読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

リーキーガット症候群について

腸に穴があく?

最近、「リーキーガット症候群」(Leaky gut symdrome)なるものが存在するという主張を目にしました。直訳すると「漏れやすい腸管症候群」であり、腸管壁浸漏症候群とも呼ばれているようです。

どうやら、腸に穴が開いて食物や細菌が漏れ出しているために、身体の不具合が生じている状態をさすようです。また、その不具合のひとつにはアトピー性皮膚炎も含まれるようです。

 

腸に穴が開いている。

穏やかではありません。とてもアトピーどころではありません。すぐにでも手術が必要なのではないでしょうか。

そもそも、腸(消化管)に穴があくと(穿孔)どうなるのでしょう。

中空の消化器はいずれも穿孔(破裂)を生じる可能性があり、穿孔が生じると消化管の内容物が漏出し、すぐに手術を行わなければショックを起こして死に至ります。

症状としては胸部や腹部に突然重度の痛みが生じ、腹部は触れると圧痛が感じられます。
診断には、X線検査とCT検査を行います。
緊急手術が必要となります。*1

リーキーガットでは死に至ることはないのでしょうか。

取り急ぎインターネットで検索をかけてみると、出るわ出るわ、リーキーガット症候群を喧伝するサイトの数々。複数のアトピー関連のサイトでも取り上げられていました。どこも似たような情報を複製しているような印象で、詳しいところまではよくわかりません。

リーキーガットとは、いったい何なのでしょうか。

今回はリーキーガット症候群について調べてみました。

 

f:id:atopysan:20160910234304j:plain

 

 

リーキーガット症候群を指摘した国内文献

巷でいわれるリーキーガット症候群についての知識をもう少し深めるため、参考となる国内文献を探してみました。

まず、寄生虫研究で著名な藤田紘一郎氏が、リーキーガット症候群について指摘しています。

腸粘膜に穴が空き、腸からの食物の分子や腸内細菌、病原菌などが漏れ出る「リーキーガット症候群(腸管壁浸漏症候群)」。近年、乳幼児に食物アレルギーが増えたのも、このリーキーガット症候群が原因ではないかと言われている。

腸内細菌が十分に働いていないと、腸は粘膜を正常に作れなくなり、腸粘膜に穴が開いてしまう。(中略)

リーキーガット症候群になると、栄養素は消化不十分な大きい分子のままで体内に侵入してしまい、抗原と認識してIgE抗体によるアレルギー反応、つまり食物アレルギーを起こすと考えられている。*2

リーキーガット症候群が食物アレルギーを起こす可能性を指摘しています。

 

次に、「リーキーガット症候群:あなたのその不調の原因は腸の漏れにあった!」というトンプソン真理子氏による著作があります。

こちらでは、なぜリーキーガットが起こるかについて、次のように書かれています。

様々な要因によって腸内細菌のバランスが崩れると・・・悪玉菌 日和見菌が大繁殖

守られていた粘膜層をグルテン、カフェイン、アルコールなどの炎症物質が直接攻撃 腸壁に無数の小さな穴が開きます

上皮細胞間の接合部分(タイト・ジャンクション)が炎症物質や悪玉菌などの攻撃によって緩んでしまう

その穴から有害な毒素、微生物、分子の大きな未消化の食物が血流内に侵入してしまう・・・この状態をリーキーガットと言います

ここで注目したいのが、リーキーガット症候群でいう "穴があいた" 状態とは、腸上皮細胞間のタイト・ジャンクションが緩んで小さな穴ができた状態をさすらしいことです。

穿孔とは異なり、細胞間の非常に小さな "穴" の話であるようです。では、そのタイト・ジャンクションについて調べを進めてみます。

 

タイト・ジャンクションはリーキー

密着結合(みっちゃくけつごう、英: tight junction)あるいはタイト結合、タイトジャンクションとは、隣り合う上皮細胞をつなぎ、さまざまな分子が細胞間を通過するのを防ぐ、細胞間結合のひとつ。*3

アトピー性皮膚炎においても縁の深いタイト・ジャンクション。皮膚バリア機能を構成する要素のひとつとして知られています。

 

ここで、タイト・ジャンクション研究で知られる月田承一郎氏、古瀬幹夫氏らの論文*4 を紐解いてみます。

まず、月田氏らは、タイト・ジャンクションが物質の漏れを防ぐために重要な役割を果たしていることを指摘しています。

強力な接着分子で細胞間を結合させても、水・イオン・蛋白質などは細胞間を自由に通ることができる。そこで、多細胞生物が存在するためには、この細胞間を通った物質の移動(漏れ)を防ぐための特殊な接着機構が必要となる。それが後述するタイトジャンクション(以下TJ)と呼ばれる接着装置で、ここでは隣り合う細胞の細胞膜の距離がゼロにまで近づいていて、細胞間を通った物質の移動を防いでいる。

しかし一方で、タイト・ジャンクションは、漏れを防ぐだけでなく、物質を移動させる役割も果たしているといいます。

TJがバリアーのために存在するという、先の議論と一見矛盾するようであるが、実際にはTJのバリアー機能は、きわめて tight なものから、かなり leaky なものまで相当の幅があり、一般的にTJは選択的にイオンなどを通しうるバリアーであると言うことができる。すなわちTJはparacellular channelとでも言うべき "穴" を内包すると考えられるのである1)。

このように、タイト・ジャンクションは、タイトなものからリーキーなものまで幅のあるもので、"穴" を内包するものと考察されています。 

 

"リーキーガット症候群" と "腸バリア機能障害"

次に、「腸バリア機能」についての下記総説論文を参考にしつつ、"リーキーガット" が生じるとされる腸上皮のバリア機能についてみていきます。

Groschwitz KR, Hogan SP, Intestinal Barrier Function: Molecular Regulation and Disease Pathogenesis. J Allergy Clin Immunol. 2009 Jul; 124(1): 3–22.

 

まず、月田氏らの指摘と同様に、腸上皮が、有害物質の通過を防ぐ「バリア機能」と、必要物質を通過させる「選択的フィルター機能」をもつことが明らかにされます。

腸上皮は腸管内腔を覆う単細胞層であり、2つの重要な機能をもっている。

第1に、外部抗原、微生物とその毒素などの有害な管腔内の存在が通過するのを防ぐバリアとして機能している。

2つめは、必須食物栄養素、電解液、水が、腸管腔から血液循環へ移動するのを可能とする選択的フィルターとして機能している。

腸上皮は、経上皮または細胞間経路(Transcellular pathway)および細胞間隙経路(Paracellular pathway)の2つの主要なルートを通じた選択的透過性を調節している (Figure 1)。

 

f:id:atopysan:20160910234346j:plain

Figure 1
Pathways of epithelial permeability

 

上の図には、物質の通り道として、細胞間経路(Transcellular pathway)とともに、タイト・ジャンクションを含む細胞間隙経路(Paracellular pathway)が示されています。つまり、腸上皮細胞は、タイト・ジャンクションを含めて、いわば "穴" を内包する通り道をもつことがわかります。

 

この時点で、"リーキーガット(漏れやすい腸管)" の何が問題なのかについて、整理してみます。

腸上皮は、選択的フィルター機能により、必要な物質は通過させるので、そもそも穴が開いているようなものです。しかし、バリア機能により、有害物質は通過できないようになっています。

そうすると、おそらく "リーキーガット症候群" とは、漏れやすい腸管というよりも、この有害物質を防ぐバリア機能の障害を主な問題として捉えているものと思われます。

そうだとすれば、「腸バリア機能障害(腸透過性の亢進)」が存在することは周知なので、"リーキーガット症候群" が現実的な話として聞こえてくるわけです。

 

例えば、先の論文は、腸バリア機能障害が、さまざまな自己免疫疾患や炎症性疾患に影響を与える可能性を指摘しています。

In vitro および in vivo での動物試験では、腸透過性が、外因性因子、上皮アポトーシス、サイトカイン、免疫細胞などの多数の因子により制御されていることが示された(Figure 4)。

免疫によって誘発される腸バリア機能障害は、炎症性腸疾患、食物アレルギー、セリアック病、糖尿病など、多くの自己免疫および炎症性疾患の悪化や素因として重要であると考えられている。

 

f:id:atopysan:20160910234402j:plain

Figure 4
Immune regulation of intestinal barrier function

 

"リーキーガット症候群" を腸バリア機能障害として読み替えると、かなり違和感が減ってきます。

しかし、それならなぜ "リーキーガット症候群" という言葉を使用する必要があるのかがよくわかりません。初めから、「腸バリア機能障害」または「腸透過性の亢進」と言えばよいと思うのですが、何か理由があるのでしょうか。

 

リーキーガット症候群とは

国内の "リーキーガット症候群" に関する情報を調べると、大抵は海外文献やウェブサイトを翻訳したものでした。そこで、海外文献もチェックしてみました。

その中で、比較的わかりやすい "リーキーガット症候群" についてのレビューがありました。

Kiefer D, Ali-Akbarian L, A brief evidence-based review of two gastrointestinal illnesses: irritable bowel  and leaky gut syndromes. Integrative Medicine, Vol.3, No.3, June/July 2004.

以下、一部引用します。

リーキーガット症候群とは、クローン病、セリアック病、慢性疲労症候群、線維筋痛などさまざまな疾患と関連し、おそらく病因因子であると考えられている腸透過性の亢進の現象である。腸透過性とは、腸上皮層細胞間を物質が通過する能力をいう。受動的にバリアを通過できる化合物のサイズおよび特性が、いかにバリア(特に上皮細胞間のタイトジャンクション)がよく機能しているかを示すものと考えられている。

ここでは、リーキーガット症候群が「腸透過性の亢進」現象であるとはっきり記されています。これでひとつ腑に落ちました。腸バリア機能の問題と認識してよいようです。

続いて、レビューの結果としては、次のようにまとめられています。

腸透過性が亢進した状態であるリーキーガット症候群は、ある物質への曝露またはある疾患状態のケースにおいては、文書で十分に裏付けられた現象である。透過性の研究や、主としてクローン病およびセリアック病における腸透過性を正常化するための治療については、いくつかのエビデンスがある。腸透過性だけでなく臨床症状を向上させるための様々な治療の臨床効果を示すだけでなく、病態生理学、腸透過性の亢進と他の疾患状態との間の因果関係を明らかにするためにさらなる研究が必要である。

リーキーガット症候群が、主にクローン病やセリアック病と関連するらしいことがわかります。エビデンスも、あるケースに限っては、裏付けられるということです。

つまり、レビュー時点における研究成果をみる限りは、どんな物質でもリーキーガット症候群の原因となるわけではないし、リーキーガット症候群がどんな疾患とも関連するわけではないことに釘を刺しているわけです。

 

敵はグルテン?

さらに調べてみると、"リーキーガット症候群" とグルテンとの関係が浮かび上がってきました。

というのは、前述の通り、自己免疫疾患のセリアック病が "リーキーガット" と関連するとされるのですが、そのセリアック病がグルテンに対する免疫反応によって生じるからです。

セリアック病はグルテンを含む食品の摂取により引き起こされる一般的な小腸の炎症性疾患である。*5

f:id:atopysan:20160910234419j:plainFrom: Sollid LM, Lundin KEA, Diagnosis and treatment of celiac disease. Mucosal Immunology (2009) 2, 3–7. Figure 1.

上図はセリアック病についての論文からの引用です。小麦由来のグルテンが分解されずに腸上皮細胞間タイトジャンクションを通過し、抗原提示細胞(APC)に提示され、免疫システムが活性化する様子が表現されています。

このような病気の特徴があるので、セリアック病患者のための、グルテンフリーダイエットが必要とされています。

グルテンフリーダイエットはセリアック病の治療の基本であり、適切に診断されたならば、全ての患者に推奨されるべきである。*6

一応指摘しておきますが、この場合の「ダイエット」の意味は、グルテンを含む食品を除去した「規定食」の意味です。痩せるための食事のことではありません。

まとめると、セリアック病の患者は、グルテンにより異常な免疫反応(あるいは腸バリア機能障害、あるいは "リーキーガット")が誘発されるため、グルテンフリーダイエットが必要となる、ということです(なお、ここで引用したセリアック病に関する2つの論文では、"Leaky gut" という言葉は一度も出てきません)。

 

ところが、です。

先に紹介したレビューの内容と相反するのですが、"リーキーガット" という病態は、グルテンやセリアック病のみならず、もっと多くの物質や疾患と関連するという主張があるのです。

例えば、自己免疫疾患の研究で知られるイタリアの Alessio Fasano医師は、次のように発言しています。

グルテンだけではありません。グルテンは消化されれば私たちの友人となりますが、消化されなければ敵となります。しかし、何であろうと他にも有害になりうるものがたくさんあります。例えば、細菌、生物学的製剤、毒素、すべてです。もしあなたがリーキーガットであれば、これらが通り抜け始めます。なぜなら、これらのものが腸管腔の中へ入るのを食い止めるための防御がないからです。それは問題になるかもしれません。*7

有害になり得る物質はグルテンだけではないことが語られます。 

続いて、Fasano医師は、リーキーガットが何を引き起こすかについて、次のように述べています。

その問題がどうなるかは、結局はその人次第です。一度これらの敵が入ると、いわば私たちの町の壁の内側に入ると、それはすべて免疫システムの反応と作用の性質次第となります。もしあなたが、例えば自己免疫疾患の素因をもっているとすれば、自己免疫が進展し、ある種の自己免疫疾患が発症します。セリアック病、糖尿病、多発性硬化症、それはその人次第です。

他の人には別の問題が生じるかもしれません。慢性炎症からガン、神経系疾患、自己免疫などその他もろもろです。したがって、敵を食い止めるための力をもたない腸、リーキーガットは、実際に、一連の極めて重大な、時には生命を脅かす状況をもたらす可能性があるのです。*8

リーキーガットが原因となる疾患は、セリアック病だけでなく、他の自己免疫疾患、慢性炎症、ガンなども含まれるとしています。

 

個人的には、こうした主張をどう捉えるかが、"リーキーガット" をめぐる問題を考えるうえで重要なポイントになるのではないかと思います。

"リーキーガット" の危険性を訴える人たちは、次の2点を主張します。

  1. リーキーガットの原因はグルテンのみではないこと。
  2. リーキーガットが引き起こすのはセリアック病のみではないこと。

この2点により、誰でも、どんな食べ物でも、"リーキーガット症候群" を引き起こす可能性があり、セリアック病だけでなく自己免疫疾患や炎症性疾患など様々な疾患に罹患する可能性があるということになります。

すなわち、セリアック病など一部の限られた人たちだけの問題から、私たち皆に起こり得る問題へと変貌するのです。

そして、インターネット上の情報では、"リーキーガット症候群" の原因や、"リーキーガット症候群" によって引き起こされる疾患などが、一覧としてずらりと並べられることになります。

"リーキーガット" の原因は、グルテンかもしれないし、カフェインかもしれないし、カンジダかもしれない。そして、"リーキーガット症候群" によってアトピー性皮膚炎が発症するかもしれない、といった具合です。

 

アメリカ小児科学会の見解

なかには、自閉症も、グルテンに誘発された "リーキーガット" に原因があるという主張があります *9 。この主張についてはさすがに議論となっているようで、アメリカ小児科学会は次のような見解を示しています。

グルテンとカゼイン、自閉症との間で示唆されている関係は、1970年代に提唱されました。その理論は-未だ証明されていないものですが-自閉症をもつ子供は、グルテンやカゼインに含まれる、オピオイド様ペプチド(タンパク質に似たアミノ酸)の生成の原因となる食品タンパク質を、分解することができないというものです。

自閉症をもつ子供は "リーキーガット症候群" であるとも信じられています。この症候群のために、これらのペプチドは腸管から漏れ出て、腸管膜を通過し、血流に入り、脳へ到達して、私たちが自閉症スペクトラム障害として認識している神経行動症状を引き起こし得るとされ、子供の食事からグルテンとカゼインを含む食品を除去することで(グルテンフリーおよびカゼインフリー  [GFCF] 食として知られる)、自閉症の症状を軽減することができると信じられていました。

一部の両親らは、GFCF食が子供の症状を軽減させたといいます。しかしながら、研究ではGFCF食および "リーキーガット" 理論についてはほとんど支持が得られていません*10

この記事を読む限り、アメリカ小児科学会は "リーキーガット" 理論について懐疑的な立場である印象を受けます。

 

余談ですが、アメリカ小児科学会に関連して、ひとつ確認しておきたい情報がありました。それは、アメリカ小児科学会が、"リーキーガット症候群" を、アトピー性皮膚炎の主要な要因のひとつに挙げているという情報です。国内の複数のウェブサイトで目にしたものです。

しかしながら、当サイトが調べた限りでは1次ソースを確認できませんでした。

 

NHS Choices による解説

"リーキーガット症候群" について調べ始めると、きりがありません。さまざまな情報が錯綜するなか、結局のところ、私のようなアトピー性皮膚炎患者はどのように振る舞うべきなのでしょうか。

この点、急ぎ見てきた情報のなかでは、イギリス国民保健サービス(NHS)による解説が落としどころとしては妥当ではないかと思われます。一般向けに "リーキーガット症候群" を解説した文章がウェブサイトに掲載されています。

以下、NHSによる解説を一部翻訳引用します。

イントロダクション

"リーキーガット症候群" は、慢性疲労症候群や多発性硬化症を含む慢性疾患の広範な原因として、一部の医療関係者らの主張により提案されている疾患である。

"リーキーガット症候群" の提案者らは、多くの症状や疾患が、穴だらけの("漏れやすい")腸を通して血流内に吸収された細菌、毒素または他の物質に対し、免疫システムが反応することにより引き起こされると主張している。

ある疾患や薬物が、"漏れやすい" 腸(科学者が腸透過性の亢進と呼んでいるもの)の原因となり得るのは事実であるけれども、今のところ、穴だらけの腸が、重大で広範な問題の直接的な原因であるという理論を支持するエビデンスはほとんどない

栄養補助サプリメントやハーブ療法のように、多くの疾患に対して有益な効果をもつといわれており、腸からの "漏出" を減らすのに役立つと一部の人々が主張する "治療" についてのエビデンスもほとんどない

一言でいうと、エビデンスはほとんどない、ということです。

代替療法についても、エビデンスはほとんどないとして釘を刺しています。

 

"漏れやすい" 腸は何を引き起こすか?

腸の中は粘膜関門(消化管内と体の残りの部分の間にあるバリア)を構成する単細胞層に覆われている。このバリアは栄養吸収のために有効であるが、大きな分子や細菌が腸内から血流内へ入るのを防ぎ、広汎な症状の発生を防いでいる可能性がある。状況次第では、このバリアの有効性が低下して"漏れやすく"なる可能性がある。しかし、このこと自体は、一般的に重大な問題を引き起こすのに十分であるとは考えられていない

たとえ漏れやすくても、多くの場合、重大な問題とはならないようです。 

 

アルコールとある種の鎮痛剤

アルコール、アスピリンやイブプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腸内層のよく知られた刺激物である。これらは細胞間の密着に損害を与える可能性があり、多少の物質が隙間を通って血流に入ることを許すことになる。

胃腸科専門医(消化管疾患の専門医)は、これらの刺激物が、通常、腸の特別な場所における軽度炎症のほかには何も引き起こさないことに大抵同意する。

通常は明らかな症状を引き起こさないだろうし、薬の服用またはアルコールの摂取を中止すれば徐々に改善するであろう。どんなに悪くても、炎症は時に腸内層の潰瘍の原因となる程度のものであろう。

アルコールやNSAIDsには多少の問題があるようですが、中止すれば改善するとのこと。

 

"リーキーガット症候群" の理論

"リーキーガット症候群" の提唱者は ーほとんどが補完代替医療の栄養士や開業医ー 腸内における酵母や細菌の異常増殖、質の悪い食事や抗生物質の過剰服用などのさまざまな要因の結果として、腸内層が刺激され"漏れやすく"なり得ると信じている。

彼らは、未消化の食物片、バクテリア毒素や細菌が、"漏れやすい" 腸管壁を通過し血流に入り、免疫システムを反応させ、体中で持続性炎症を引き起こすと信じている。

次のような幅広い健康障害につながるとのことである。

食物アレルギー
片頭痛
疲労や慢性疲労症候群
喘息
エリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症
強皮症や湿疹などの皮膚疾患
自閉症

しかし、今のところ、実際にこれらの疾患がリーキーガットが原因であることを示唆するエビデンスはほとんどない

"リーキーガット" による健康障害の一覧を見ると、原因不明であったり完治に至る治療方法が確立していないような慢性疾患が多いです。

 

宣伝される商品

多くの異なる "治療" が "リーキーガット症候群" の考え方を宣伝する人々によって提案されてきた。ダイエット本、栄養サプリメント(例えばプロバイオティクスを含む)、ハーブ療法、グルテンフリー食品、低FODMAP、低砂糖、抗真菌食のような特別な食事などである。

しかし、"リーキーガット症候群" を "治す" ことができると主張する人々によって提案された治療については用心深くなるべきである。なぜなら、役に立つと主張されたそれらの治療が多くの疾患に対して有益であることを示唆する科学的エビデンスはほとんどないからである。

さらに、一部の人々が、相反するエビデンスや、自閉症の主症状を治療するために特別な食事をとるべきではないとする国立医療技術評価機構(NICE)の推奨にもかかわらず、自閉症のためのさまざまな栄養 "治療" を宣伝している。

"リーキーガット症候群" のための一部の食事の変更(低FODMAP食など)は、過敏性腸症候群(IBS)の人には役に立つかもしれないが、それは "漏れやすい" 腸管の存在とは関係ないとみられる。一般的に、それが厳密に必要な場合や(例えばセリアック病)、医療専門家のアドバイスに基づくものでない限り、食事から食品を除去することは良い考えではない。栄養失調になりかねないからである。

ガンやアトピーでも同様ですが、"リーキーガット症候群" に効くと謳って様々な商品を宣伝する人々がいることがやはり問題なのでしょう。NHSはそうした主張に対して慎重になるようにアドバイスしています。

 

"リーキーガット" とアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎との関係でいうと、"リーキーガット症候群" とアトピー性皮膚炎の関係を示唆する研究がまったくないわけではありません *11 *12

しかし、エビデンスの集積は不十分であり、現時点では、明白にアトピーと"リーキーガット症候群" が関係するとは言えないと思います。

 

ある腸バリア機能に関する論文は、アトピー性皮膚炎と腸の透過性の関係について、次のように述べています。

アトピー性皮膚炎は食餌性抗原との関与が示唆されており、多くの患者が食事と疾患の炎症とは関連があると話している。しかし、患者群における異常な透過性についての説得力あるエビデンスは見つけ難い。

多くの研究は相対的に少数の患者で試験を行っており、透過性の変化についてのエビデンスは見つからなかった。一方で、他のいくつかの研究は患者サブグループにおける異常を発見している。

少なくともこれらの患者の一部では、プロバイオティクス治療によって症状が軽減され、また、プロバイオティクスが皮膚疾患を減少させただけでなく、わずかに上昇した腸透過性を減少させた研究が1つある。

この研究からは、腸透過性がアトピー性皮膚炎の原因であるか、あるいは、炎症の部位と関連するかは、不明である。入手可能なデータからは、アトピー性皮膚炎が、提案されている疾患の実例と一致するかどうかを結論づけることは難しい。*13

この論文が述べているように、アトピー性皮膚炎と腸バリア機能障害(腸透過性の亢進)との関係を示す十分なエビデンスは未だ存在しないというのが、現時点における妥当な見解ではないかと思います。

 

以上、"リーキーガット症候群" について、取り急ぎ調べてみました。

"リーキーガット症候群" はグルテンフリーダイエットと不可分に結びついています。もしかしたら、腸バリア機能障害ではなく "リーキーガット症候群" という言葉がしばしば使われる理由は、その方がグルテンフリーを広めたい人々にとっては好都合だからかもしれません。

"腸に穴が開いている" といっていたずらに不安をあおり、何かしらの商品を売りつけようとする業者の宣伝には、注意を払うべきでしょう。

"リーキーガット症候群" に関しては、本当に "リーキーガット" であるか否かを慎重に判断するのはもちろんのこと、効果の裏付けのない商品の宣伝に惑わされないことが肝要かと思います。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:消化管の穿孔: 消化管の緊急事態: メルクマニュアル 家庭版

*2:藤田紘一郎, アレルギー病はなぜ増えたかーきれい好きの功罪検証ー, 日農医誌, 63巻6号, 910-913, 2015. 3.

*3:「密着結合」(2015年4月9日 (木) 15:31 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%86%E7%9D%80%E7%B5%90%E5%90%88

*4:月田 承一郎, 古瀬 幹夫, タイトジャンクションを構成する4回膜貫通型タンパク質オクルディンとクローディンの発見: Paracellular Pathway の新しい生理学へ向けて. 生化学, 72(3), 155-162, 2000-03-25.

*5:Schuppan D, Zimmer KP, The Diagnosis and Treatment of Celiac Disease. Dtsch Arztebl Int. 2013 Dec; 110(49): 835–846.

*6:Sollid LM, Lundin KEA, Diagnosis and treatment of celiac disease. Mucosal Immunology (2009) 2, 3–7.

*7:A Cure for Celiac Disease and Other Autoimmune Disorders? Interview with Dr. Alessio Fasano | Stuffed Pepper ™

*8:A Cure for Celiac Disease and Other Autoimmune Disorders? Interview with Dr. Alessio Fasano | Stuffed Pepper ™

*9:Coury DL et al. Gastrointestinal Conditions in Children With Autism Spectrum Disorder: Developing a Research Agenda. PEDIATRICS Volume 130, Supplement 2, November 2012.

*10:Gluten-Free/Casein-Free Diets - HealthyChildren.org

*11:Jackson PG, et al. Intestinal permeability in patients with eczema and food allergy. Lancet. 1981;1:1285-1286.

*12:Strobel S et al. Cellobiose/mannitol sugar permeability test complements biopsy histopathology in clinical investigation of the jejunum. Gut, 1984, 25, 1241-1246.

*13:Arrieta MC et al. Alterations in intestinal permeability. Gut. 2006 Oct; 55(10): 1512–1520.