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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

秋生まれは湿疹ができやすい?

アレルギーに関心のある人なら、一度は聞いたことがあるかもしれません。

「秋冬生まれはアレルギーになりやすい」

という話です。

秋や冬の季節に生まれた人は、様々なアレルギー疾患を発症しやすいとされています*1 *2

この点、アトピー性皮膚炎には遺伝的要素があるといわれるので、アトピー患者の方が子供を生むときには、赤ちゃんの生まれる時期について心配になるのではないでしょうか。

 

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先月(2016年3月)、これらの説を裏打ちするような論文が、英サウサンプトン大学の研究者らにより Allergy 誌で発表されました。

その論文によると、春生まれの人に比べて、秋生まれの人は湿疹ができやすいとのことです。その鍵となるのが、DNAのエピジェネティックマークです。エピジェネティックマークが、誕生した季節と関連しており、アレルギー疾患のリスク増加に影響しているというのです。

 

話は逸れますが、最近、医学の分野でエピジェネティクスが注目されるようになっています。論文を確認する前に、前提となるこのエピジェネティクスの知識を簡単におさえておきます。

DNAの塩基配列を変えることなく、遺伝子のはたらきを決めるしくみをエピジェネティクスとよび、その情報の集まりがエピゲノムです。

こんな風にイメージしてください。ゲノムをA,C,G,Tの4種類の音符が並んだ音の羅列だとすると、音に強弱をつけたりテンポを変えたりして曲を奏でるしくみが、エピジェネティクスです。私たちの身体をつくる細胞には、基本的にすべて同じゲノムが入っているのに、いろいろな種類の細胞になれています。これは、同じ音の羅列(DNA の塩基配列)をつかって、ちがう曲(皮膚の細胞や腸の細胞などおよそ200種類の細胞)を奏でるしくみ、つまりエピジェネティクスのおかげなのです。*3

そして、DNAのメチル化などのエピジェネティックマークによって、遺伝子の働くスイッチのオンとオフが切り替わり、細胞の働きが変化するといわれています。

Th2細胞がつくられすぎると、外部からの異物に対する攻撃が過剰になりアレルギー疾患が起こりやすくなることが分かっています。
そして、このようなT細胞の分化の運命を決定づけるのがエピゲノムなのです。DNAのメチル化やヒストンのアセチル化といったゲノムのエピジェネティックな変化は、さまざまな遺伝子のスイッチのオン・オフを切り替えることで、T細胞のはたらきを変化させます*4

このように、DNAのメチル化はT細胞にも影響を与えるなど、アレルギーにも深く関係しているようです。

なお、エピジェネティックマークには、DNAのメチル化とヒストンのアセチル化の2つのタイプがあるとされますが、本稿で言及しているのはDNAのメチル化です。

 

さて、サウサンプトン大学のウェブサイトに、先の論文の著者らへのインタビューを含めたニュースが掲載されています。分かりやすく解説されていますので、まずこの記事から紹介したいと思います。

「DNAマーカーは誕生の季節とアレルギーリスクを関連づける」

以下、当サイトによる和訳です。

サウサンプトン大学の研究者らは、DNA上の特異的マーカーが、誕生した季節とその後の人生におけるアレルギーのリスクを関連づけることを発見した。

人が生まれた季節は、アレルギー疾患のリスクから身長や寿命にまで、さまざまな影響を及ぼす。しかし、誕生した季節のような一度きりの曝露が、どのように永続的な効果をもつにいたるかについてはほとんど知られていない。

Allergy誌に掲載されたサウサンプトンの研究は、ワイト島で生まれた人たちから得られたDNAサンプルのエピジェネティックスキャンを行った。彼らは、特定のエピジェネティックマーク(具体的には、DNAのメチル化)が誕生の季節と関連しており、18年後の現在も存在していることを発見した。研究チームは、これら誕生の季節のエピジェネティックマークとアレルギー疾患を関連づけることもできた。例えば、秋に生まれた人は、春に生まれた人に比べて湿疹のリスクが増加する。この結果はオランダの子供たちのコホートで確認された。

大学のアレルギーおよび呼吸器遺伝学の教授で研究著者の一人である John Holloway 氏は次のように述べる。「これらは本当に興味深い結果です。誕生の季節が生涯を通じてその人に影響を及ぼすことは知られています。例えば、大抵、秋や冬に生まれた人は喘息のようなアレルギー疾患にかかるリスクが増加します。しかし、これまでその影響がどのようにして長い間続くのかはわかっていませんでした。」

「エピジェネティックマークはDNAに付着し、遺伝子発現(必須たんぱく質の産生のために特異的遺伝子が活性化するプロセス)に何年間も、もしかすると次世代にまで影響を及ぼし得るのです。我々の研究は、特異的エピジェネティックマークと誕生の季節およびアレルギーのリスクとを関連づけました。ただし、これらの結果はアレルギーのリスクに対する介入という臨床的意義があるのですが、妊娠時期を変更することをアドバイスしてはいません。」

研究論文の筆頭著者でサウサンプトン大学の Gabrielle Lockett 博士はこうつけ加える。「まるで星占いのように聞こえるかもしれません。しかし、今や私たちにはその星占いがどのように作用し得るかについての科学的エビデンスがあります。誕生した季節は多くのことに影響するので、この研究で発見されたエピジェネティックマークは、アレルギーだけでなく他の季節性疾患や形質のメカニズムとなり得る可能性があります。」

研究チームは、1年のうちの季節の違いが疾患リスクを変化させるかどうか、季節の特異的差異として気温、日光量、食事が関与するかどうかなどについて理解するにはさらなる調査が必要だとしている。DNAメチル化とアレルギー疾患との関係や、他の環境曝露により疾患の可能性をもたらすエピゲノムの変更が行われるかについても、さらなる研究が必要である。

このように、DNA上の特定のエピジェネティックマークが生まれた季節と関連しており、その影響が生涯続くというだけにとどまらず、次世代にまで影響するかもしれないという話は大変印象深いです。

過去の記事「タバコとアトピー」でも、DNAのメチル化について言及しました。喫煙等によるDNAのメチル化が、子や孫の世代のアトピー性皮膚炎の発症に影響する可能性があるという話です。

DNAのメチル化は、アレルギーの分野において大変重要なテーマなのではないかと感じます。さらに研究を進めていただきたいところです。

 

最後になりましたが、論文の記述を確認します。

背景:誕生の季節はアレルギーリスクに影響する。しかし、その基本的な生物学的メカニズムは明らかではない。環境はDNAメチル化に影響を及ぼすが、遺伝子発現および病気に関しては効果が長続きする可能性がある。この研究では、DNAメチル化が誕生の季節とアレルギーとの相関の基礎となり得るかを検討した。(中略)

結果:春生まれに比べて、秋生まれでは湿疹リスクが増加していた。92 CpGsのメチル化はエピゲノムワイド相関研究における誕生の季節との相関を示した。*5

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論文によれば、秋生まれに比べての各疾患の相対リスクは次の通りです。

  • 高血清IgE 夏生まれで低い
  • 湿疹         春生まれで有意に低い
  • 鼻炎        夏生まれで高い
  • アトピー 有意差なし
  • 喘息   有意差なし

また、5つのアウトカム検査の補正後、春と秋との湿疹のリスク差のみが統計的に有意であったとのことです。

結果をみると、やはり、秋冬よりも春夏生まれの方がリスクが低いようにみえます。ただ、アトピー性皮膚炎に関しては誕生の季節による違いはみられなかったとのこと。

それにしても、自分の生活習慣がエピジェネティックマークとして記憶され、次世代にまで受け継がれるという話は、居住まいを正したくなる話ではないでしょうか。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:Vassallo MF et al. Season of birth and food allergy in children. Ann Allergy Asthma Immunol. 2010 Apr;104(4):307-13.

*2:Thysen AH et al. Season of birth shapes neonatal immune function. J Allergy Clin Immunol. 2016 Apr;137(4):1238-1246.e13.

*3:なぜ?なに?エピゲノム:科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業 国際ヒトエピゲノムコンソーシアム 日本チーム

*4:アレルギー疾患・自己免疫疾患とエピゲノム:科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業 国際ヒトエピゲノムコンソーシアム 日本チーム

*5:Locket et al. Association of season of birth with DNA methylation and allergic disease. Allergy 2016; DOI:10.1111/all.12882.