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白色皮膚描記症

白色皮膚描記症とは

アトピー性皮膚炎の特徴のひとつに「白色皮膚描記症(はくしょくひふびょうきしょう)」があります。皮膚に圧力をかけると、その部分が白くなるというものです。

一般的には、皮膚をこすったりすると充血して赤くなると思われます。ところが、アトピー患者の場合、こすった部分が白くなる場合があります。より正確には、こすると直ちに白くなり、その後しばらく経ってから充血してくる感じです。

一方で、皮膚に圧力をかけて直ちに赤くなる症状は「赤色皮膚描記症」と呼ばれています。

 

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アトピー性湿疹患者27人と健常対照群20人に対する試験では、アトピー性湿疹患者のうち21人に白色皮膚描記症がみられ、対照群のうち18人に赤色皮膚描記症がみられたそうです。*1

白色皮膚描記症は、有名なHanifin & Rajkaのアトピー性皮膚炎診断基準にも小項目のひとつとして挙げられており、アトピー性皮膚炎であると診断する根拠のひとつとして位置付けられています。

 

なぜ白くなるのか

なぜ圧力がかかると、皮膚が白くなるのでしょうか。

これは、血管の収縮による血流量の減少であると考えられています。

レーザードップラー血流計の基礎評価は、健常対照群と比べて患者群において、充血度の有意な減少を示した。 (中略)

我々の結果は、白色皮膚描記症(蒼白のサブタイプを含む)が、おそらく皮膚シャント血管で変化した血流を伴う局所血管収縮の程度により決まるという仮説を支持するものである。*2

また、血流量の減少期間は1分~5分くらいのようです*3 。しばらくすれば、白色描記は消退します。

 

また、白色皮膚描記症は、炎症のある病変部に現れるとされています。全身の皮膚でみられるわけではないようです。

アトピー性皮膚炎患者の皮膚を硬いもので擦過すると、健康人に生ずる紅色皮膚描記症はみられず、逆に血管の収縮による貧血性白線を生ずることが古くから知られている。この白色皮膚描記症は苔癬化局面や乾燥皮膚などの病変部に現れるが、患者の正常皮膚では生じないことが明らかにされている。*4

機械的刺激に対する皮膚細小血管の収縮反応によっておこる。健常人皮膚では,非常に小さい刺激によって収縮をおこすが、アトピー性皮膚炎患者では、健常人が潮紅をおこすような大きな刺激に対しても収縮を来たす。しかし、この現象は、紅皮症患者でもみられ、一般に慢性炎症をおこしている皮膚に認められる*5

 

白色皮膚描記症の経過

ステロイド外用薬の治療によって、白色皮膚描記症が赤色皮膚描記症に変化したという報告があります*6 。これは、ステロイド外用薬のもつ血管収縮作用によるものと思われます。ただし、その変化が永続的なものかどうかはわかりません。

一方で、ステロイド外用薬がむしろ白色皮膚描記症を難治化させているという指摘があります。ステロイド外用薬の副作用である毛細血管拡張などにより、血管異常が助長されている可能性があるといいます。

外用剤離脱後に薄い紅斑と白色皮膚描記症が残ることがあるが、これは治るのに時間がかかる。アトピー性皮膚炎の白色皮膚描記症は、血管あるいは血管運動神経の異常であると考えられている。ステロイドは瀰漫性(広範であること)の紅斑や毛細血管拡張を起こす作用を有しており、もともと異常のあるところに追い討ち的に異常を付け加える。このため難治化アトピー性皮膚炎の白色皮膚描記症は治りにくい。

白色皮膚描記症がアトピー性皮膚炎にしばしば生じることは、アトピー性皮膚炎の病態が表皮だけでなく真皮をも含んだ病態として捉えなければならないことを示している。*7

このように、白色皮膚描記症は、表皮だけでなく真皮の血管も関係する異常であって、治りにくいという評価があります。 

 

白色皮膚描記症と炎症

私も白色皮膚描記症をもつアトピー患者の一人です。

患者としての実感を述べると、白色皮膚描記症は、まさに「血管異常」というべきものです。顔をこすると、しばらく顔面蒼白となります。血の気がサッと引いてしまうのです。血管や血流に異常が起きているとしか考えられません。

顔をこすった直後に顔面蒼白となり、しばらくして血流がもどってくると、赤ら顔がさらに赤くなるという悪循環があります。

 

さて、この白色皮膚描記症は、患者にとっては日常的なものですが、診察で話題になったり、問題視されることが少ないような気がします。それは、白色皮膚描記症は、裏返せば、皮膚に炎症(充血)が起きて赤くなっているからみられる現象であり、炎症が治れば白色皮膚描記症も治るだろうと考えられているからかもしれません。

確かに、炎症が強い場所では、白色皮膚描記症が顕著に現れます。しかし、私の場合、白色皮膚描記症がみられる部位では、見た目に炎症がなくても、この症状が現れるのです。私は、自分がアトピーであることを忘れていた20代前半の寛解期にも、白色皮膚描記症が出ていたことを覚えています。炎症などとは無縁だった皮膚にです。

 

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これはまったくの推測ですが、炎症や充血などとは無関係に、白色皮膚描記症の生じる部位において、何らかの血管異常が不可逆的に生じているからではないかと思います。毛細血管異常といえばステロイドの影響が可能性としては考えられます。もしかしたら、幼少期など過去に受けたステロイド治療が関係しているのかもしれません。

 

白色皮膚描記症それ自体は、辛い症状ではありません。外見が目立つ赤ら顔の方が辛いです。顔をこすって顔面蒼白になった自分を鏡で見ると、かつての顔色を思い出すような、ノスタルジックな気持ちになります。

 

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*1:Hornstein, OP, Heyer, G, Langenstein, B. Studies on dermographometry in atopic eczema. Acta Derm Venereol Suppl (Stockh). 1989;144:146-148.

*2:Hornstein OP1, Boissevain F, Wittmann H. Non-invasive measurement of the vascular dynamics of dermographism--comparative study in atopic and non-atopic subjects. J Dermatol. 1991 Feb;18(2):79-85.

*3:Klemp P, Staberg B.Cutaneous blood flow during white dermographism in patients with atopic dermatitis.J Invest Dermatol. 1982 Oct;79(4):243-5.

*4:濱田稔夫, アトピー性皮膚炎の病態生理と治療. 小児耳 Vol.8, No.1, 1987.

*5:青木敏之, アトピー性皮膚炎の諸検査. 皮膚・第16巻・第3号・1974 294-300.

*6:Wong SS, Edwards C, Marks R. A study of white dermographism in atopic dermatitis. J Dermatol Sci. 1996 Feb;11(2):148-53.

*7:佐藤健二 (2015) 『〈新版〉患者に学んだ成人型アトピー治療』つげ書房新社.