アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ガイドライン・標準治療は生涯治療

免疫システムを生涯抑制する

現在は、肝移植を行いますと直ちに免疫抑制剤を使用してまいります。これは、例えばステロイドを使ったりというようなことで、術直後から半年間位使います。それからFK506、タクロリムスという免疫抑制剤、これは生涯続けるということになります。ステロイドは半年前後までの、2つの免疫抑制剤で使うということになります。(中略)

免疫抑制剤によって感染症にかかりやすくなるのも問題です。これは免疫抑制剤を使っている限り、いつでも起こりうる合併症です。 *1

厚生労働省「肝機能障害の評価に関する検討会」の議事録からの引用です。この発言の通り、肝移植など臓器移植を行った場合は、臓器への拒絶反応を抑えるために、患者は免疫抑制剤タクロリムスの内服を生涯続けることになります。

 

生涯にわたる対症療法

先月、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版が公開されました。それを機に、ガイドラインや標準治療の記述等を読んでいて改めて感じたことがあります。

それは、ガイドラインに沿った治療(あるいは標準治療)を選択した場合は、生涯にわたり免疫抑制剤による治療を続けなければならないのではないか、ということです。

 

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ガイドラインでは、免疫抑制剤のステロイド外用薬およびタクロリムス軟膏が第一選択薬として推奨されています。

臓器移植患者とアトピー性皮膚炎患者を一括りにするわけではありませんが、この二者は免疫抑制剤を続けるという点で共通しているように思います。

つまり、臓器移植を受けた患者は、他人の臓器という異物が体内にある限り、免疫抑制剤(プログラフ)の内服を生涯続けることになります。

一方、標準治療を受けるアトピー性皮膚炎患者は、免疫システムが過剰反応する原因がある限り、免疫抑制剤(ステロイド、プロトピック、シクロスポリン)の外用または内服を生涯続けることになります。

ガイドラインや標準治療では、治療の一環として、患者ごとのアトピー性皮膚炎の原因(悪化因子)を検索し、対策すべき旨が示されています。しかし、皮膚科診療の現場では、外用薬を処方することに重きが置かれ、悪化因子への対策は殆ど行われていないように思います。

加えて、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインは、その診療が対症療法であることを宣言しています。

アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり,現在,疾患そのものを完治させうる治療法はない.*2

アトピーは多因子疾患であるために、原因を特定することは困難であるとされ、臨床上も重視されていません。

要するに、原因がわからないので完治させる治療法はなく、薬物療法で免疫を抑制し、症状のない状態を "生涯にわたり" 維持することをガイドラインや標準治療は目的としているといえます。

 

免疫抑制剤はやめられるのか

標準治療を受けた患者のうち、どのくらいの患者が免疫抑制剤を使わずに症状を維持できるようになるのかは、大変重要な論点です。しかし、大規模な統計データを目にしたことはありません。

おそらく、多くの患者が免疫抑制剤をやめることができていないのではないでしょうか。そうした人たちは、免疫抑制剤の使用を生涯続けなければなりません。

標準治療の実績」を確認すると、標準治療を受けて改善する人は4割弱で、約6割の患者が現状維持か、または悪化しています。この6割の患者は免疫抑制剤をやめることはできていないと推測されます。

アトピー性皮膚炎の患者数」を確認すると、厚生労働省の平成26年患者調査では40~44歳の人数が相対的に多く、40歳を超えても免疫抑制剤をやめられない人がいると推測されます。

プロアクティブ療法」が導入されたことは、従来の標準治療では免疫抑制剤をやめられないことの証拠です。また、プロアクティブ療法をいつまで続ければ免疫抑制剤を中止できるのかについては明らかにされていません。

そして、免疫抑制剤からの強制離脱を試みる脱ステロイド患者が後を絶たないことが、免疫抑制剤をすんなりとやめられないことの証でしょう。

 

免疫抑制剤をやめられるかどうかについて、改めてガイドラインと標準治療の記述を確認してみます。

まず、ガイドラインの記述です。

5)外用中止
 炎症症状の鎮静後にステロイド外用薬を中止する際には,急激に中止することなく,寛解を維持しながら漸減あるいは間欠投与(プロアクティブ療法(後述)を含む)を行い徐々に中止する*3

患者としての意見を述べると、徐々に中止できるのなら、アトピー治療の現場はこんなに混乱していません。一部の患者では、徐々に中止しようとすれば皮疹は再燃します。ともあれ、ガイドラインでは、中止できるかどうかの詳細は明らかではありません。

次に、標準治療の記述です。

9.ステロイド外用薬を使うと一生やめられなくなる
一生やめられなくなるということはありません。適切な治療をすることで良くなり、やめられるようになった人はたくさんいます。ステロイド外用薬を使って炎症が取れれば使う必要はなくなり、保湿剤だけでコントロールすることもできるからです。ただアトピー性皮膚炎はまた炎症が出てくることがありますのでその時はまた必要な期間使う必要があります*4

結局、標準治療は、炎症の原因がある限り免疫抑制剤をやめることはできないということを認めています。

 

患者は覚悟を強いられる

一度でも免疫抑制剤による治療を受けた場合、それをやめることが難しいのであれば、医師は免疫抑制剤(ステロイド外用・内服薬、タクロリムス外用薬、シクロスポリン内服薬等)を処方する際に、生涯治療を続けなければならなくなる可能性を患者に知らせるべきだと思います。

「原因が特定できずに皮疹の再発を繰り返すなど、場合によっては生涯免疫抑制剤を続けなければなりませんが、よろしいですか?」というように。

特に、乳幼児に対する免疫抑制剤の処方には慎重であるべきと思います。赤ちゃんに対して安易に免疫抑制剤が処方されている現状は、どう考えても異常です。

私は、皮膚科から免疫抑制剤としてステロイドおよびタクロリムス軟膏を処方され、何の疑問もなく使用しているうちに酒さ様皮膚炎(リバウンド)等の副作用を起こしました。そして、免疫抑制剤からの離脱に際して、身体的・精神的・経済的・時間的に多大なる損害を被りました。今でも私の皮膚は、ステロイドを使用する前と比べて大変不安定です。ステロイドを使わないと正常な皮膚を維持できない体に変化してしまったのかもしれません。

免疫抑制剤を中止すると皮疹が劇的に悪化する場合があることや、難治のケースでは免疫抑制剤で皮疹を抑制し続けなければならないことを、皮膚科医から伝えられていたならば、私は安易に薬に頼ることを選択しなかったと思います。

免疫抑制剤を使う場合は、なかなかやめることができないことの他にも、腎機能のモニターが必要であること、感染症のリスクが増大することが考えられます。

皮膚科医から免疫抑制剤を処方された場合、患者は一生の覚悟を決めて治療を受ける必要があるのかもしれません。

 

 (当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

*1:「肝機能障害の評価に関する検討会(第3回)議事録」(2009年)より

*2:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版

*3:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版

*4:患者の視点で考えるアトピー性皮膚炎 | アトピー性皮膚炎ってどんな病気?