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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

“砂糖はアトピーの悪化要因ではない”

In conclusion, we have demonstrated that sugar is not an aggravating factor in AD, contrary to the view of many AD patients. Sugar should not be avoided by AD patients.

結論として、多くのアトピー性皮膚炎患者の考え方に反するものだが、砂糖がアトピー性皮膚炎の増悪因子ではないことを我々は示した。砂糖はアトピー性皮膚炎患者から避けられるべきではない。*1

 

今回は、砂糖の話です。

アトピー患者の間で、まことしやかに語られている悪化要因のひとつが、砂糖です。

油、肉、ファストフードなど、ある種の食べ物を食べるとアトピーが悪化するという噂があります。

砂糖も、食べると悪化するという噂があります。砂糖がアトピーを悪化させるので、砂糖が入っている甘い食べ物も食べてはいけないといわれています。

「アトピーは食事が原因だ」「アトピーの人は甘いものを食べてるから治らないんだ」などという声をよく聞きます。明白な根拠があるわけではなく、何となくそのような考え方が定着しているのです。

 

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先に私の立場を明らかにしておくと、食事はアトピーにいくらかの小さな影響を与えるかもしれないけれども、アトピーの原因であるということはないし(増悪因子の可能性は否定しません)、劇的な症状悪化を招くこともないと考えます。

糖質制限とか、油を摂らないとか、全くもって理解できません。ヒトには糖質も油も必要だからです。過剰摂取が問題なのであって、摂取しないことも問題だと思います。

また、ファストフードや添加物の摂取はなるべく避けていますが、それはカロリー過剰や発がん性リスク等を回避するためであって、アトピーとは別の問題です。

 

砂糖でアトピーが悪化する?

私は、砂糖が入っている甘いものを食べて、自覚的には、皮疹が悪化したり、かゆみが出たことはありません。

したがって、砂糖でアトピーが悪化するという主張は全く信じられません。なぜ、少なくないアトピー患者が、砂糖による悪化を気にしているのか、私はとても不思議に思います。

 

私の場合、食べ物で症状が悪化するときには、明らかに何らかのサインが出ます。

例えば、甲殻類や新鮮でない刺身、南国系フルーツなどを食べた直後に、口内が痺れたり、膨疹が出たり、下痢をすることがあります。これは単純に食物アレルギーであって、いわゆるアトピーとは関係ありません。

また、どんな食べ物でも量を食べ過ぎると、しばらくして湿疹やニキビのようなものができることがあります。

いずれにしても一過性の症状であり、慢性疾患のアトピー性皮膚炎に影響を与えるものではありません。

 

さて、こうした私の実感を裏付けてくれるような、ドイツからのレポートがあります。「砂糖はアトピー性皮膚炎の増悪因子ではない」と題するもので、冒頭の引用は同レポートからのものです。以下、レポートの一部を紹介します。

レポートは、ドイツのアトピー性皮膚炎患者が、自身の湿疹の悪化をしばしば食べ物のせいにしていることを指摘しています。そうした状況のなかで、患者の間で砂糖除去食が取り入れられていることについて問題視しています。

最近、ドイツのアトピー性皮膚炎患者の間で砂糖(スクロース)を避けることが非常に人気となっている。メディアによって広められ、一部の医師からも推奨されている。

ドイツでも砂糖で悪化すると考えるアトピー患者がいるようです。一部の医師さえもが砂糖除去を勧めているところは日本と同様です。

 

著者らは、砂糖除去食がアトピー性皮膚炎に対して有効かどうかを調べるため、試験を行いました。

あらかじめ砂糖除去食を継続摂取してもらった患者30人を、砂糖(スクロース: 蔗糖)入りの食事を投与する群とプラセボ群に分け、パラメーターとしてSCORADとECP(好酸球カチオン性タンパク質)レベルを測定するプラセボ対照二重盲検試験です。

その結果、砂糖入りの食事投与群においては、プラセボ群と比較して、パラメーターに有意差はみられなかったとのことです。

つまり、砂糖を食べていようが食べていまいが、症状にほとんど違いはなかったということです。

 

下の図はSCORADの変化を示しています。砂糖投与群(verum)が左です。プラセボ群と比較して統計学的有意差なしとの判定です。

 

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そして、著者らは次のように結論づけています。

これらの結果から、我々は、砂糖はアトピー性皮膚炎の増悪因子ではないと結論づけた。これは、多くの患者の考え方に反する。そして、患者指導における根拠に基づく医療の重要性を明確に示すものである。

要するに、砂糖を除去することは、EBM(evidence-based medicine: 根拠に基づく医療)とはいえないということを訴えています。

 

イーストコネクション?

もうひとつ、砂糖に関連して、アトピー患者の間でまことしやかに語られているのがイーストコネクションです。

これは、カンジダが砂糖を好むので、砂糖を食べると腸内のカンジダが増えて、アトピーを悪化させるというものです。

この話も、根拠のないままに何となく定着してしまっていますが、当然ながら、EBMとはいえないとする指摘があります。 

1980年代にヒト腸管内Candidaと疾患との関わりについて、当時十分な科学的証拠がなかったにも関わらず、イーストコネクションとして腸管内酵母と健康との関連性が注目された際、冒険的な臨床家が「過剰な糖質の摂取がCandida菌数を増加させ、多彩な疾患の原因となり得る」と主張した経緯があることを記しておく。*2

この指摘から浮き彫りとなるのは、イーストコネクションというものが、数十年前、科学的根拠がないにもかかわらず主張され、いまだに尾を引いている現状があるということです。

 

ことアトピーに関しては、ストレス、花粉、食事、腸内環境など、目に見えないものが原因として主張されることが多いので、反論することも容易ではありません。

その真偽はともかくとして、問題なのは、原因が目に見えないことをよいことに、アトピー患者の不安を煽り、商品を売りつけようとする輩が後を絶たないことです。「これを食べたらアトピーが良くなる」「これを飲めば腸内環境が改善してアトピーが良くなる」といった類です。

 

白砂糖は危険?

商品を売りたいがための主張と感じられるのが、白砂糖(上白糖)悪玉説です。

白砂糖は精製しているから危険だとか、ミネラルが少ないとか、なかにはビタミンB群を過剰に消費するという主張まであります。

そして、白砂糖の摂取はアトピーの悪化につながるので、砂糖を除去すべきとアドバイスされます。あるいは、白砂糖以外の砂糖を食べるべきと宣伝され、併せて黒砂糖や三温糖、羅漢果、オリゴ糖といった商品が紹介されるのです。

 

こうした白砂糖への評価は、私の目には不当に映ります。

農畜産業振興機構によれば、白砂糖は漂白されたものではありませんし、白砂糖と三温糖のミネラル量の違いは微量ですし、炭水化物の中で砂糖だけがビタミンB1を消費するわけではありません。

 

さらに困ったことには、最近、白砂糖がアトピーを悪化させるもっともらしい説として、糖質摂取によりコルチゾールが不足するというものが出てきました。

白砂糖はビタミンやミネラルなどを一切含んでいない、人工的に作られたカロリーのかたまりです。

これを摂取すると急速に血液中に吸収されるため、すぐに血糖値が上がってしまい、それを下げるためにインスリンが大量に分泌されます。すると今度は低血糖になるため、さらに血糖値が下がり過ぎないように、さまざまなホルモンが分泌されます。

その中の一つに、アレルギーを防止する「コルチゾール(コルチコイド)」があります。白砂糖の摂取によって、コルチゾールが一度に多量に分泌されると、体内のコルチゾールが足りなくなってしまいます。その結果かゆみが増して、アトピーの症状も悪化してしまうんです。*3

この文章の主張は冷静に捉えるべきですが、まとめると、

「砂糖摂取 → 血糖値↑ → インスリン↑ → 血糖値↓ → コルチゾール↑ → コルチゾール↓ 」

という流れです。

常識的に考えて、白砂糖を摂取するだけでこのような変化が起こるとは到底信じられません。血糖値もコルチゾール値も低下するというのです。

 

ここで、砂糖(蔗糖)の摂取により、血糖値がどれだけ変化するのかを調べた研究があります(→砂糖摂取と糖尿病の関係|農畜産業振興機構)。

研究では、若年男性と中高年男性に早朝空腹時に50gの蔗糖またはブドウ糖の溶液を投与し、血糖値やインスリンの変化をみています。コントロール群には同量の水を与えています。

結果、砂糖(蔗糖)投与により血糖値は上昇したものの、120分後にはほぼ元のレベルに戻りました。低血糖へ傾くという現象は起きていません。

 

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また、下図のインスリンの変化をみると、砂糖(蔗糖)投与から120分後には、血中インスリン濃度も元のレベルに戻っています。インスリン分泌により血糖値の上昇が抑えられていることが確認できます。

 

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上記のように、通常、血糖値やインスリン濃度は体内でコントロールされています。コルチゾールも、HPA系のフィードバック機構により、通常は分泌量がコントロールされています。

したがって、仮に白砂糖摂取によりコルチゾール値が低下することがあるとしても、通常の摂取によって、皮疹を悪化させるほどのコルチゾール値低下が起きるとは考えにくいのではないでしょうか。

 

なお、砂糖の摂取、甘いものを食べることがストレス解消となって、その結果としてコルチゾール値が低下することはあるようです*4 。つまり、ストレス応答のためのコルチゾールをより多量に分泌する必要がないということであって、副腎機能抑制によるコルチゾール不足などとは別の問題です。

 

まとめ

以上、本稿において次の点を指摘してきました。

  • 砂糖(蔗糖)はアトピー性皮膚炎の増悪因子ではないという根拠があること。
  • イーストコネクションは根拠薄弱であること。
  • 白砂糖(上白糖)がアトピー性皮膚炎を悪化させるとする諸説は根拠薄弱であること。

 

砂糖がアトピーを悪化させるというのは、噂話の域を出ていません。

にもかかわらず、砂糖を除去しようと考えるのは、アトピー患者のリテラシーが乏しいというよりも、治らない病気を治したい一心で何でも試そうとする心理によるところが大きいのだと思います。

 

さはあれ、常識的には、食事の問題はすなわちバランスの問題であると思います。その点で、次の砂糖擁護派の意見に私は同意します。

世界保健機構(World Health Organization, WHO)および国連食糧農業機関(Food Agriculture Organization、FAO)による砂糖の健康への影響を調べた結果が1997年4月に報告されており、糖尿病、肥満などのいわゆる成人病と砂糖の消費には因果関係がないことが疫学的に証明されていると知り、甘い菓子類に目のない著者としては、ひとまず安心した次第である。少し冷静になって考えれば、世の中に出回るいずれの食物も弊害があるとすれば摂取法が問題なのであり、適量を食している限り食物それ自体が有害・有毒などとは科学者でなくとも容易に気が付く*5

結局のところ、砂糖も食べ過ぎれば問題が生じてくるのでしょう。

 

習慣化すると問題だと思いますが、ときにはスイーツを食べてストレスを解消することも、良い影響を与えるかもしれません。

個人的には、嘘か真かわからない砂糖の影響に捉われるより、薬の副作用など影響力のより大きな因子を気にした方が現実的かと思います。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:Ehlers I et al. Sugar is Not an Aggravating Factor in Atopic Dermatitis. Acta Derm Venereol 2001; 81: 282–284.

*2:安部茂ほか, 腸管内酵母としてのカンジダと健康保持:生物進化的考察, Medical Mycology Research, Vol. 4 No. 1: 11-23, 2013.

*3:砂糖断ちした筆者が語る!砂糖がアトピーに悪い理由 | NICOLY:)[ニコリー]

*4:Laugero D et al.Excessive Sugar Consumption May Be a Difficult Habit to Break: A View From the Brain and Body. J Clin Endocrinol Metab, June 2015, 100(6):2239 –2247.

*5:“クスリ”としての砂糖|農畜産業振興機構