読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

子どものアトピーにピメクロリムス?

メディア情報

MEDLEYニュースというサイトに、「子どものアトピー治療薬、ステロイド以外も効いた」(2015年5月29日)という記事がありました。

記事は、アイスランド大学のBardur Sigurgeirsson, MD, PhDらの論文*1を紹介したものです。論文は、カルシニューリン阻害外用薬であるピメクロリムス(商品名:エリデル)がステロイド外用薬と同程度に有効であるとするもので、要約すると次の通りです。

  1. 2,418人の乳児のうち、1,205人をピメクロリムス群、1,213人をコルチコステロイド外用薬群に分け、5年間治療した。
  2. 5年後、両群で、全身の症状に対しては85%超が、顔の症状に対しては95%が、治療成功であった。
  3. 小児のアトピー性皮膚炎に対して、ピメクロリムスまたはコルチコステロイド外用薬による長期管理は、免疫系に何の影響も与えることなく、安全であった。

この論文のように、ある薬に有効性が認められた、という趣旨の論文は数限りなくあるので、普段あまり注意を払いません。しかし、この記事で、私がとても気になったのは、3.の「長期管理は、免疫系に何の影響も与えることなく、安全であった」という部分です。

本当でしょうか。原著を確認してみます。

The results of the Petite Study show for the first time that as-needed first-line treatment with PIM or TCSs has no safety concerns and no impact on the maturation of the developing immune system.

研究結果は、頓用の第一選択薬としてピメクロリムスあるいはコルチコステロイド外用薬を用いた治療が、安全性に対する懸念がなく、発達中の免疫システムの成熟にも影響を与えないことを初めて示した。

本当に書いてありました。免疫システムについては、複数の尺度で評価されていました。しかし、なぜここまで言い切れるのか、腑に落ちません。悪いことがほぼ書いてありません。

さらによく読んでみると、腑に落ちました。この研究は、ノバルティス社などから資金提供を受けた産学連携の研究だったのです。エリデル(ピメクロリムス)はノバルティス社の薬です。論文には、きちんと利益相反の可能性が開示されていました。

したがって、この論文を読むときは、エリデルを第一選択薬にしたい製薬会社の意図を差し引いて読む必要があります。また、この論文のみを引用して記事を書くことは、読者に誤解を招く可能性があるように思います。

f:id:atopysan:20150702103219p:plain


いずれにせよ、この論文をとりあげた先のMEDLEYの記事を読むと、ピメクロリムス礼賛の印象を強く受けるわけです。ステロイドに代わり得るし、副作用もない。赤ちゃんがクリームで治療されている写真も載っています。そして、次のように締めくくっています。

ピメクロリムスは日本では承認されていませんが、近い種類の免疫抑制薬がアトピー性皮膚炎に処方されることがあります。使っている薬の効果や副作用が気になる方は、医師や薬剤師に相談してみるとよいでしょう。

赤ちゃんの写真を載せる意図がわからないのですが、赤ちゃんの湿疹に悩んでいるお母さんならば、次のどちらかの行動をとるかもしれません。

  1. 実際に医師や薬剤師に相談する。
  2. 自らピメクロリムスを購入する。

1.は、特に問題ないと思います。近い種類の免疫抑制薬とは、ピメクロリムスと同じカルシニューリン阻害剤であるタクロリムス外用薬(商品名:プロトピック軟膏)のことですから、2歳未満の場合は処方されないはずです。赤ちゃんへの安全性が確立していないからです。医師に諭されて終わると思います。

2.が、問題があるような気がします。日本で承認されていない医薬品でも、最近はインターネットなどで比較的容易に個人輸入が可能です。この場合、医師からの注意喚起を受けられません。

エリデルについては、日本では国内未承認薬であり、アメリカではFDA(食品医薬品局)が、主として発がん性への懸念から2歳未満の小児に使用しないよう警告しています。

とはいえ、欧米ではエリデルは皮膚科でよく処方されているようです。アメリカFDAの警告は慎重すぎるという指摘もあります。アメリカ皮膚科学会は、カルシニューリン阻害外用薬について、中等症から重症患者にタクロリムスを、軽症から中等症患者にピメクロリムスを推奨しています。

ピメクロリムスはアトピー性皮膚炎に対して有効な薬であるとされています。ただし、2歳未満の小児に対する使用は、日米の政府が推奨していないことにも留意すべきと思います。

(引用部分の翻訳は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:Pediatrics. 2015 Apr;135(4):597-606.
Safety and efficacy of pimecrolimus in atopic dermatitis: a 5-year randomized trial.