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ガイドラインへの期待は薄い

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン改訂へ

今年2016年に、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」の改訂が行われるようです。

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日本皮膚科学会による現行のガイドラインは2009年に作成されたものですから、7年ぶりの改訂となります。なお、2015年に日本アレルギー学会が「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2015」を出版していますが、日本皮膚科学会作成のガイドラインとは性格を異にするものです。

日本アレルギー学会よりアトピー性皮膚炎診療ガイドラインが発表されておりますが、これはプライマリーケアを担当する医師を広く対象としたものであり、皮膚科を専門とする医師を対象にした本ガイドラインとはその意図するところが若干異なります。*1

ただし、今回の改訂では、日本皮膚科学会と日本アレルギー学会の共同作成になるようです。

また、このガイドライン作成は、厚生労働省の免疫アレルギー疾患等政策研究事業(平成27年度)の一環であり、研究代表者は京都府立医科大学の加藤則人氏です。

 

クリニカルクエスチョンの12項目

今回のガイドライン改訂に先駆けて、2014年10月、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会は、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」クリニカルクエスチョン案を募集しました。募集期間は10日間のみですが。

クリニカルクエスチョンとは、募集のお知らせによると、診療の現場で生じる疑問や問題点とのこと。募集項目は以下の12項目です(赤字強調は筆者による)。

  1. 疫学(有病率、経過、予後)
  2. 病態(診療現場で有用な情報)
  3. 診断(病歴と視診、皮疹の性状と分布、鑑別疾患、重症度評価、QOL評価)
  4. 治療(ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、保湿外用薬、非ステロイド系消炎外用剤、外用抗ヒスタミン剤、内服抗ヒスタミン剤、内服抗アレルギー薬(ロイコトリエン拮抗薬を含む)、シクロスポリン、ステロイド内服、外用・内服抗菌薬、紫外線、漢方薬、心身医学、プロバイオティクス、その他)
  5. 検査(病勢評価、重症度評価、悪化因子の検索)
  6. 発症予防(保湿外用薬、プロバイオティクス、など)
  7. 教育(個別、集団、エデュケーター)
  8. 治療のアドヒアランス
  9. 悪化因子と対策(食物、刺激、環境、ストレス、汗、細菌など)
  10. 合併症(皮膚感染症、眼合併症)
  11. 専門医師への紹介(診断、治療、入院)
  12. 患者・養育者への説明のポイント
 

12項目から透けてみえる改訂ガイドラインの中身

6. 発症予防(保湿外用薬)は、国立成育医療研究センター発表の研究論文*2 が念頭にあると思われます。赤ちゃんの頃から全身に保湿剤を塗ることでアレルギー疾患の発症を予防しましょうという話です。
保湿の重要性がさらに強調されることになるのでしょう。保湿依存症の私としては複雑な思いです。
 
それは良いとして、注目したいのは、7. 教育と8. 治療のアドヒアランスです。
アドヒアランスとは、「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること *3 」で、医師の指示に従うだけの受け身の治療ではなく、患者が積極的に治療に参加することと理解されています。
 
このアドヒアランスという言葉が、アトピー性皮膚炎で用いられるときは、例えば次のような場合です。
アトピー性皮膚炎では、外用薬が一次治療となることがよくある。外用薬治療に失敗した場合、更なる治療には、より強い毒性の可能性をもつ内服薬が含まれ得る。アトピー性皮膚炎における外用薬治療のアドヒアランスは、まだ十分に特徴付けられていない。外用薬治療のアドヒアランスの低さが、外用薬療法の失敗の理由であるかもしれない。*4
 
さらに、ガイドライン作成委員長の加藤則人氏が、アドヒアランスについてどのように考えているか見てみます。
アトピー性皮膚炎の症状を良好にコントロールされた状態に保つためには,疾患に関する正しい知識を医師と患者が共有して信頼関係を築き,適切な薬物療法,バリア機能低下を補完するためのスキンケア,悪化因子に対する配慮と対策などを長期にわたって継続することが必要である.しかし,実際には治療を継続できないために皮疹が悪化することを繰り返し,次第に重症化していく例が少なくない.あるいは,ステロイド外用薬に対する誤った情報の認知などから,治療のスタートラインにすら立てない場合もある.アトピー性皮膚炎の治療を始めるに当たっては,疾患や治療法に関する正しい理解を得ることに加えて,患者の治療意欲を高めることが必要である.*5
 
要するに、アトピー性皮膚炎の治療では、長期のステロイド・保湿剤使用が必要となるにもかかわらず、ステロイドへの誤解などから継続的に治療をせずに悪化してしまう患者がいるので、ステロイドについての正しい理解を促し治療意欲を高めてもらう必要がある、ということのようです。
 
この解釈が正しいとすれば、クリニカルクエスチョンの募集項目に「教育」と「治療のアドヒアランス」が設けられていることの意味は、従来の日本皮膚科学会の方針を踏襲しつつ、ステロイドに不安をもつ患者に対して、標準治療に沿った教育・アドヒアランスをより徹底することに他なりません。
「ステロイドを使いたくない」という患者の声を聞き入れるのではなく、その患者の声は誤解に基づくものなのだから教育しなければならない、ということです。
 
このように、ガイドラインの改訂によって、「保湿でアレルギーを予防しましょう」「ステロイドは安全です」といったメッセージが強まるとすれば、脱ステ・脱保湿患者の肩身の狭い立場は今後も当分変わらないわけで、大変残念な結果となってしまいます。
 
結局、私のようにステロイド依存に陥った経験のある患者にとっては、皮膚科学会がそうしたメッセージを発信すればするほど、皮膚科を受診することにためらいが生じ、足が遠のくことになります。懇々とステロイド治療のアドヒアランスを高めるための教育を受けるのは嫌ですから。
 
そろそろ別のアプローチを試みた方が、真の意味でのアドヒアランスは高まると思うのですが、いかがなものでしょうか。
 
 
※ガイドライン2016年版が改訂・公開されました。
 

*1:「日本皮膚科学会ウェブサイト 皮膚科Q&A」より

*2:Horimukai K et al. Application of Moisturizer to Neonates Prevents Development of Atopic Dermatitis. Journal of Allergy; Clinical Immunology (11.248) Vol.134, Issue 4, October 2014.

*3:アドヒアランス - 薬学用語解説 - 日本薬学会

*4:Krejci-Manwaring et al. Stealth monitoring of adherence to topical medication: Adherence is very poor in children with atopic dermatitis. Journal of American Academy of Dermatology, February 2007 Volume 56, Issue 2, Pages 211–216.

*5:加藤則人, EVS5-4 アトピー性皮膚炎の治療のアドヒアランスを高めるポイント(アトピー性皮膚炎-乳幼児から成人まで-,イブニングシンポジウム5,第63回日本アレルギー学会秋季学術大会).