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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイド外用薬の副作用(6:赤鬼様顔貌)

重症成人型アトピー性皮膚炎患者にみられる、赤く腫れ上がった赤鬼のような顔面の難治性紅斑を「赤鬼様顔貌」と呼ぶことがあります。

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ステロイド外用薬の副作用のひとつに、酒皶様皮膚炎があることは過去の記事に記しました。ここでは、赤鬼様顔貌を、酒皶様皮膚炎よりも重症度が高いものと便宜上分類したうえで話を進めます。

なぜ、赤鬼様顔貌について取り上げるかといえば、街中や病院などで赤鬼様顔貌の方を見かけると、ステロイド外用薬の恐ろしさを感じずにはいられないからです。

赤鬼様顔貌はステロイド外用薬が原因ではないと主張する皮膚科医もいるかもしれません。実際、日本皮膚科学会のガイドライン(2009)では、顔面の紅斑性病変の多くはステロイド外用薬の副作用ではないと弁明しています。

近年しばしばみられる成人患者の顔面の紅斑性病変の多くは,掻破などを含むステロイド外用薬以外の要因に起因するものではある

 

しかし、標準治療を推進するキャンペーンが始まる前の、今からおよそ20年前の記述などを見ると、ステロイド外用薬と赤鬼様顔貌との関連が示唆されています。

例えば、次に引用するのは、1995年の報告です。外来を訪れる成人型アトピー性皮膚炎患者に、蒼みを帯びた顔ではなく、赤ら顔の患者が目立ってきているというものです。少し長いのですが一部引用します。

22歳、男の赤ら顔の症例をお示しします。まず頭に入れておいていただきたいのは、幼小児期から発症した長いアトピー歴があること、そしてなおかつ大事なことは、長期にわたるステロイドの外用歴があることです。(中略)

昔は、顔色からしますとむしろ蒼みを帯びた顔というのがアトピーの特徴と教わりましたが、現在外来でみておりますと、成人型アトピー性皮膚炎では顔面の潮紅病変が目立ちます。それでは、赤ら顔の原因について考えてみたいと思います。(中略)

まずステロイドの使用量の問題がございます。欧米とどこが違うかというと、ステロイドの管理に違いがございます。日本のように何科の医者でもステロイドを処方するという対応ではございません。そうするところから考えますと、赤ら顔の発症にはどうもステロイドが大きく絡んでいるだろうということがいえると思います。(中略)

皆様にお願いしておきたいことは、特に成人型の場合、顔面へのステロイドの不用意な外用というのは赤ら顔、赤鬼様顔貌という非常に難治な病態を来たしやすいものですから、私たちはこれについて一生懸命キャンペーンしておりますし、皆様にもご承知おき願いたいと思って紹介させていただきました。*1

このように、当時は、「顔面へのステロイドの不用意な外用には気を付けよう」というキャンペーンが行われていたわけです。

また、次に引用するのは、1993年の報告です。著者は、ガイドラインの作成委員にも名を連ねている、大阪大学皮膚科・片山一朗教授です。酒皶様皮膚炎と色素沈着について、ステロイドの使用量との関連を示唆しています。

成人型AD(引用者注:アトピー性皮膚炎)で問題となっている皮膚症状としては、顔面の酒皶様の皮膚炎頸部の色素沈着が挙げられる。前者は顔面全体が著明に発赤し、赤鬼様の顔貌を呈する。急性期には滲出液が著明となり、汚い黄褐色の痂皮を付着する。後者の皮疹はその形態により、ポイキロデルマ様皮疹、dirty neck などと呼ばれる。両者とも、ADとしての病歴が長い症例に見られ、ステロイド外用の使用量に比例して重症化する傾向が見られる。これらの所見は、ステロイド外用剤の長期使用により生じるとされる弾力線維の変性によって起こるものと考えられている。*2

この記述が示唆するところとは対照的に、現在のガイドラインでは、ステロイド外用薬の副作用として、酒皶様皮膚炎および色素沈着は認められていません。

 

なぜ、皮膚科医は変節したのでしょうか。

この数十年に起こった事柄から考えてみます。

  1. ステロイド外用薬を使用する患者および副作用が生じた患者の増加
  2. ステロイド忌避および脱ステロイド患者の増加
  3. マスコミによるステロイド外用薬の危険性の指摘
  4. 診療現場の皮膚科医の混乱
  5. 2.を減らしたい日本皮膚科学会による脱ステロイドバッシング
  6. 3.を逆恨みした日本皮膚科学会によるマスコミバッシング
  7. 2.を減らしたい日本皮膚科学会による標準治療の推進(マスコミを取り込んだステロイドは安全キャンペーン)

こうして挙げてみると、先の問いの答えは、7.日本皮膚科学会が標準治療の推進をしているから、ということになると思います。組織の方針に従順なのです。

思うに、1.2.3.4.は当然の流れであるわけで、その後にきちんとした対策を講じるべきでした。現実として、5.6.7.のような経過をたどっているところに、日本皮膚科学会の体質が表れているような気がします。 

アトピー性皮膚炎が悪化したり、治らないのは、ステロイド外用薬のせいではない、まして皮膚科医のせいではないという、組織をあげたキャンペーンは今も続いています。

それはそれとして、赤鬼様顔貌が生じた責任は、いったい誰がとることになるのでしょうか。

(引用部分の赤字による強調は当サイトによります)

*1:飯島 正文「成人型アトピー性皮膚炎をめぐる最近の話題」―蒼白顔面から赤鬼様へ― 昭和医学会雑誌 Vol. 55 (1995) No. 6 P 664-670

*2:片山一朗「臨床でよくみる皮膚疾患とその対応 アトピー性皮膚炎」CLINICIAN no.420 vol.40(1993) P 412-416