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腸内カンジダとアトピー性皮膚炎

腸内カンジダでアトピーが悪化する?

一部のアトピー患者の間で、アトピー性皮膚炎の原因として、腸内環境説が支持されているようです。

腸内環境と一口にいっても様々な説があります。印象として支持の多い説は、腸内カンジダの増殖がアトピー性皮膚炎の症状に関与しているというものです。

確かに、私の場合、血中のIgE抗体検査では、真菌のカンジダおよびマラセチアに対して陽性の結果が出ています。もしかしたら、何らかの影響があるのかもしれません。

さて、現代の医学研究は、カンジダとアトピーの関連について、どのような評価を与えているのでしょうか。

 

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'Candida albicans' by GrahamColm (Own work)
available at https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Candida_albicans_2.jpg
[CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/]

 

カンジダ抗原に対するアレルギー反応

カンジダ Candida は酵母 yeast の一種で、真菌 fungus(菌類 fungi)に属します。

カンジダのうちで有名なのはカンジダ・アルビカンス Candida albicans で、ヒトの口腔内、膣、消化管などに常在しています。

アトピー性皮膚炎患者を対象とした、カンジダ抗原に対する陽性率をみると、あるプリックテストでは、

  • 重症アトピー性皮膚炎患者 84%
  • 中等症 36%
  • 喘息  22%
  • アトピー疾患以外 5%

という結果が報告されています*1

このように、アトピー性皮膚炎患者においてカンジダ抗原に対する即時型アレルギー反応が観察されていることから、カンジダ抗原が皮膚症状に影響を与える因子であることが指摘されています。

そのため、一部のアトピー性皮膚炎患者に対して、抗真菌剤による治療が行われることがあります。そして、抗真菌剤治療により、皮膚症状が著明に改善し、血清IgEレベルが減少したという報告があります *2

カンジダおよびマラセチアの関与が疑われるアトピー性皮膚炎患者に対する経口の抗真菌剤治療では、有効率が50-65%であったとする報告もあります*3 。

 

カンジダはアトピーの原因ではない

ここで注意を要する点があります。こうした抗真菌剤治療が有効なのは、ごく「一部の」アトピー性皮膚炎患者に限られるということです。

つまり、ステロイド外用薬等による治療が功を奏さず、特に顔面紅斑など頭頸部に難治性病変をもついわゆる成人型アトピー性皮膚炎患者の一部において、有効であるかもしれないということです。

アトピー患者のうち、カンジダ抗原に対して陽性を示すのは「一部」の患者であり、抗真菌剤治療が有効性を示すのも「一部」の患者においてです。カンジダ抗原に対して陰性で、相対的にはその影響が低いと考えられる者のなかにも、アトピー性皮膚炎と診断される患者はいます。

したがって、カンジダは、アトピーの「増悪因子」である可能性はありますが、アトピーを発症させる「原因」ではないことが推察されます。

イーストや他の真菌はアトピー性皮膚炎に何らかの役割を果たしているのだろうか? 本レビューで示されるように、文献には相反するデータがある。真菌がアトピー性皮膚炎の原因物質ではないということを覚えておくことは重要である。しかし、一部の患者で、特に従来の治療に反応しない成人患者において、マラセチアおよびカンジダは役割を果たしている可能性がある。マラセチアおよびカンジダの抗真菌剤治療が、アトピー性皮膚炎の一部の患者に有効である可能性を示すいくつかの研究があるが、このことを本当に証明するためには、よく管理された二重盲検対照試験が新たに必要である。真菌のもつアレルギー性または非免疫原性の予想される役割は、単にアトピー性皮膚炎の悪化因子であること、また、保湿剤や抗炎症薬を用いた従来の治療がやはり必要であることを覚えておくこともまた重要である。*4

カンジダがアトピーの原因ではないとしても、アトピーの症状が悪化しているのはカンジダのせいかもしれないので抗真菌剤治療を試してみる、ということも選択肢としては考えられます。

しかし、有効な症例は一部であるし、本当に抗真菌剤が有効に作用しているかどうかはよくわかっていません。そのため、基本的には、抗炎症薬などを用いた従来の治療が必要であると考えられています。 

 

 “腸内カンジダ” は今も論争の的

ここまで見てきたように、カンジダの関与が疑われるアトピー性皮膚炎に対して、抗真菌剤を用いた治療は一部で有効ですが、有効ではないケースも少なくないことが示されています。どうもはっきりとしないのです。

それが直接目に見えない腸内のカンジダであれば、なおさらよくわかりません。そのため、明確な結論を出すことも難しいのでしょう。実際、腸内カンジダ悪化因子説の是非については議論が続いているようです。

消化管におけるカンジダ・アルビカンスの過剰な定着が、アトピー性皮膚炎における悪化因子を構成しているかもしれないという仮説が提唱されてきた。しかし、この仮説は今も論争の的となっている。*5

 

カンジダは日和見菌としてヒトに常在しており、通常は宿主に害を及ぼしません。一方、異常増殖などにより、口腔カンジダ症、外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症などを発症させることが知られています。

口腔部でも外陰部でもカンジダの増殖は肉眼で観察できますが、「腸内」のカンジダについてはどうでしょうか。特殊な検査でもしないかぎり、異常増殖しているかどうかはわかりません。抗原検査で陽性であったとしても、実際にカンジダ菌の数が増殖しているかどうかはわかりません。

ある論文は、マウスの実験においては、胃腸粘膜でのカンジダ定着が部分的に食物抗原への感作を促進させていると指摘する一方、ヒト消化管でマウスと同様かどうかはわからないと指摘しています。

マウスモデルとは対照的であるが、健常なヒトの消化管でカンジダ・アルビカンスが定着しているというのではない。健常なヒトの40-60%で、カンジダ・アルビカンスは舌根部に定着している。舌から酵母細胞が飲み込まれ、消化管を通過して生き延び、糞便から検出される。さらに、マウスの前胃におけるカンジダ定着の主要部位である非分泌性上皮は、ヒトの胃にはない。このように、ヒト消化管における酵母細胞の一過性の滞在が、腸上皮透過性の亢進や健常人での経口免疫寛容に影響するかどうかは不明なままである。*6

 

さらに、他のある論文は、ヒトのアトピー性皮膚炎患者15人の大腸を調べたところ、カンジダ・アルビカンスは誰一人からも見つからなかったと報告しています。 

アトピー性皮膚炎は食物アレルギーと密接に関連していることが知られているが、消化管の実際の変化については明らかになっていない。この研究の目的は、アトピー性皮膚炎患者における大腸の肉眼的・組織学的特徴を調査することである。我々は、全身性アトピー性皮膚炎をもつ外来患者15人を調査した。年齢が近く、炎症性腸疾患ではなく、皮膚炎のない8人も対照群として登録された。(略)

アトピー性皮膚炎患者15人のうち4人が大腸メラノーシスを患っていた。病理学検査では、好酸球の著明な浸潤および顆粒球核の細分化が観察された。抗真菌剤治療後に変化はみられなかった。大腸メラノーシスをもつ患者において、固有層でのリポフスチン沈着が観察された。カンジダ・アルビカンスは、どの被験者からも発見されなかった。結論として、アトピー性皮膚炎患者は大腸の慢性炎症を生じやすい素因をもつのかもしれない。*7

もしかしたら、大腸でカンジダが発見されなかっただけで、胃や小腸を調べれば発見されたのかもしれません。

とはいえ、この調査によれば、アトピー性皮膚炎患者において大腸で炎症が起きているケースがあるけれども、カンジダは炎症の発症に関与していないことが示唆されています。 

 

過去には、そもそも腸内カンジダが病気の発症に関与しているのかどうかについて、システマティックレビューが行われています。 

レビューは、食事その他によって、腸内にカンジダが定着するというエビデンスはその時点において存在しなかったとしています。

腸内カンジダ定着の病因的意義について議論が続いている。本論は、腸内カンジダ定着の病因的意義を決定するためのシステマティックレビューである。原則として1990年から2000年12月7日までのメドライン及びコクランライブラリーについて調査が行われた。データソースは英語及びドイツ語の記事に限定した。選択基準として "疫学 Epidemiology"、"伝染病 Infectious Diseases"、"カンジダ症候群 Candida-Syndrome"、"治療 Therapy" のトピックを取り上げ、原則として免疫正常者である成人のin vivo試験に限定した。2人の査読者が先に定義された独立したデータを抽出した。全体で、システマティックレビューに適している96件の引用が見つかった。消化管内の位置、用いた治療法、転移時間に依存するが、健康で免疫機能が正常な成人においてカンジダ定着が高頻度で検出された(有病率: 4 - 88%)。栄養要因、食品添加物、汚染物質、抗排卵剤、他の薬物や糖尿病が、腸内カンジダ定着の素因である可能性にエビデンスを提供する研究は、現時点において存在しなかった。

また、抗生物質の副作用として、カンジダが影響しているようにみえるケースもあるけれども、カンジダが引き起こすとされる、いわゆる「カンジダ症候群」を裏付けるエビデンスは存在せず、それゆえに抗真菌剤によってカンジダを除染するべき適応症の存在も裏付けられていないと指摘しています。 

しかし治療学的研究からは、抗生物質に伴う下痢にカンジダが影響している可能性が示唆される。他方、抗生物質は腸内毒素症を助長するとみられ、これが、医薬品の直接の副作用のように、下痢や消化管症状のもっともらしい説明となる。カンジダ性の外陰膣炎とIgE介在性疾患におけるカンジダ腸内定着の役割は、矛盾したままである。とはいえ、疫学的、治療学的研究のどちらも、いわゆる "カンジダ症候群" や "カンジダ過敏症候群" の存在を裏付けるエビデンスを見出していない。現時点において、抗真菌剤による "腸除染" の適応症として証明されたものはない。*8

これは14年前のレビューですから、文字通りに受け止めることはできません。ただ、腸内カンジダが病気を引き起こしているかどうかについては、「議論の的である」という雰囲気が伝わってくるかと思います。

現時点においても、エビデンスの集積はまだまだといったところのようです。これについては、研究者の言葉に説得力があると思います。

腸内細菌などの研究を続けている北海道大学の園山准教授は、カンジダとアトピーについて、次のように説明しています。

カンジダ菌(Candida albicans) はヒトの粘膜面に常在する日和見感染真菌です。この菌がアトピー性皮膚炎の発症・増悪に関与すると言われていますが、臨床上の経験的な知見によるところが 大きく、十分な証拠はありません。(中略)

私たちは現在、消化管におけるC. albicansの定着が免疫応答や炎症反応を左右するメカニズムを追究しています。今後は、ヒトにおいてもC. albicansがアレルギーのリスクファクターとなるか否かを明らかにするための臨床研究も必要でしょう。*9

 

 

カンジダの増殖要因

腸内カンジダが悪影響を及ぼすとすれば、その異常増殖が考えられます。

これについて、加齢のほか、抗生物質やステロイドの医療処置により、カンジダが増殖している可能性があるという指摘があります。 

腸管内のCandidaの増殖は医療処置で大きく影響を受ける。抗生物質による菌交代現象、ステロイド処置による生体防御力の低下の他、食事内容による正常細菌叢の乱れなどが原因となってCandidaの腸管内生態は変わってくるものと推定される。この中で、抗生物質とステロイドなどの薬剤の効果については、実験的根拠がかなり明確になってきている。少なくとも動物実験では、これらの処置によってCandidaの生菌数が10倍程度容易に増加する³¹⁾。食道Candida症は、ほぼエイズ患者でのみ認められるという記述もあるが³²⁾、Kandaらは、吸入ステロイド薬フルチカゾンを使用している患者の36%が食道Candida症を発症していることを報告している³³⁾。*10

引用文中にあるように、マウスの実験では、プレドニゾロン皮下投与やテトラサイクリン内服等によって有意にカンジダが増加したという実験があります*11

アトピー性皮膚炎患者は、抗生物質やステロイドを使用する機会が多く、重症患者であればより高頻度に使用することと思われます。そのため、細菌叢の変化あるいは免疫力の低下が引き起こされ、カンジダの異常増殖あるいは感作の促進につながっているのかもしれません。

重症アトピー性皮膚炎患者においてカンジダ抗原に対する陽性率が高い理由は、もしかしたら長年のステロイド薬の使用にあるのかもしれません。

 

イースト・コネクション

ここで、ひとつ触れておくべき問題があります。

それは、腸内カンジダの異常増殖が疾患を引き起こすという諸説については、エビデンスが不十分で、コンセンサスが未だ得られていないにもかかわらず、「アトピーの原因は腸内カンジダの可能性がある」として、やたらに吹聴する人たちがいることです。

そして、彼らの主張の根拠として、よく引き合いに出されるのが、かつてCrook氏が提唱した「イースト・コネクション」仮説です。

イースト・コネクション仮説とは、簡略化して言えば、カンジダなどイーストが腸内で増殖することで様々な健康障害が引き起こされるとする仮説です。

 

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Crook氏は、著書「イースト・コネクション」のなかで、カンジダ・アルビカンスが、ヒトのさまざまな不調・病気に関与していると主張しています。

今こそすべての医師および医学者が、イーストとヒトの病気との関係について理解を深めるときである。イースト関連疾患をもつ患者の多くが、彼らの問題が認識されていないために、非効率に治療されている。

文献を注意深く検討すれば、これを支持する研究は十分に報告されている。抗生物質は、抗体合成および食作用活性の双方を阻害することが示されており、カンジダ・アルビカンスの侵入に抵抗するホストを減少させている可能性がある。一度定着すると、カンジダ成分は免疫機能の低下を促進させる。*12  

実に、この書籍の当該版は30年前にアメリカで出版されたものです。30年後の日本においても言及されていることに、その影響力の大きさを感じずにはいられません。

 

さて、その内容の是非は措くとして、当時のアメリカの医学界は、困った本が出てきた、という印象をもったようです。何しろ「イースト・コネクション」が775,000部売れているというのですから。

当時のThe New England Journal of Medicine誌の論説「Searching for the Yeast Connection(イースト・コネクションを探して)」を読むと、その当惑した医学界の雰囲気を感じ取ることができます。

論説のタイトルからして、イースト・コネクションはまるで存在しないもののように揶揄しています。一般人の間で信じられている俗説と、医学界の科学的言説との乖離を嘆いているようでもあります。

些細な病気によって、慢性カンジダ症候群とされる一部の一般の人々と、医学界との間に、大きな対立が生じている。複雑な症状(全身性カンジダ症やカンジダ過敏症候群として知られる)の存在を論じる人々は、医学界に対して重大な非難を向けており、最も重要である患者への責任を果たしていないと主張している。

 

そしてこの後、「イースト・コネクション」に対する反論が繰り広げられます。

例えば、論文もなく、対照試験も行われていないこと。砂糖を食べてカンジダが異常増殖することに裏付けはないこと。イースト・コネクションの定義が曖昧であること、などを挙げています。

これは現在流布している俗説にも通じる興味深い指摘です。

慢性カンジダ症候群の存在を主張する人々は、彼らの臨床的発見を伝統的な医学雑誌において発表しておらず、彼らの治療計画に割り当てられた患者と無治療の患者とを比較した前向きランダム化試験を行っていない。

一般紙における大量のレポートは、逸話のようで、医学用語に置き換えることが困難である。単糖を食べることが消化管内のカンジダの成長を促進させ、この異常増殖が免疫システムを弱め、複数の臓器系に損傷を与えている、というような、適切な文書記録が存在しない声明が出されている。

それらの症状とカンジダを結びつける論理的根拠は、せいぜいこじつけといったところである。おそらく最も重要なのは、その症状が明白な定義を欠いていることであろう。慢性カンジダ症候群に起因する症状は、うつ病や慢性疲労症候群などの他の症候群と重複する。この実用的定義の欠落は、慢性カンジダ症候群についての重大な研究を妨げる主要因となっている。*13

いかがでしょうか。ここに、ある大胆な仮説が少数の研究者によって声高に唱えられ、関係する団体がその対応に苦慮するという典型的な構図が見てとれます。

結局のところ、イースト・コネクションは完全に立証されているわけでもなく、完全に反証されているわけでもありません。

翻って現在の日本のインターネット上には、イースト・コネクションがあたかも科学的に裏付けられた事実であるかのように述べている情報が少なくありません。

上記のような意見の対立があることも、知っておいて損はないと思います。

 

個人的見解

私は、先ほど示したように、一部の重症アトピー性皮膚炎患者に対する抗真菌剤治療が有効である一方、有効ではないケースも少なくないことから、腸内カンジダによって皮膚症状が悪化するという話は、現時点ではあまり信じていません。

「あまり」というのは、腸内カンジダがアトピー性皮膚炎を悪化させている要因のひとつと信じるに足る明らかなメカニズムが解明されれば、信じるということです。

腸内カンジダとアトピーの関係については、ひっきりなしに論文が発表されています。

最近の論文のひとつを紹介すると、ヒト2歳児におけるアトピーの相対的リスクが最も高いグループでは、生後3ヵ月の腸内でカンジダなどの特異な菌類が多かったとする報告があります*14

腸内フローラと病気との関係が注目されているなか、腸内カンジダについても新しい発見があるかもしれません。

 

さて、アトピー性皮膚炎については、その原因として皮膚バリア機能低下説が主流となりつつあり、ステロイド外用薬等を第一選択薬とする治療法が概ね確立されています。

しかし、一部の患者の間では、アトピーの悪化要因として腸内カンジダがクローズアップされ、イーストコネクションが持ち出され、その対策として食事制限が行われているようです。

なぜ、一部の患者はこうした考え方をするようになるのでしょうか。

あくまで私の推測ですが、アトピー性皮膚炎の治療において、ステロイド治療あるいは脱ステロイドによっても、なかなか寛解せず、満足な状態に至らない患者が多いからではないかと思います。

「これまで、やれることは全てやってきた。しかしなかなか治らない。なぜだろうか」。

そうしたとき、腸内環境に目が向きやすくなるのではないでしょうか。乳酸菌のCMの影響もあるかもしれません。腸内フローラについての話題も拍車をかけていそうです。腸内環境、いかにも健康のカギを握っていそうな響きがあります。食べ物と腸内環境とアレルギー、役者が揃ったような感じです。腸内の善玉菌が減って悪玉菌が増えているのではないか、カンジダが異常増殖しているのではないか。ネットで検索をかけてみると、カンジダとアトピーの関係を解説するサイトも出てきます。

患者は、症状が悪化している理由が見つかると、安心するものです。アトピー性皮膚炎の場合はその理由を見つけにくいわけですが、なかなか治らない原因は腸内環境のせいであると思い込むことで、安心できるのかもしれません。

現状をどう解釈しようと患者の自由なのですが、そこにはひとつ問題があります。そうした患者を標的とした悪徳商法の付け入る隙が残されていることです。腸内環境を改善するという触れ込みで様々な商品が販売されていることは説明を要しないでしょう。また、それらの商品を自分だけ試してくれれば良いものを、他人に勧める者がいるので困ってしまうわけです。

 

最後に、個人的には、先に引用した次の言葉を思い出すことが大切ではないかと思います。

真菌がアトピー性皮膚炎の原因物質ではないということを覚えておくことは重要である。

皮膚上のカンジダが原因で炎症が起きているとすれば、それはアトピー性皮膚炎ではなく、「カンジダ症」、「皮膚真菌症」などと呼ばれるべき病気です。誤ってステロイドを塗らないためにも鑑別が必要です。

また、腸内カンジダとアトピーの関係については今も論争があるのですから、理由があっての皮膚科医指導下の抗真菌剤治療ならまだしも、効果のよくわからない商品に無闇に頼ることは合理的な行動とは思えません。

まずは落ち着いて、例えば北海道大学の研究など、今後の研究の行方を見守っていくことが賢明であるように思います。

 

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(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:比留間ら, 真菌とアトピー性皮膚炎. Jpn J. Med. Mycol. Vol.40, 79-83, 1999.

*2:Morita E et al.(1999), An Assessment of the Role of Candida albicans Antigen in Atopic Dermatitis. The Journal of Dermatology, 26: 282–287.

*3:比留間ら, 真菌とアトピー性皮膚炎. Jpn J. Med. Mycol. Vol.40, 79-83, 1999.

*4:Jan Faergemann, Atopic Dermatitis and Fungi. Clin Microbiol Rev. 2002 Oct; 15(4): 545–563.

*5:Yamaguchi N et al. Gastrointestinal Candida colonisation promotes sensitisation against food antigens by affecting the mucosal barrier in mice. Gut. 2006 Jul; 55(7): 954–960.

*6:Yamaguchi N et al. Gastrointestinal Candida colonisation promotes sensitisation against food antigens by affecting the mucosal barrier in mice. Gut. 2006 Jul; 55(7): 954–960.

*7:Arisawa T et al. Endoscopic and Histological Features of the Large Intestine in Patients with Atopic Dermatitis. J Clin Biochem Nutr. 2007 Jan; 40(1): 24–30.

*8:Lacour M et al. The pathogenetic significance of intestinal Candida colonization – A systematic review from an interdisciplinary and environmental medical point of view. International Journal of Hygiene and Environmental Health, Volume 205, Issue 4, 2002, Pages 257-268.

*9:http://www.agr.hokudai.ac.jp/fbc/sonoyama/candida_J.htm

*10:安部茂ら, 腸管内酵母としてのカンジダと健康保持:生物進化的考察. Medical Mycology Research Vol. 4 ( No. 1) 2013.

*11:Takakura N et al. (2003), A Novel Murine Model of Oral Candidiasis with Local Symptoms Characteristic of Oral Thrush. Microbiology and Immunology, 47: 321–326.

*12:Crook W.G., (1986). The Yeast Connection -A Medical Breakthrough-. New York: Random House.

*13:Bennett J.E., Searching for the Yeast Connection. N Engl J Med 1990; 323: 1766-1767.

*14:Fujimura KE et al. Neonatal gut microbiota associates with childhood multisensitized atopy and T cell differentiation. Nature Medicine (2016).