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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイド忌避についての報告

脱ステロイド

ステロイド忌避(ステロイドフォビア)についての興味深い報告を見つけました。

「アトピー性皮膚炎患者の養育者のステロイド忌避と患者の重症度」と題された報告です。学術論文ではなく学会で発表されたものです。

報告によれば、ステロイドを忌避する親の子どもは、皮疹の重症度が高いとのこと。

【背景】アトピー性皮膚炎(AD)のコントロールには,患者の良好なアドヒアランスが必要であるが,養育者のステロイドフォビアや治療の自己中断例が少なくない.

【目的】AD初診患者のステロイド外用剤使用に対する意識とスキンケア行動および重症度について調査した.

【方法】平成15年9月から18年6月までの当科初診患者のうち問診票への記載があったAD患児234例を対象に,初診時までの治療行動およびステロイド忌避について調査した.

【結果】対象患児の平均年齢は4.2歳(0~24歳)で、ステロイド外用剤を心配になって自己中断した既往のある群は全体の44%で,ない群よりも皮疹の重症度(SS:痒みと睡眠障害 11.3±4.5 vs 9.4±4.9,EOD:罹患面積 45.5±26.4 vs 36.2±26.3,DAS:活動性スコア 37.4±19.1 vs 30.3±20.0)が高かった.初診時のステロイド忌避については 1.「絶対に使ってほしくない」が4.9%,2.「できるだけ使ってほしくない」が32.7%,3.「きちんと治るならこだわらない」が53.8%,4.「よくわからないので医師に任せる」が8.5%で、皮疹重症度(SS)はそれぞれ 14.4±3.9,10.5±4.6,9.8±5.0,8.2±3.7 となりステロイド忌避の養育者の児の重症度が有意に高かった.

【結論】ステロイド忌避の養育者の子どもはアトピー性皮膚炎のコントロールが不良であった. *1

患者としての感想を述べます。

まず、アトピー性皮膚炎に関する報告において、皮疹重症度を評価する場合は、対象患者におけるステロイド等免疫抑制剤の使用状況を明らかにする必要があると思います。

しかし、その肝心な点が曖昧となっている報告が少なくありません。残念ながらこの報告も例外ではなく、ステロイドの使用状況がわかるように記述されていません。それだけで私には無意味な報告に思われます。

ステロイドを「絶対に使ってほしくない」患者の皮疹の重症度が高いそうですが、その患者がステロイドを使っていないのであれば、他のステロイドを使っている患者よりも皮疹の重症度は高い可能性があります。

一般的に考えて、皮疹の重症度を左右するのは、「ステロイドの好き嫌い(ステロイド忌避)」ではなく、「ステロイドの使用有無」でしょう。それゆえに使用状況を明らかにする必要があります。

ステロイドが好きな人は、ステロイドを使用しているだろうし、皮疹の重症度は低いでしょう。一方、ステロイドが嫌いな人は、ステロイドを使用していないだろうから、皮疹の重症度は高いでしょう。当たり前の話ではないでしょうか。

ステロイド忌避という因子をわざわざ重症度に関連付けることの有用性がよく理解できません。

そして、結論として、「ステロイド忌避の養育者の子どもはアトピー性皮膚炎のコントロールが不良であった」そうです。

それはそうだろう、という感想しか出てきません。

 

 

さらに、上記報告の6年後、同じグループの著者らによって再び同様の報告がありました。

「アトピー性皮膚炎患児の養育者におけるステロイド忌避の予測因子についての検討」という報告です。

【背景】ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎(以下AD)治療の中核をなす.しかしステロイド外用薬を忌避する患者および養育者がおり,治療に苦慮する例がしばしばみられる.ステロイド忌避の予測因子を検討することはAD治療を円滑に行う上で重要であるが,その検討は少ない.本研究ではAD患児の養育者におけるステロイド忌避の予測因子を質問票にて検討した.

【方法】当科初診のAD患児436名およびその養育者を対象とした.質問票にてステロイド忌避の有無とAD治療歴を調査し,ステロイド忌避の予測因子について多変量解析を用いて検討した.

【結果】38.3%の養育者にステロイド忌避を認め,ステロイド忌避の予測因子は女児(オッズ比(以下OR)=1.85 vs男児;p=0.005),父親のAD既往歴(OR=1.94;p=0.034),医療機関変更の頻度が高いこと(OR=1.25 vs男児;p=0.026)であった.ADの重症度はステロイド忌避とは相関しなかった.

【結論】養育者のステロイド忌避を把握するためには,ADの重症度に関わらずAD患児の性別や家族歴,ADの治療歴を含めた詳細な問診が重要であることが示唆された.*2

6年前の報告では、「ステロイド忌避の養育者の児の重症度が有意に高かった」のですが、今回は「ADの重症度はステロイド忌避とは相関しなかった」とのことで、前回の報告を完全に否定する結果でした。

また、ステロイドを忌避する患者と次の因子が相関するとしています。

  • 女児
  • 父親がアトピー性皮膚炎
  • 医療機関変更の頻度が高い

それがいったい何だというのでしょう。

女児についてはよくわかりませんが、他の2つの因子は、常識的に考えれば当たり前の話です。

父親がアトピー性皮膚炎の場合は、ステロイドを使っても完治しないことを経験的に知っているので、子どもにステロイドを使わせたくないと考えるだろうことは容易に推測できます。

医療機関変更の頻度が高いことについては、その患者が複数の皮膚科を受診してもステロイド治療で完治しなかったので、それ以上ステロイドを使いたくないと考えるだろうことは想像に難くありません。

ステロイド忌避を把握してどうするのでしょう。アトピーの父親が女の子を連れて来たらステロイド忌避を疑えということでしょうか。

 

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そこから一歩進んで、ステロイド忌避の原因を探るとか、ステロイド忌避を解消する対策を編み出すとか、実際の診療において有意義な内容でなければ、報告する意味がないように思います。

報告全体の印象からは、「ステロイド忌避には気をつけろ」と言いたいだけなのではないかと感じられます。

いずれにせよ、一般的な皮膚科では、ステロイド忌避患者が腫れ物扱いされることがよくわかる報告です。

*1:小島令嗣, 小嶋なみ子, 明石真幸, 益子育代, 大矢幸弘, アトピー性皮膚炎患者の養育者のステロイド忌避と患者の重症度. 日本小児科学会雑誌, 2007年, 第111巻, 第2号. 275.

*2:小島令嗣, 藤原武男, 松田明生, 成田雅美, 大矢幸弘, 斎藤博久, 松本健治, アトピー性皮膚炎患児の養育者におけるステロイド忌避の予測因子についての検討. 日本小児科学会雑誌, 2013年, 第117巻, 第2号. 312.