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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

アミロイド苔癬

どうしても治らない丘疹

私にとって、アトピーにかかわる、どうしても治らないもののひとつがアミロイド苔癬です。

脱保湿を開始した頃、すねをボリボリ掻いていたらボコボコした硬い丘疹の集まりができてしまいました。かれこれ4年以上治りません。

アミロイド苔癬の丘疹自体にそれほどかゆみはありません。すねが乾燥してかゆくなり、掻くところにアミロイド苔癬もあるので、一緒に掻いてしまい悪化させてしまうという感じです。言うなれば、すねの皮脂欠乏性湿疹に伴う副産物のようなものです。

私の場合、アミロイド苔癬は広範囲に現れていませんが、2cm四方くらいの苔癬部位がいくつか散在しており、年々面積が広がっています。

なお、生検はしていないので確定診断はなされていないのですが、複数の皮膚科医から視診でアミロイド苔癬と診断されました。

 

無治療であったとしても、痒疹は時間が経てば治ります。苔癬化も、ケースによっては難治ですが、無治療で治ります。

しかし、アミロイド苔癬は治りません。

この点について、専門家はどうみているのでしょうか。

脱ステ医の佐藤健二医師は、アミロイド苔癬を脱ステロイド中に患者を不安にする状態のひとつに位置付けています。そのうえで、

治るには相当長期間その部分を掻破しないことが必要である。基本的な単位は年である。根本的対策は明らかになっていない。 *1

年単位で経過をみなければならないほど難治性ということです。

また、皮膚アミロイドーシスについて、イギリスの患者説明用リーフレットには次のように書かれています。

Unfortunately, amyloidosis cannot be cured, and all currently known treatments aim to control the symptoms.

残念ながら、アミロイドーシスは治らない。いまわかっていることのすべては、症状をコントロールすることが治療の目的だということである。*2

こちらは、明白に、治らないと書いてあります。やはり治らないのでしょうか。

 

ところが、最近、ある治療を行うことでアミロイド苔癬が消えるという報告が発表されました。全国のアミロイド苔癬に悩む人達にとって朗報ではないでしょうか。

その報告をみていく前に、アミロイド苔癬についての基本的知識を押さえておきたいと思います。

 

アミロイド苔癬とは

分類

アミロイド苔癬は、アミロイドーシスのひとつです。

アミロイドーシスとは、アミロイドと呼ばれる線維状の異常蛋白質が沈着して臓器の機能障害を引き起こす病気の総称です。*3

 

アミロイドーシスはこれまでに31種類が報告されており、全身にアミロイドが沈着する「全身性」と、特定の臓器にのみアミロイドが沈着する「限局性」とに分類されます。

アミロイド苔癬(lichen amyloidosis)は、限局性であり、皮膚アミロイドーシス(cutaneous amyloidosis)のひとつに分類されます。皮膚アミロイドーシスは、原発性限局性皮膚アミロイドーシス(Primary localized cutaneous amyloidosis: PLCA)とも呼ばれます。

  • 全身性アミロイドーシス
     ALアミロイドーシス
     AAアミロイドーシス
     家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)
     老人性全身性アミロイドーシス (SSA)
     透析アミロイドーシスなど
  • 限局性アミロイドーシス
     脳アミロイドーシス(アルツハイマー病ほか)
     脳アミロイドアンギオパチー
     皮膚アミロイドーシス(アミロイド苔癬、結節性アミロイドーシス、斑状アミロイドーシス)など
特徴

上背部や下腿伸側に好発する毛包に一致しない硬い角化性丘疹であり、表皮角化細胞(ケラチノサイト)のケラチンに由来する異常たんぱく質のアミロイドが真皮乳頭層に沈着したものとする説が有力です。皮膚生検により確定診断します。

アミロイドが沈着する原因は、慢性的な掻破や摩擦による可能性が考えられます。また、アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚疾患に併発することが知られています。

治療としては、ステロイドのODT外用が有効だとされています。他には、トレチノイン軟膏、ビタミンDクリーム、ジメチルスルホキシド(DMSO)外用剤、光線療法(ナローバンドUVB, PUVA)、フラクショナルCO₂レーザー等による治療も行われています。

積極的治療として、外科的に皮膚剥離術なども行われますが、多くの場合で再発してしまうようです*4

 

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アミロイド苔癬病変皮膚の真皮乳頭層でみられたメラノファージを伴う大量のアミロイド沈着(コンゴーレッド染色)。表皮の角化亢進もみられる。(出典:Amyloidosis in the Skin

 

アミロイド苔癬が治る?

では、アミロイド苔癬が消失するという報告をみてみましょう。

一連の報告は、杏林大学の塩原哲夫教授によるものです。まず病態として、アミロイド苔癬をはじめ、類似する扁平苔癬などの疾患では、発汗障害によって炎症反応がみられるとのことです。

扁平苔癬(LP)は様々なアレルゲンや薬剤により生ずる一種のアレルギー性疾患と考えられているが,病変部皮膚の発汗反応を調べてみると著明な発汗障害がみられる.(中略)

驚いたことに,LP病変部周囲の一見健常部においても発汗障害がみられ,その部分の表皮には汗の漏れが観察された.この漏れがまわりの表皮にケモカインを発現させることにより,T細胞を局所の表皮に呼び集めることで,苔癬型組織反応を生じLPが発症することが分かった.このような汗の漏れからはじまる炎症反応は,LP類似の組織反応を呈する他疾患(アミロイド苔癬,シャンバーグ病)でもみられる.*5

 

こうした報告について大阪大学の片山一郎教授がコメントを寄せているのですが、それによれば、アミロイド苔癬は汗管を初発部位とするもので、また、ヘパリン類似物質含有クリームのODT外用を2週間続けるとアミロイドが消失するとのことです。

特に痒疹、扁平苔癬、アミロイド苔癬が汗管を初発部位とし、Dermocidinなどの汗に特異的な抗菌ペプチドが皮膚に漏れでることで発汗の低下や汗管周囲性の炎症反応が生じること、ヘパリン類似物質含有クリームのODTで発汗と皮膚症状の改善が見られること、2週間の外用でアミロイドが消失(炎症反応と貪食像が見られる)するというびっくりするようなデータを提示された。私も以前からトコレチナート軟膏をアミロイド苔癬に、また活性型ビタミンD3軟膏を痒疹に使用して良い成績を得ているがさすがにアミロイドの消失は見られなかった。ただ炎症反応に伴い改善が見られるとの事で前治療のステロイドの中止の影響などの検討も必要と考える。*6

ヘパリン類似物質含有クリームとは、言わずと知れたヒルドイドクリームなどのことです。市販では「HPクリーム」や「アットノン」などがあります。

容易に安価で入手可能なこのクリームで本当に治せるというのなら、試す価値はあるかもしれません。

 

実は、私自身、この情報を目にしてすぐ、自分のアミロイド苔癬にアットノンを毎日1か月間塗り続けたことがあります。ただ、ODT外用という情報を見落としており、単純塗布の方法によりました。

結果は、丘疹が少し柔らかく薄くなったものの、皮膚の深いところでは芯が残っている感じで、消失まではしませんでした。塗布を止めた今ではすっかり元通りです。

ODTによれば結果は異なったかもしれないので、いつかまた試してみたいと思います。

 

なお、トコレチナート軟膏とはトコレチナート(トレチノイントコフェリル)を有効成分とする軟膏であり、主に褥瘡治療などに用いられるオルセノン軟膏(販売名)があります。

また、似た名前の軟膏に、ビタミンAの誘導体であるトレチノインを有効成分とするトレチノイン軟膏があります。こちらは主にハイドロキノンと併用することで、シミなど色素沈着の治療に用いられるものです。

 

アミロイド苔癬と汗

ここまで、発汗障害による汗の漏出が苔癬型組織反応を生じさせ、アミロイド苔癬の病因となるという仮説をみてきました。したがって、治療としては、発汗が亢進するとされるヘパリン類似物質含有クリームのODT外用が有効と考えられるとのことでした。

発汗障害はアトピー性皮膚炎の悪化因子として重要です。アトピー性皮膚炎患者にアミロイド苔癬が生じることも、発汗障害によって説明することができそうです。

私も発汗障害をもついわゆるアトピー患者です。確かにアミロイドが沈着しているすねは、夏でも汗が出ているのかわからないくらいで、常にガサガサと乾燥しています。

汗が出ないために乾燥してかゆみが生じ、掻破という物理的刺激が加わり、角質層の過角化が起きて、汗管周囲に角層由来のアミロイドが沈着する、という悪循環が起きているのかもしれません。

アミロイドの沈着が汗腺の周囲で観察されたという報告も複数あります*7*8 。アミロイド苔癬と汗との関係について、そして何よりアミロイド沈着を消失させるための治療法について、さらに臨床研究を進めて欲しいと思います。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:佐藤健二 (2015)『〈新版〉患者に学んだ成人型アトピー治療』つげ書房新社. p171.

*2:CUTANEOUS AMYLOIDOSIS, BRITISH ASSOCIATION OF DERMATOLOGISTS PATIENT INFORMATION LEAFLET,  PRODUCED JULY 2015, REVIEW DATE JULY 2018.

*3:アミロイドーシスに関する調査研究班

*4:http://emedicine.medscape.com/article/1102672-treatment

*5:塩原哲夫, S10-1 発汗障害と皮膚アレルギー, 第64回日本アレルギー学会春季臨床大会抄録集より, 2015年5月.

*6:http://www.dermatologyosaka-u.jp/column/katayama/2014_13.html

*7:Ohnishi A, Yamamoto T, Murai Y et al. Denervation of eccrine glands in patients with familial amyloidotic polyneuropathy type I. Neurology 1998; 51: 714–19.

*8:HARKANY T et al. Cutaneous lymphatic amyloid deposits in Hungarian-type familial transthyretin amyloidosis: a case report . British Journal of Dermatology 2002; 146: 674–679.