探した限りでは、地元の河北新報が記事にしていましたが、他は共同通信の配信を基にしたのが数社のみで、NHKや全国紙による独自記事は見当たりませんでした。

 

ここまで否定的な意見を述べてきましたが、ニュースリリースのなかの次の記述はまったくその通りだと思います。

現在、アトピー性皮膚炎の治療では主に、ステロイド剤を塗ることによる対症療法的な皮膚炎の治療が行なわれていますが、これは原因を改善するものではなく、治療をしている間も痒みが治まらないことがあります。

 

また、アーテミンの働きを抑える抗体については、アトピー性皮膚炎の治療薬として利用できる可能性があるとのことなので、こちらの研究に期待したいと思います。