アトピー覚書ブログ

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脱ステロイドの弊害?

標準治療派から執拗な批判を受けている脱ステロイド。今回は、脱ステロイドには弊害があるとする主張に対して、その批判が妥当なのかどうかを検討してみたいと思います。

不適切治療

2000年の日本皮膚科学会雑誌に掲載された「アトピー性皮膚炎における不適切治療による健康被害の実態調査〔最終報告〕*1」というものものしいタイトルの報告があります。

この報告で、脱ステロイドは、医療機関であるか否かを問わず「不適切治療」として分類されています。いったい何が不適切なのでしょうか。報告は次のように定義づけています。

不適切治療とは、個々の症例で結果として悪化に至ったと判断された治療で、ある特定の治療を全体として適切とか不適切であるとか判定したものではない.

調査対象とする治療には以下のものが含まれる.(中略)

医療機関での保険外での特殊療法(不適切な結果を招いた脱ステロイド療法を含む,皮膚科医,皮膚科医以外によるものかは問わない)(後略)

わかりづらい定義です。要は、悪化したら「不適切」ということのようです。そうであれば、単純に「悪化例で用いられていた治療法」とすればよいだけであって、「不適切」という言葉は必要ありません。想像するに、日本皮膚科学会が排除したい治療法に「不適切」というレッテルを貼りたいがための調査ではないでしょうか。

ただ、ここで注意してみてみると、調査対象は「医療機関での保険外での特殊療法」です。そのため、一般的な脱ステロイド療法を行っている病院・診療所は、保険診療を行っているので、脱ステロイド療法はここでいう「不適切治療」にはあたらないことになります。

 

アトピービジネス

不適切治療に近い概念としては、「アトピービジネス」があると思います。では、脱ステロイド療法はアトピービジネスなのでしょうか。アトピービジネスの定義を確認してみます。

アトピービジネスは「アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険診療外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追求する経済活動」と定義され更には「医療機関によって後援、実践されるものも含まれる」ことが追加される。*2

こちらも、一般的な脱ステロイド療法を行っている病院・診療所は、保険診療を行っていますし、営利を追求していないので*3、脱ステロイド療法は「アトピービジネス」にはあたらないことになります。

 

治療放棄行為

「不適切治療」も「アトピービジネス」も、脱ステロイドの排除には効果をあげていないようにみえます。

このほか、脱ステロイドは治療放棄行為である、という脱ステロイドを真っ向から批判する言い回しを目にすることがあります。これは、おそらく次の記述が出典であると思われます。

脱ステロイド療法とは従来の皮膚科の治療をまったく無視した挑戦的な治療法であり,「療法」に値しない治療放棄行為であるといってもよい。*4

放棄というイメージの悪い言葉を使って、脱ステロイド療法に悪いイメージを与えようとしているように見受けられます。

私は、脱ステロイドは、治療を放棄しているのではなくて、免疫抑制剤による薬物治療を放棄しているのだと理解しています。放棄という言葉も正しく言い得ておらず、「可能な限り使わない」ということです。したがって、脱ステロイド療法は「治療放棄行為」にはあたらないと思います。

いずれにせよ、「療法」に値しようがしまいが、「放棄」であろうがあるまいが、治ればそれで良いのです。

 

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脱ステロイドの弊害?

以上のような、脱ステロイド療法(以下、病院・診療所において保険診療内で行われるものを指します)には弊害があるとする批判においては、脱ステロイドによって症状が極度に悪化したという事実が論拠として持ち出されます。

しかし、短期的には、脱ステロイド療法によって、多くの例で初期にリバウンド現象が生じるため、症状が極度に悪化することは既に明らかな事実です。リバウンドはステロイド外用薬等の長期連用等により引き起こされます。したがって、短期的な悪化は、脱ステロイド療法の弊害ではなく、ステロイド外用薬等の弊害です。

次に、脱ステロイドをしても、なかなか良くならない例があります。短期的には、リバウンドを経て一時改善しても寛解には至らず、重度の悪化を繰り返しながら重症のまま出口の見えない生活が続くというものです。こうした症例をみて、標準治療を受けないで脱ステをするからこんなことになるのだ、という意見をもつ医師が現れます。そして、ステロイド治療を再開した患者からは、脱ステをしてひどい目に遭ったという体験談が語られます。

この長期的な例も、脱ステロイド療法の弊害ではなく、ステロイド外用薬等の弊害だと考えます。脱ステロイドを行う人は100%ステロイド外用薬の使用経験があります。そして、脱ステロイド療法は、アトピー性皮膚炎の大きな悪化因子のひとつであるステロイド外用薬等の副作用について、その悪化因子を取り除くための有効な手段のひとつです。

脱ステをしても改善しなかった例というのは、脱ステロイドという相当に有効な手段をもってしても、ステロイド外用薬等の副作用を取り除くことができなかった症例であると思います。

あまりに長期・大量・習慣的にステロイド外用薬を使用してきたために、外部から副腎皮質ホルモンを供給しなければ正常な皮膚を保つことができなくなっているのだと考えられます。脱ステによって悪化したのではなく、ステロイド外用薬の副作用が顕在化したということです。

以上より、脱ステロイド療法には弊害があるという主張はお門違いに思われます。脱ステロイド療法を批判する前に、脱ステロイド療法を生じさせたステロイド療法について目を向ける必要があると思います。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

*1:竹原和彦,飯塚一,伊藤雅章,玉置邦彦,川島眞,塩原哲夫,瀧川雅浩,宮地良樹,橋本公二,金子史男,吉川邦彦, アトピー性皮膚炎における不適切治療による健康被害の実態調査〔最終報告〕, 日本皮膚科学会雑誌, 110(12), 2060-2062, 2000

*2:竹原和彦 (2005).「間違いだらけのアトピー治療」新潮社

*3:医療法第7条第6項

*4:越後岳士, 脱ステロイド療法の問題点, からだの科学, 233, 55-59, 2003