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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

グリチルリチン酸の作用と副作用

グリチルリチン酸はステロイドと同じ?

グリチルリチン酸について、一部で話題になっているようです。

日本オムバスの支援を受けて運営されている「あとぴナビ」というサイトで、「知っておきたい甘草・グリチルリチン酸の危険な話」という記事が掲載されたことがきっかけになっていると思われます。

あとぴナビの記事では、おおよそ次のことを指摘しています。

  • グリチルリチン酸(甘草)は、鉱質コルチコイドと同様の働きを行う
  • グリチルリチン酸は、ステロイド剤と同様に免疫抑制作用によって、かゆみや炎症に効果をもたらす
  • グリチルリチン酸を長期間連用することで、ステロイド剤と同じようなリバウンド症状を引き起こす危険がある

したがって、グリチルリチン酸や甘草が、現在使用しているスキンケアアイテムに配合されていないかどうか、成分表示を確認することを勧めています。

ネット上では、こうしたあとぴナビの主張とは反対に、おもに化粧品を販売する側の立場から、「あまり心配いらないのではないか」という指摘が散見されます。

そこで、個人的にも関心のあるテーマなので、調べてみました。

グリチルリチン酸等による偽アルドステロン症

グリチルリチン酸は甘草由来の物質です。

甘草は、洋の東西を問わず、はるか昔から利用されてきた馴染みの深い薬であり、漢方生薬製剤の一成分として広く用いられています。

グリチルリチン酸および甘草は、抗アレルギー剤、肝疾患用剤、胃腸薬、鎮咳去痰薬などの医薬品に配合されており、また、甘みをもつため甘味料としても使用されています。

一方、このグリチルリチン酸と甘草を含有する医薬品を長期大量使用することにより、偽アルドステロン症が発現することが報告されています。

偽アルドステロン症とは、次のような症状をいいます。

血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず、高血圧、むくみ、カリウム喪失などの症状があらわれること。*1

この報告を受けて、昭和53年、厚生労働省は、「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」(薬発第一五八号)にて、次のように通知しています(一部抜粋要約)。

  • 医薬品(経口剤、注射剤)については、一日最大配合量が、グリチルリチン酸として40mg以上、甘草として1g以上の場合、使用上の注意事項を追加記載した文書を添付して販売すること
  • 一般用医薬品(経口剤)については、グリチルリチン酸として200mg、甘草として5gを一日最大配合量とするものに製造承認を与えること

グリチルリチン酸のステロイド様作用

グリチルリチン酸等の副作用のひとつ、偽アルドステロン症はなぜ起こるのでしょうか。

グリチルレチン酸により 11β-HSD2 の活性が抑制され、過剰となったコルチゾールがミネラルコルチコイド受容体を介して、ミネラルコルチコイド作用を発揮することにより生じることが明らかとなっている。*2

副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)のひとつであるアルドステロンがもつ、ミネラルコルチコイド作用が発揮されるからだとしています。なお、グリチルレチン酸は、グリチルリチン酸を加水分解したものです。

このように、一般的にグリチルリチン酸の副作用といえば、偽アルドステロン症があげられます。しかし、あとぴナビでは、グリチルリチン酸の糖質コルチコイド作用(抗炎症作用・免疫抑制作用)を問題にしています。
 

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では、グリチルリチン酸には、糖質コルチコイドのような作用はあるのでしょうか。 

甘草の成分であるグリチルリチンは、糖質コルチコイド様の作用をもつ。*3

グリチルリチン酸二カリウムの作用本体であるグリチルリチン酸は、化学構造がステロイド性抗炎症成分と類似しているところにより、抗炎症作用を示すと考えられている。*4

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教科書等には、糖質コルチコイド様の作用をもつとされています。

先ほど述べたように、グリチルリチン酸が11β-HSD2 の活性を抑制してコルチゾールが過剰になることからも、抗炎症作用を増強させることが理解できます。

また、グリチルリチン酸を主成分とする注射剤に「強力ネオミノファーゲンシー」があります。経口剤としては「グリチロン」があります。

各インタビューフォームによれば、効能として、肝機能異常の改善のほか、湿疹・皮膚炎などが謳われています。薬理作用は次の通りです。

  1. 抗炎症作用
  2. 免疫調節作用
  3. 実験的肝細胞障害抑制作用
  4. 肝細胞増殖促進作用
  5. ウイルス増殖抑制・不活化作用

以上を勘案すると、グリチルリチン酸は、糖質コルチコイド様作用をもつと理解してよさそうです。ただし、ここまでは注射剤と経口剤を前提とした話です。

 

では、グリチルリチン酸を外用した場合に、糖質コルチコイド様作用はあるのでしょうか。つまり、ステロイド外用薬のような作用はあるのでしょうか。

この点、グリチルリチン酸の抗炎症作用を皮膚外用剤に応用した薬に「デルマクリンA軟膏」「デルマクリンクリーム」「ハイデルマートクリーム」があります。

インタビューフォームによれば、薬理作用は次の通りです。

  1. 抗炎症作用
  2. 肥満細胞脱顆粒抑制作用
  3. ホスホリパーゼA2阻害作用
  4. 鎮痒作用

以上の薬理作用があるとすれば、外用剤としても、グリチルリチン酸はステロイド様作用をもつといえます。

グリチルリチン酸の副作用

グリチルリチン酸の副作用のひとつに偽アルドステロン症があることは前述の通りです。これは、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の副作用です。

一方、視床下部-下垂体-副腎系の副作用の報告もあります。グリチルリチンを大量に経口摂取した場合に、血中コルチゾール濃度が低下し、副腎機能が抑制されたというものです。

グリチルリチン大量負荷に伴い、血中コルチゾール濃度の低下、尿中17-OHCS排泄量の減少と共に血中ACTH濃度も低値を示し、この下垂体-副腎皮質系が抑制された時期に行ったラピッドACTH試験で、副腎が正常な反応を示したことは、グリチルレチン酸が視床下部-下垂体レベルで副腎皮質機能を抑制していることを示唆する。*5

以上をまとめると、次のようになります。

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ただし、これらの副作用は、一時あるいは長期に、大量に経口(静注)摂取した場合にみられるものとされます。

では、あとぴナビが指摘するように、グリチルリチン酸が配合された化粧水などを長期外用した場合に、リバウンド症状の危険はあるのでしょうか。

私が調べたところ、こちらに関する報告は見つかりませんでした。ただし、あとぴナビには多くのケースが報告されているようです。

 

以下は、個人的見解です。

グリチルリチン酸を主成分とする医薬品を使用する人は稀でしょうし、一般的に関心が高いのは、多くの人々が使用している、グリチルリチン酸が配合された薬用化粧品(医薬部外品)についてだと思います。

薬用化粧水に有効成分として配合されるグリチルリチン酸ジカリウムの量は厚生労働省によって管理されており、大量には配合されていません。また、グリチルリチン酸のもつ作用は穏やかなものとされます。したがって、過剰に危険視する必要はないように思います。

一方で、グリチルリチン酸にステロイド様の作用があることも明らかです。化粧水は長期連用することが通常なので、日々皮膚の状態を確認することは必要だと思います。また、健常者が使用する場合と皮膚バリア機能が障害されたアトピー性皮膚炎患者が使用する場合とでは、効果が異なるかもしれません。副作用は起こらないと決めつけて、何の注意も払わないことも危険な態度であるように思います。

ところで、私も、過去にグリチルレチン酸配合の鎮痒消炎剤を使用していたことがあります。脱ステ・脱保湿後は使用していません。使用当時は頻繁に悪化を繰り返していたので、その悪化がグリチルリチン酸によるものだったのかは明らかではありません(ステロイド外用薬による悪化は明らかでした)。

ただ、あとぴナビが指摘するように、グリチルリチン酸に限らず、現在自分が使用しているスキンケアアイテムにどのような成分が配合されているかを確認することは、とても大切なことだと思います。

*1:厚生労働省(平成18年)「重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症」

*2:厚生労働省(平成18年)「重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症」

*3:金子周司編(2009)『薬理学』化学同人

*4:小野寺憲治、松田佳和 編集(2010)『登録販売者標準テキスト』薬事日報社

*5:岡崎昭太郎,松井信夫,新実光朗(1984).下垂体-副腎皮質系の抑制が認められた偽アルドステロン症の1例, 日本内科学会雑誌 Vol. 73 No. 5 P 666-670.