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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイドを使用しないアトピーの経過

脱ステロイド

ステロイドを使わなくても良くなる

アトピー性皮膚炎に関する画期的な報告です。

患者によっては、ステロイド外用薬を使用しなくても、6か月後にアトピーの症状が改善する

というものです。

画期的な報告と書きましたが、ステロイドを使用せずに改善する患者がいることは、多くのアトピー患者が知っている経験的事実であって、さほど目新しい発見ではありません。この事実を知らない皮膚科医もいるかもしれませんが、副作用経験のある患者にとっては常識です。

その ”当たり前のこと” を、皮膚科医のなかでも良識ある方々が、改めて調査してデータとして報告したものです。

 

近日中に論文がPubmed収載の皮膚科雑誌に掲載されるとのことですが、その日本語訳を著者の一人である深谷元継氏のブログで読むことができます。

(※追記:英語版へのリンク DOI https://dx.doi.org/10.2147/CCID.S109946

 

今回の深谷氏らの報告は、2003年の古江氏(九州大学皮膚科教授)らの報告*1 と比較することを念頭に置いています。

古江論文においては、ステロイド外用薬を用いた標準治療を6か月間行った場合のアトピー患者の改善率は、思春期および成人グループで37%でした。率直に言って、標準治療の結果はあまり良いとはいえません。

それでは、ステロイド外用薬を6か月間使用しなかった場合はどうなるのか、深谷氏らはそれを調べるために調査を行ったとのことです。

もし、ステロイド外用薬を使用しなくても一定の改善率があることが示されれば、標準治療ではない「ステロイドを使用しない治療」を選択する正当性が認められることになります。

 

ステロイドを使用しないことの正当性

早速、深谷論文の結果を見てみましょう。ステロイド外用薬を6か月間使用しなかった場合の「改善率」は、思春期および成人グループで80%でした。大変高い改善率です。その他の年齢グループの結果も以下に示します。

  • 乳幼児の改善率    75%
  • 小児の改善率     52%
  • 思春期・成人の改善率 80%

この結果から明らかなように、ステロイドを使用せずに改善する患者が一定の割合で存在することがわかります。さらに、乳幼児の24%が完全寛解したとのことです。

では、もう一方の古江論文の結果を次に示します。

  • 乳幼児の改善率    36%
  • 小児の改善率     40%
  • 思春期・成人の改善率 37%

各論文で患者の属性が異なることから、上記の数値を単純に比較することにあまり意味はありません。ただ、年齢区分や重症度分類、6か月間の追跡期間などの方法は同様なので、ステロイドの使用という因子を評価するためのひとつの参考にはなると思います。

深谷論文の結果を鑑みると、患者はステロイド外用薬を使用しない治療を受ける正当性があるといえます。患者は、この論文のデータを根拠として、皮膚科医にステロイド外用薬を使用しない治療を要求することもできるでしょう。

 

皮膚科医はステロイドなしで診察できるか

一方、皮膚科医にとっては、この結果は都合の悪いものに違いありません。それは、論文の査読者のコメントにも滲み出ています。ある査読者は、「治療のゴールを誤解している」として論文に否定的なコメントを出したようで、それに対しては著者の深谷氏らが次のように反論を試みています。なお、引用文中のTCSはステロイド外用剤のことです。

著者らは、この論文に寄せられた一人の査読者からのコメントに反論したい。そのコメントとは「この論文には治療のゴールに関する誤解がある。強い痒みや掻き破られた皮膚や不眠の管理はどうするのか?たとえステロイド忌避の患者であっても、とくに重症患者の場合には、ただ『経過を観察しながら自然治癒を待つ』という姿勢は倫理に反する。確かに皮膚炎の悪化は時間がたてば治まるだろう。しかしそれを短縮しようとなぜ努めないのか?」というものである。

この意見は、現在、皮膚科医としてもっとも普通なものだろう。もしもTCS長期連用によるステロイド依存というリスクが無ければ、この査読者の意見はまったく正しい。しかし、図1に示したような患者を、TCSを使用せずに「経過を観察しながら自然治癒を待つ」ことは、本当に「非倫理的」なのだろうか?

この赤ちゃんの親はTCS使用を拒否して、その結果、ある医師から診療を断られた。両親は赤ちゃんを虐待(ネグレクト)しているとまで言われた。私たちは、医療ネグレクトは、このような患者の診療を拒否する医師たちによってこそ、犯されているのだと考える。

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この査読者は次のように考えているようです。すなわち、自然治癒には時間がかかるため、治療により病気に苦しむ時間を短縮することが倫理的であり、そのためにはステロイド外用薬が必要である、と。

ステロイド外用薬の副作用についての知識が足りないために、そのような考え方をもつのだと思われます。標準治療に反応を示す患者しか診たことがないのかもしれません。ステロイド外用剤依存に陥る患者が一部存在することを理解できていないのです。

ステロイド外用剤依存をいまだにアトピー性皮膚炎自体の悪化などと決めつける皮膚科医の多さには辟易します。患者が依存に陥っていたら、ステロイドを中止することが必要です。それがステロイドを使用しないことの意義のひとつです。

 

さて、ステロイド外用薬を使用しないことの根拠が示されたいま、皮膚科医から商売道具のステロイドを取り上げたら何が残るのか、という問題が出てきます。

考えられるのは、保湿剤や亜鉛華軟膏等の処方を基本として、必要に応じて抗アレルギー剤、睡眠導入剤、抗生物質等を適宜処方することです。また、生活習慣や抗原検索に対するアドバイスも必要です。他には、皮膚をよく診ること、話をよく聞くこと、そのうえで個別に対策をとることです。相応の診察時間が必要です。

また、ステロイドを使用しない場合は感染症が問題となります。これは深谷論文でも指摘されていますし、私自身も経験があります。黄色ブドウ球菌、真菌、ヘルペスなど、きちんと診断したうえで、抗生物質や抗ウイルス薬等を処方してもらえると、患者としては安心できます。感染症ばかりは、患者の努力が及ばないことが多いからです。ケースによってはイソジン消毒も有用だと思います。

ところが、感染症などの診断をしようとしない、あるいは、能力のない皮膚科医が多いのではないかと推測します。確定診断はおろか、ろくに患部を見ないままステロイドを処方する皮膚科医が現実にいるからです。「おそらく○○でしょう」と言ってとりあえずステロイドを処方するのはもうやめて欲しいです。責任を取るつもりもないのに「おそらく」とは何でしょうか。個人的には、時間とコストをかけても確定診断して欲しいところです。

多くの患者が感じていることと思いますが、皮膚科医のやっていることなら自分でもできる、と考えてしまいます。診察に意義を見出せないので、薬だけ処方してもらう患者が出てくるのです。プロフェッショナルを自任するなら、少しは気概を見せてもらいたいものです。

 

脱ステ後長期に経過した患者は

私は、今回の報告が出たことをうれしく思います。皮膚科医がステロイドを使用したくない患者を受け入れる根拠が示されたからです。

一方で、個人的には、一抹の寂しさを覚えました。というのは、私自身は、ステロイドを6か月間使用しなかった場合に、改善しているとは言い切れないからです。

私はここ数年、冬に悪化して夏に軽快しています。したがって、調査が秋冬に始まれば6か月後は改善するだろうし、調査が春夏に始まれば6か月後は悪化しているだろうことが推測できます。

さらに、私はおそらく、頬部に毛細血管拡張および肘窩膝窩に皮膚萎縮を有する患者です。深谷論文では、コントロール不良になる確率が有意に高いことが示されています。

 

私は、脱ステロイド、脱プロトピック、脱保湿を行いました。今はいわゆる「ステロイド(および保湿剤)忌避患者」です。脱ステ時の経過イメージを図に示すと、次のようになります。

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図のように、脱ステ直後であれば、6か月後に改善することが見込めます。その場合は、治療においてステロイド不使用をはっきりと主張することもできるでしょう。

しかし、脱ステから長期経過後は、悪化と寛解を繰り返しているので、6か月後に悪化するかもしれません。その場合は、皮膚科医にステロイドを使わないことを主張することにはある種の後ろめたさを感じます。6か月後に「それみたことか」とも言われかねません。

年単位での経過を追えば、少しずつ、緩やかに改善しています。しかし、第三者から見れば、大して変わりはないとみられるかもしれません。にもかかわらず、「3年後、5年後を見てください。良くなるはずですからステロイドは必要ありません」と要求する私のような患者は、標準治療医にとって、もしかしたら脱ステ医にとっても、厄介な存在なのかもしれません。

このように、6か月程度では容易に改善しない私が、ステロイドを使わなくても改善率が80%だと聞くと、「ステロイドを使わない治療」すら奏功せず、どんな治療からも置き去りにされているような寂しさを感じるのです。

脱ステには2つの大きなテーマがあると思います。1つは、ステロイド等からどのように離脱するか。もう1つは、ステロイド離脱後に長期にわたり改善しない場合にどう対処するか、です。

前者は、ステロイドを使わないことが奏功するでしょう。一方、後者は、いまだ有効な対策がないように思います。そのため、脱ステ後に標準治療に戻る患者が存在するのです。

 

最後に

今回の深谷論文は大変重要な意義のあるものであり、アトピーに関わる者であれば必ず読むべき報告であると思います。

特に、赤ちゃんにステロイドを処方されたお母さんにとっては、ステロイドを使用するにあたっての有用な情報になるはずです。ただ、この情報にたどり着く前にステロイドを使ってしまうでしょうけれども。

ステロイドを使わないで自然経過をみれば、6か月後には4人に3人の乳幼児が改善する可能性があります。そのうち1人は完全寛解です。そう聞けば、少し様子をみてみようという気持ちになるのではないでしょうか。私はいかなる治療法も推奨しませんが、情報は吟味するべきと伝えたいです。

乳幼児に起きたステロイドによると思われる副作用を見るたびに、胸が痛みます。苦しむのは私たちの世代だけで十分です。ステロイドを一度も使わなければ、副作用に苦しむリスクはゼロなのです。

 

 (当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

*1:Furue M, Terao H, Rikihisa W, Urabe K, Kinukawa N, Nose Y, Koga T. Clinical dose and adverse effects of topical steroids in daily management of atopic dermatitis. Br J Dermatol.