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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイドの影響は塗布部位を越える

ステロイドの副作用

ステロイドは塗った場所だけに作用する?

ステロイド外用薬への不安を和らげるための、次のような話を聞いたことはないでしょうか。

ステロイド外用薬でみられる副作用は皮膚局所の副作用です。*1

ステロイド外用薬は、内服薬と作用が異なり、外用薬でみられる副作用は皮膚のみで起こる、という話があります。

もう少し詳しい解説を引用します。

ステロイド外用薬の副作用は理論的に2種類に分けて考えることができます。ひとつは薬を塗った場所の皮膚に現れる副作用で、局所的副作用と呼びます。ステロイドを塗ると皮膚の代謝や免疫にいろいろな変化が現れるのですが、そのために生ずる好ましくない現象のことをこのように呼ぶわけです。これはあくまでも「塗った場所の皮膚のみ」に現れる現象であることを強調しておきたいと思います*2

繰り返しますが、ステロイド外用薬の副作用は、塗った場所の皮膚のみに現れるものとされています。

そして、こうした話とともに、皮膚科医からは、ステロイド外用薬は60年にわたり第一線で使用されてきた薬であり、不安に感じる必要はないと主張されるわけです。

 

一方で、ステロイド外用薬を使用したことのある患者のなかには、次のような現象を経験した人がいるかと思います。

「ステロイドを塗った部位を越えて炎症が広がる」という現象です。

 

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あるいは、

「ステロイドを塗った部位から離れた部位の炎症が治まる」という現象です。

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ステロイド外用薬の影響が、塗った皮膚だけにとどまらないのです。少なくとも私の経験では、ステロイド外用薬の治療中に塗布部位を越えて炎症が広がったことがあり、ステロイド点鼻薬の治療中止後に鼻粘膜ではなく皮膚に炎症が広がったことがあります。

この件に関して、医師と一部の患者は意見を異にすると思われます。

 

サルツバーガーによる観察

さて、60余年前の1952年、マリオン B. サルツバーガーによって、ステロイド外用薬が初めて皮膚科領域に導入されました。

実は、このとき、サルツバーガーは、「ステロイドを塗った部位から離れた部位の炎症が治まる」ことを観察しています。

そしてこの事実は、サルツバーガーの1952年の論文にすでに記されています。ヒドロコルチゾン軟膏の有効性を観察するための試験です*3 。

方法は、体の片側にヒドロコルチゾン軟膏を、反対側に基剤のみを、おおよそ同量塗布するというものです。

結果は、アトピー性皮膚炎またはアトピー性皮膚炎と推定される8ケース中6ケースで、ヒドロコルチゾン軟膏が基剤単独よりも大きな改善を示しました。

そして、このとき、ヒドロコルチゾン軟膏を塗っていない部位でも改善がみられたと報告しています。

In case 3 (M. S.) there was not only improvement of the immediately treated areas but also of the areas distant from the actual sites of application. 

ケース3では、治療部位で速やかに改善されただけでなく、塗布した実際の部位から離れた部位でも改善がみられた。

この理由について、サルツバーガーらは、ヒドロコルチゾンを皮内注射した際に注射部位から離れた部位でパッチテスト反応抑制がみられたという報告と関係しているかもしれないと推測しています。

現在でも理由はわかっていないようですが、ステロイド外用薬の影響が局所的反応に限られるものではないらしいことは、60年前から報告されているのです。

”ステロイド外用薬の作用は塗った場所の皮膚のみに現れる” という主張を聞くと、これまでの皮膚科学の成果は何だったのかと残念に思います。

 

サルツバーガーの同論文には、他にも、現在よくみられる臨床的事実が記されています。

それは、ステロイド外用薬の使用中は改善が維持されるけれども、使用を中止すると疾患は再発すること、そして、改善の維持は長く続かないということです。

This improvement was maintained for as long as the compound F was used, the longest time being four weeks. Improvement was judged by decreased pruritus, diminished erythema, reduced scaling and beginning clearing of the dermatosis under treatment.

この改善は、ヒドロコルチゾン軟膏が使用されている間は維持され、最も長くて4週間だった。改善は、掻痒の減少、紅斑の減少、落屑の減少、治療による皮膚病変の解消開始によって判断された。

In our patient M. S., on stopping use of compound F ointment and continuing with only the ointment base without compound F, the dermatosis recurred in all sites. When compound F-containing ointment was again applied, improvement was again noted within a few days.

我々の患者M.S.において、ヒドロコルチゾン軟膏の使用を中止して基剤のみの使用を続けたところ、皮膚疾患はすべての部位で再発した。そこでヒドロコルチゾンを含む軟膏を塗布したところ、数日のうちに再び改善が示された。

これら事実は、60年前からすでに知られていたのです。それならそうと、教えてくれても良さそうなものです。しかし、現在の医師は、そんなことは起きないと言います。この実態を、患者はどのように受け止めれば良いのでしょうか。

*1:ステロイド外用薬への不安を持つ人へのメッセージ | 患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

*2:神奈川県皮膚科医会-皮膚病の話-

*3:Sulzberger MB, Witten VH, The Effect of Topically Applied Compond F in Selected Dermatoses. The Journal of Investigative Dermatology (1952) 19, 101-102.