読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

私がステロイドを忌避する理由

脱ステロイド

ステロイド忌避

主に皮膚科や小児科での診療をめぐる世界において「ステロイド忌避」という言葉があります。患者がステロイドによる治療を忌み避けるという意味合いです。英語では、steroid phobia(ステロイドフォビア)と表現されます。

皮膚科医にとっては、主要な治療手段のひとつであるステロイドを患者から拒否されてしまうので、ステロイド忌避の患者は大変に困った存在です。
一方の患者にとっては、その多くが過去にステロイドによる副作用を経験しているので、ステロイドは可能なかぎり使いたくないと考えています。
そして両者は、お互いに相手について、ステロイドに関して無知な人間であると考えているようです。

私もステロイド忌避の患者です。なぜなら、リバウンドを経験するなど、ステロイドの長期使用による副作用によって皮膚症状が非常に悪化したからです。そして、副作用の事実を知らない、あるいは、認めようとしない皮膚科医を、無知な皮膚科医とみなしています。ただし、これは個人的な問題であって、他のアトピー患者にステロイド忌避を勧めたいなどとは考えていません。

私の場合、副作用を経験したからステロイドを忌避する、というのは全くその通りなのですが、いま一度、なぜ忌避するのか、その理由についてもう少しだけ考えを深めてみたいと思います。

 

ステロイド忌避患者の診察風景

かつて私は、アトピー性皮膚炎の治療とは関係のない病気の検査のため、比較的大きな病院の皮膚科で診察を受けたことがあります。3つの病院を訪ねましたが、各病院の3人の皮膚科医はみな、私の皮膚症状を見て、ステロイドによるアトピー性皮膚炎の治療を勧めてきました。

3人の共通した意見は、

  • 症状を診るかぎり、治療を受けるべきである。
  • 治療としては、まずはステロイドを使用して、症状を緩和させるべき。

というものでした。

私が副作用の経験から、ステロイドを使いたくないと伝えると、

  • きちんとした使い方をすれば副作用の問題はない。

という答えが返ってきました。

一人の医師は、見たところ若く、臨床を始めてからまだ日は浅いようにみえました。その医師は、ステロイドの有用性、また、タクロリムスの有用性を説いてくれました。さらに、重症例には、シクロスポリン内服という手段もあると、製薬会社のパンフレットなどを用いながら説明してくれました。そして、私が経験した副作用は、ステロイドとは無関係であるといいました。

私は、なんだかこの医師がかわいそうになってきました。教科書やガイドライン、パンフレットに書かれているような一般的な知識を丁寧に説明してくれるのです。臨床経験が少ないから仕方のないことかもしれませんが、本当に自分の話していることだけが正しいと考えているなら不幸なことです。そして、その程度の説明では、私の考え方を変えることはできません。

結局、私は、3人の皮膚科医からの治療の提案を断りました。多くのステロイド忌避の方々も、私と似たような診察を受け、治療を拒否した経験をもっていると思います。

 

 f:id:atopysan:20150822230311j:plain

 

医師のプレゼン不足

なぜ、私はステロイドによる治療を拒否したのでしょうか。ここで、唐突ですが、ステロイドによる治療の提案を、事業計画のプレゼンテーションになぞらえて考えてみます。プレゼンターは皮膚科医、ディシジョンメーカー(決裁者)は患者です。

皮膚科医がプレゼンに最低限盛り込むべき要素は次のようなものと考えます。

  • 目的は、ステロイド忌避患者にステロイド治療を受けさせること。
  • そのためには、ステロイド忌避に至った理由を分析すること。
  • 分析した理由をもとに、患者の誤解を解くこと。
  • そのうえで、ステロイド治療による成功例を示すこと

しかし、ほとんどの場合、ステロイド忌避に至った理由を分析することをせずに、すなわち患者の話を聞かずに、ステロイドは安全だから使いましょう、という感情的なプレゼンに終始していると思います。これでは患者の心は動かせません。

成功例では、ステロイド忌避の患者がステロイドを使ってみたら劇的に良くなったという類の例が持ち出されるわけですが、大量投与を継続すれば良くなるのは当たり前ですし、その患者は副作用を起こしにくい、ステロイドの長期・間欠的使用に耐えうるタイプの患者であることをステロイド忌避の患者は理解しているので、説得されることは少ないと思います。

ここでの問題は、ステロイドによる副作用を起こしやすい患者が少なからず存在するということを皮膚科医側が理解していないことです。そのため、副作用は患者の誤使用に基づくものと勘違いをして、ステロイド忌避の本当の理由を真剣に検証しようとしないのです。

多くの場合、ステロイド忌避に至る理由は、副作用の経験であると推測されます。したがって、患者からステロイド治療を拒否されないためには、可能な限り副作用を起こさないことを皮膚科医側が保証する必要があります。

ここで、ステロイドは安全性と有効性が科学的に立証されている薬である、といった曖昧な表現は無意味です。プレゼンであれば、ここは絶対的に詳細なデータが必要とされるところです。たとえば、副作用の種類と頻度、その重症度、副作用が生じた場合の医師側の対応、後遺症の可能性、などです。

 

一方、プレゼンに際して、決裁者の立場からは、ステロイド治療が投資するに値するかどうかを判断するため、次のような情報を知りたいと考えるでしょう。

  1. ステロイド治療を採用した場合の成功率。エビデンスはあるか。
  2. 副作用を起こさない適切な使い方の具体例。マニュアルはあるか。
  3. ステロイドからの離脱方法と離脱までの期間。離脱は絶対条件。
  4. マニュアル通りに実行して副作用等の問題が起こった場合の補償額。

しかし、残念ながら、皮膚科医側から自発的にこうした情報がプレゼンされることはほとんどないと思います。とりあえず治療を開始して、後は症状をみながら決めていきましょう、という話になりがちです。

最も重要なのは、1.の成功率(投資回収率)ですが、これに関してのエビデンス(具体的な数字やデータ)はありません。この成功率が示されないという点だけでも、ステロイド治療は、いくらプレゼンしても無理筋のように感じます。

2.3.も必要な情報ですが、診察で患者がこの話を持ち出すと、露骨に機嫌を損ねる皮膚科医が多いと思います。診察時間が短いからか、答えを持ち合わせていないからか、プライドを傷つけられたと感じるのか、とにかくコミュニケーションが成立しなくなってしまうのです。サービスを提供する側がサービスについて説明しないことが医療の世界では珍しくないようです。プレゼンであれば、さらにステロイド使用マニュアルや治療計画書が用意されていると評価が高まるでしょう。

個人的には、4.があると、医師のプレゼンに対して前向きになる可能性が高いです。つまり、治ります、良くなります、と断言するのであれば、うまくいかなかった場合には医師は責任を取ってくださいよ、ということです。治療を始める前に、責任の所在を明確にし、損害賠償額を予定しておくなど、事業計画における保険や損害賠償契約などのようなリスク回避手段が用意されているなら、治療を受けるリスクもとりやすいということです。

何を大げさな、と思われるかもしれませんが、訴訟でも起こさない限り、泣き寝入りをするのはいつも患者で、医師は治療に失敗しても責任を取らずに知らん顔という現状が、医師に対する不信を生んでいる一因であるように思います。責任を取らなくてよいから、危険性のある薬も容易に処方してしまうのではないかとも考えられます。

 

以上を総合的に勘案すると、少なくとも副作用経験をもつ私が決裁者であるなら、ステロイド治療は決して採用しないでしょう。

ここまで、事業計画におけるプレゼンテーションになぞらえてきました。その理由は、ステロイド治療に関する医師からの提案というものは、仮に、常に厳しい競争に晒されている事業会社ほどに市場原理が働く場において検討されるならば、全く検討に値しないであろうことを確認したかったからです。投資に対する回収可能性が不確実にすぎるのです。

ステロイド忌避の患者にステロイド治療のみを提案することは、合理的ではないと思います。副作用の影響が大きい免疫抑制剤を使用しない代替案が求められているのではないでしょうか。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)