アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

脱ステロイド後の経過

脱ステロイドに踏み切った後、症状はどのような経過をたどるのでしょうか。とりわけ、リバウンド後にどのような経過をたどるのかは、患者にとって非常に関心の高い問題だと思います。

今回は2つの国内論文を参照しつつ見ていきたいと思います。

1.1993年の玉置昭治先生らによる報告*1

対象:ステロイド軟膏を離脱後に入院する程の悪化をきたした26例。16歳以上で最多は20代。ステロイド使用期間は1年未満~20年までさまざま。

方法:ステロイド軟膏の完全な中止。抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、非ステロイド軟膏、亜鉛華軟膏、抗生物質は使用。

症例の経過を示したのが下図です。中止後1か月から3~4週間のグレーで示されているのは入院期間(admission)です。

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大部分の症例はステロイド軟膏で治療していた時には皮疹がなかった所まで紅斑、浮腫を伴うようになる。酒さ様皮膚炎の場合とは比較にならない程増悪する例が多い。しかし、入院3週間~4週間程で落ち着いて退院している。退院後も一気に悪くなったり、また、良くなったりを繰り返しながら、徐々に安定して来る。大きな増悪が無くなり軽快するには6か月から1年はかかるようである。

この報告ではすべての症例が入院治療を受けて、3~4週間で軽快し退院しています。ただし、入院中は良いとしても、退院後の経過が安定しないようです。また、26症例中4例がステロイド剤の使用を再開しています。

 

2.1995年の松村剛一先生らによる報告*2

対象:成人型アトピー性皮膚炎患者85例(入院45例、外来40例)

方法:抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、漢方薬などを投与してステロイドを漸減、中止。中止後の外用剤は白色ワセリン、亜鉛華軟膏が中心。29例でPUVA療法併用。

この報告によれば、脱ステロイドに伴う皮疹の変化は次の3期に分類できるとしています。

  1. 皮疹拡大および浮腫期
    紅斑部に強い浮腫・滲出液、皮疹は全身に拡大傾向を示す(リバウンド現象)。睡眠障害、発汗異常、生理不順、発熱。数週~3か月以内。
  2. 皮疹乾燥期
    皮疹は強い乾燥傾向を示す。掻痒は非常に強くなる。
  3. 紅斑改善期
    顔面の紅斑は最初に改善することが多く、頸部、前腕から手背にかけて、腋窩から両背部にかけては改善が遅れる傾向にある。皮疹の改善に伴い頸部の色素沈着も軽快する。

参考までに、私の場合は、1→3→2 でした。滲出液が止まった後、顔面を含む全身の浮腫・紅斑が茶色に落ち着き、その後に、「すさまじい」皮膚の乾燥が起こりました。皮膚が突っ張って首を回せない、腕が伸ばせない、といったもので、痛みが強かった記憶があります。

 

そして、症状の経過を示したのが下図で、4つの型に分類されています。

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脱ステロイドによる皮疹の変化の大きな特徴は、顔面の皮疹の改善が認められることである.顔面の場合、ほぼ正常化する場合と軽度の淡い乾燥した紅斑が残る場合があるが、一過性潮紅発作はほぼ消失する.さらに体幹の浮腫性紅斑も消失し、皮疹の悪化の波が非常に小さくなる傾向がある.しかし脱ステロイドにより皮疹が改善する期間は、多くの症例で3カ月~1年を必要とし、中には2年後にやっと改善する症例もある.

 

Ⅰ~Ⅳ型の経過期間の違いについては、次のように考察されています。

  • リバウンド期間が6カ月未満の症例の特徴(ⅠとⅡ型)
    1)ステロイド中止前の皮疹が軽症
    2)顔面、上胸部の皮疹が中心で、体幹、四肢に皮疹が少ない
    3)ステロイド外用剤の使用が短期少量
    4)悪化要因、心理的問題が少ない

  • リバウンド期間が6カ月以上の症例の特徴(ⅢとⅣ型)
    1)ステロイド中止前の皮疹が重症
    2)皮疹が全身に分布
    3)ステロイド外用剤の使用が長期大量
    4)暗紅色から灰褐色の色素沈着を示す皮疹(改善に1年以上)
    5)悪化要因、心理的問題が大きい

こちらの報告では、1.の報告でみられなかった、改善に2年を要した症例があります。また、暗紅色から灰褐色の色素沈着を示す皮疹がある場合は、改善に1年以上かかるとも指摘されています。当然のようですが、ステロイド外用剤の使用が長期大量であると、経過も長引くとのことです。

他の論文では、ステロイド外用薬の使用期間が長いほどリバウンドの重症度が大きいことも指摘されています。長期連用については慎重になるべきと思います。

最後に、上記の2つの論文は、タクロリムス軟膏が承認される前に発表されたものです。現在ではタクロリムス軟膏使用例も増え、状況はより複雑になっていると思われます。

 

なお、上記論文による脱ステロイドの改善率については、過去の記事に記しました。

 (当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

*1:玉置昭治,大橋明子,石田としこ,中村麻紀「成人型アトピー性皮膚炎の脱ステロイド軟膏療法」日皮アレルギー・第1巻・第1号・1993年, 230-234

*2:松村剛一,藤崎景子,貝瀬明「成人型アトピー性皮膚炎の脱ステロイド療法」臨床皮膚科 49(5増): 115-120,1995