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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

アトピー性皮膚炎に対するタクロリムス外用薬

今年2015年7月に、コクラン・スキングループが「アトピー性皮膚炎に対するタクロリムス外用薬」*1 というレビューを発表しました。

このレビューは、中等症から重症アトピー性皮膚炎に対するタクロリムス外用薬について、他の治療薬と比較した場合の、有効性と安全性を評価することを目的としています。

タクロリムス外用薬(商品名:プロトピックなど)は、ステロイド外用薬と同様に免疫抑制剤で、ステロイド外用薬による治療がうまくいかない場合、とりわけ顔面の炎症を抑える目的で処方されることが多い薬です。カルシニューリン阻害薬とも呼ばれます。

発表されてからやや時間が経過していますが、タクロリムス外用薬についての現時点での評価がわかりやすくまとめられていますので、覚書としておきます。

 

では、レビューの抄録(abstract)の一部を、翻訳・引用します。

レビューは、20の研究、5885人の参加者についてメタアナリシスを実施、その背景について次のように説明しています。

アトピー性皮膚炎(AD)(またはアトピー性湿疹)は、子供と大人に作用し、生活の質に重大な影響をもつ慢性炎症皮膚疾患である。ステロイド外用薬(TCS)はこの疾患のための第一選択薬である。しかし、ステロイド外用薬は、慢性的に使用すると、重大な副作用に関連しうる。タクロリムス軟膏(0.1%と0.03%の強さの2製品)は代替療法となりうる。タクロリムスは、ピメクロリムスとともに、カルシニューリン阻害外用薬(TCIs)と呼ばれる薬剤である。

日本においても、プロトピック軟膏0.1%とプロトピック軟膏0.03%の濃度の異なる製品があり、0.1%は16歳以上、0.03%は2~15歳の小児用として処方されています。ピメクロリムスは日本未承認薬です。

次に、結論から一部引用します。

タクロリムス0.1%は、効果の弱いステロイド、ピメクロリムス1%およびタクロリムス0.03%よりも優れていた。結果は、中等から強力なステロイドと、双方の用量を比較した場合は不明確であった。タクロリムス0.03%は、マイルドのステロイドおよびピメクロリムスよりも優れていた。双方のタクロリムス製剤は安全であるようにみえ、使用により悪性腫瘍や皮膚萎縮のリスク増加の可能性を支持するエビデンスはみられなかった

タクロリムス外用薬は、あるクラスのステロイド外用薬等と比べれば、有効性に優れているようです。

また、安全性について、アトピー患者の関心事である2点に言及しています。

すなわち、

  • 皮膚萎縮は起きるのか
  • 悪性腫瘍の報告があるが、本当に関連があるのか

という点です。

まず、ステロイド外用薬では数週間の使用で皮膚萎縮が起きることが報告されています。一方、同じ免疫抑制剤でもタクロリムス外用薬では皮膚萎縮が起こらないとされ、それが売りのひとつとされてきました。この点にエビデンスがあるのかということです。

次に、カルシニューリン阻害薬は悪性腫瘍との関連が以前から指摘されており、2006年からは、アメリカFDA(食品医薬品局)により、エリデルクリーム(ピメクロリムス)とプロトピック軟膏(タクロリムス)について黒枠警告(a boxed warning)がなされてきました。この悪性腫瘍との関連がどの程度あるのかという点です。

 

f:id:atopysan:20151205001606p:plain

出典:FDA Approved Label (2006) Protopic® Ointment (Tacrolimus), NDA 50-777/S-012(Approved 1/19/2006). 

 

和訳します。

f:id:atopysan:20151205001640p:plain

 

上記の2点について、レビューは、危険性はなく安全であるとしています。つまり、長期使用であっても皮膚萎縮の危険はなく、悪性腫瘍に関しても何らエビデンスはみられなかった、と結論づけたのです。

 

しかし、元も子もなくするようですが、レビューは、このレビュー自体を慎重に読むように注意喚起しています。

薬剤投与量、アウトカム、追跡期間の変動がメタアナリシスの実行を困難にさせた。

エビデンスの信頼性と強さはデータの欠如により限定されたものであった。このように、このレビューにおける発見は慎重に解釈されるべきである。

ですから、結局のところ、どこまで信じてよいのかわからないのです。文字通り、慎重に解釈するほかないようです。

 

ところで、私がこのレビューで一番注目したいのは、次の一文です。

Topical corticosteroids (TCS) are the first-line therapy for this condition; however, they can be associated with significant adverse effects when used chronically. 

ステロイド外用薬はこの疾患のための第一選択薬である。しかし、ステロイド外用薬は、慢性的に使用すると、重大な副作用に関連しうる。

このように、ステロイド外用薬は慢性的に使用すると重大な副作用が起きうる、というごく当たり前の指摘が、今や日本では滅多に目にすることがなくなってしまいました。そのため、ある意味で新鮮な感じすら受けました。

 

なお、Plain language summary をコクランのサイトで読むことができます。

Topical tacrolimus for atopic dermatitis | Cochrane

 

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

*1:Cury Martins J, Martins C, Aoki V, Gois AFT, Ishii HA, da Silva EMK. Topical tacrolimus for atopic dermatitis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2015, Issue 7. Art. No.: CD009864. DOI: 10.1002/14651858.CD009864.pub2.