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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

震災とアトピー

アトピー覚書

(追記あり:2015年10月14日)

日本に住んでいる限り、私たちはいつ震災に見舞われるかわかりません。
もしもアトピー性皮膚炎を抱える患者が被災した場合には、震災後の生活環境の変化のなかで症状のコントロールに気を配らなければなりません。

「東日本大震災発生後のアトピー性皮膚炎患者の症状変化と生活状況調査*1」という論文があります。

非日常的な生活環境下で患者の症状がどのように変化したか、治療状況等がどうであったかを当時のカルテを基に調査したものです。
論文によれば、震災発生後に悪化した症例の割合は前年の同時期に比べて有意に高く、震災は明らかにアトピー性皮膚炎患者の症状を悪化させたことが示された、としています。

 

f:id:atopysan:20150926160959j:plain

 

内容を詳しくみていきます。
対象患者は、震災発生後から約1か月の間に病院等を受診したアトピー性皮膚炎患者のうち、診療録の記載から震災前後の症状の変化が判断できた患者です。
症例は全175例。症状変化の内訳は次の通りです。

  • 改善7例(4%)
  • 不変78例(45%)
  • 悪化90例(51%)

全体としては、過半数が悪化しています。

では、震災によってなぜ悪化したのでしょうか。
症状悪化例の要因で多かったものは次の通りです。

  • 入浴困難38例
  • 休薬12例
  • ストレス・疲労9例

ここで浮き彫りとなったのは、「入浴」がアトピー性皮膚炎の症状に大きな影響を与えている可能性があることです。
さらに、入浴頻度が減少した123例の症状変化の内訳は次の通りです。

  • 改善6例(5%)
  • 不変49例(40%)
  • 悪化68例(55%)

入浴頻度が減少すると過半数が悪化しています。また、普段の入浴方法に近いほど悪化症例の割合は少ない傾向がみられたとのことです。

 

震災後の悪化要因として想像されるのは、第一にストレスではないかと思われますが、今回の調査では、ストレスに関する具体的な記載のある診療録はほとんどなかったといいます。
また、食生活の変化が症状悪化に直結したと推察される症例もなく、居住環境についても特定の傾向はみられなかったとのことです。
なお、帰宅できなかった、薬が見つからなかった、入浴できなかった、などの理由で治療を中断した患者群では、悪化症例の比率が高かったようです。

そうだとすれば、「ストレス・食生活・居住環境」よりも、「入浴困難・休薬」という要因が症状悪化につながっているものとみられます。個人的には、この結果は納得のいくものです。休薬については、何の薬を使っていたかが重要と思われるのですが、残念ながらその点についての記述はありません。

ここで、入浴について、大変示唆に富む記述がありましたので引用します。

ごく少数ながら、普段の入浴ができないことが症状の改善につながったと推察される症例もあった。改善症例7例中1例では、診療録に「入浴せず石鹸を使わなくなったらよくなった」という記載があり、また不変症例のなかにも、「お風呂に入らないほうがかゆみはよいようだ」、「入浴するようになったらむしろかゆみが増した」という患者のコメントがみられた。このような症例では、普段の入浴方法が症状を悪化させていた可能性があり、洗いすぎないことや石鹸選びの重要性を再認識させられた。

入浴しないことで、悪化する場合もあれば、改善する場合もあるということです。この相反する事実は経験的に知られていることと思いますが、アトピー性皮膚炎と入浴の関係は、さまざまな悪化要因のなかでも重要な問題ではないかと思います。

以上見てきたように、もしも震災に見舞われた場合には、アトピー性皮膚炎患者にとって、入浴できないこと、および、薬を使えないこと、が悪化リスクとなりそうです。その場合にどのような対策が可能であるか、予め考えておく必要があるかもしれません。

 

(追記:2015年10月14日)

上記の論文では、患者のなかに「仮設住宅入居者はいなかった」とのことです。

一方、仮設住宅住民を対象とした他の調査によれば、仮設住宅では室内の相対湿度が高く真菌が発育しやすいため、居住環境がアレルギー疾患の発症に関与する可能性があるとしています。

空気1m³あたりMPN値で約163,200胞子数を記録した世帯が複数確認され、非被災地の一般住宅と比較して150倍以上の高濃度真菌汚染の傾向が示された。また,Aspergillus属菌の検出濃度が比較的高かった。*2

仮設住宅での生活を強いられている方々にとっては、居住環境の変化は大きな悪化要因となり得ると思われます。被災された方々に謹んでお見舞い申し上げます。

*1:Maki OZAWA et al. Survey of the Disease Conditions and the Daily Living Conditions of Atopic Dermatitis Patients after the Great East Japan Earthquake. Journal of Environmental Dermatology and Cutaneous Allergology 9(1): 34 -40 2015

*2:渡辺他「東日本大震災における応急仮設住宅住民を対象とした呼吸器アレルギー集団検診1・真菌叢調査」(2015)