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タクロリムスの作用機序

カルシニューリン阻害剤

タクロリムスは、1984年、藤沢薬品(当時)により茨城県筑波山で発見された放線菌ストレプトマイセス・ツクバエンシスから産生されるマクロライドです。

強い免疫抑制効果をもつことから臓器移植への適応を目指して開発が進められ、1993年、肝臓移植における拒絶反応の抑制を適応症として「プログラフ注射液/カプセル」が承認、発売されました。

また、その薬理作用から、アトピー性皮膚炎に対する治療効果も期待され、1999年には、タクロリムス外用薬として「プロトピック軟膏0.1%」が承認、発売されました。

タクロリムス製剤はカルシニューリンを標的とすることから、同様の薬理作用をもつピメクロリムスやシクロスポリンなどとともに、カルシニューリン阻害剤と呼ばれています。

カルシニューリンは、セリン・スレオニンホスファターゼであり、プロテインホスファターゼの一種です。プロテインホスファターゼとは、リン酸化された蛋白質のリン酸基を加水分解により脱リン酸化させる酵素のことをいいます。

 

タクロリムスの薬理作用

「プロトピック軟膏0.1%」インタビューフォームより抜粋して引用します。

タクロリムスはT細胞、肥満細胞、好酸球、ランゲルハンス細胞等の炎症性細胞の働き、中でもT細胞からのサイトカインの産生を強く抑制し、これらの炎症性細胞の相互作用により誘発されるアトピー性皮膚炎に対して抑制作用を示すと考えられる。

  1. サイトカイン産生抑制作用
    T細胞によるIL-2、IL-3、IL-4、IL-5、インターフェロン-γ、GM-CSF等のサイトカインの産生を抑制する。
  2. 肥満細胞脱顆粒抑制作用
    抗IgE抗体刺激によるヒト肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制する。
  3. 好酸球脱顆粒抑制作用
    好酸球からの塩基性蛋白(ECP)の遊離を抑制する。
  4. 抗原提示能抑制作用
    ランゲルハンス細胞を抗原提示細胞とする混合リンパ球反応を抑制する。*1

このように、タクロリムスは、T細胞に作用して免疫抑制作用を発現します。また、肥満細胞にも直接作用してヒスタミン遊離を抑制することから、かゆみにも効くことが期待されます。

 

カルシニューリンのはたらき

タクロリムス(カルシニューリン阻害剤)の標的となるカルシニューリンが、そもそもどのようなはたらきをしているか、その基本的な部分を押さえておきます。

カルシニューリンは、T細胞レセプター(TCR)からの刺激により、細胞のカルシウムイオン(Ca²⁺)濃度が上昇すると活性化されます。

そして、転写因子NF-ATcを脱リン酸化して、NF-ATcの核への移行を誘導します。

核内に移行したNF-ATcは、AP-1などの核内転写因子NF-ATnと複合体を形成します。

NF-ATc–NF-ATn複合体は、インターロイキン-2(IL-2)遺伝子のプロモーターと結合し、IL-2の産生を開始します。

IL-2は、ヘルパーT細胞を増殖・活性化させて他のサイトカインの産生を促進します。

また、転写因子NF-ATは、IL-2のみならず、アトピー性皮膚炎に関与するとみられる様々な炎症性サイトカイン遺伝子のプロモーター領域を活性化すると考えられています。

 

タクロリムスの作用機序

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Mechanism of action of cyclosporine or tacrolimus (FK506)
Expert Reviews in Molecular Medicine © 2000 Cambridge University Press より一部翻訳改変して引用

 

プロトピックを皮疹部に塗布すると、有効成分であるタクロリムス(FK506)が表皮内へ移行します。

タクロリムスは、そのイムノフィリンであるFK506結合タンパク質(FKBP)と結合し、複合体を形成します。

タクロリムス-FKBP複合体は、カルシニューリン (CaN)と結合し、競合的に阻害します。

その結果、カルシニューリンは、NF-ATcを脱リン酸化することができず、NF-ATcの核内への移行、NF-ATcとNF-ATnとの結合に失敗します。

以上のように、タクロリムス-FKBP-CaN複合体は、この経路を阻害することにより、活性化T細胞のクローン性増殖を抑制します。

なお、ある種の免疫抑制剤の受容体をイムノフィリンと呼びます。シス-トランス異性化反応を促進するペプチジルプロリルイソメラーゼ(異性化酵素)のことです。

もちろん、作用機序が全て解明されているわけではありません。上記作用が確からしいことがわかってきているということです。 

(参考文献)

 Murphy Kenneth, Travers Paul, Walport Mark(2010)『免疫生物学』笹月健彦監訳, 南江堂.

Mechanism of action of cyclosporine or tacrolimus (FK506). Expert Reviews in Molecular Medicine © 2000 Cambridge University Press.

J. C. Pascual, A. B. Fleischer, Jr. Tacrolimus Ointment (Protopic) for Atopic Dermatitis.

 「プロトピック軟膏0.1%」インタビューフォーム 2014年4月(改訂第16版)

山下道雄, タクロリムス(FK506)開発物語. 生物工学会誌 91(3), 141-154, 2013-03-25.

 

(本稿は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、その正確性や完全性を保証するものではありません。)

*1: 「プロトピック軟膏0.1%」インタビューフォーム 2014年4月(改訂第16版)