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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイド皮膚症

ステロイドの副作用

アトピー性皮膚炎 - Wikipediaのページで、「ステロイド皮膚症」という症状は存在しないという内容の記述がありました。確かに、この言葉自体はあまり使用されていないようですが、症状としては存在します。

当ブログが指摘したところで大した影響力はないのですが、今回はこの「ステロイド皮膚症」について考えてみたいと思います。

Wikipediaの該当部分の記述を読むと、文章の言い回しなどから、医師ではなく非専門家の人による記述と推測されます。

以下、引用は、アトピー性皮膚炎 - Wikipediaから、ステロイド皮膚症についての記述部分です。

医師の中にも、アトピー性皮膚炎の症状がステロイド外用薬の影響によるものだという意見もごく少数ある。

そう考えている医師はいないと思います。当然のことながら、アトピー性皮膚炎の症状と、ステロイド外用薬の影響は、別の現象として分けて考えているでしょう。まず、前提が成り立っていません。

ステロイド外用薬を長期使用し続けることによって副作用が起こると考えた人々の間で、ステロイド外用薬の副作用と彼らが考えた皮膚の症状を指す言葉として「ステロイド皮膚症」という言葉が一部で使われていた[要出典]。

“起こると考えた”のではなく、起こることを観察したのです。臨床的事実として、ステロイド外用薬を長期使用し続けることによって高頻度に副作用は起こります。長期でなくとも、数週間の使用で皮膚萎縮などは起こり得ます。

古くは一部の皮膚科医がこの俗語を用いることもあったようであるが[11]、正式な医学用語ではない。現在では、一般的に皮膚科医が用いることはなく、アトピービジネスの業者や、その治療とされる行為を受ける一部の患者で用いられる俗語である[要出典]。このようなもっともらしい俗語は、患者を混乱させ誤解を招いている。

まず、この一部の皮膚科医のひとりである佐藤健二医師の論文を確認してみます。論文には、

  • 「本論ではステロイド酒皶と酒皶様皮膚炎とをステロイド皮膚炎に含めた」
  • 「ステロイド皮膚症(ステロイド皮膚炎,ステロイド痤瘡の総称として本論において使用する)」

とあり、論文において、ステロイド皮膚症という語を便宜的に定義づけています。図にすると、次のようになります。

f:id:atopysan:20150615234831j:plain

引用したWikipediaの記述にある“正式な医学用語”の定義が不明なのですが、上記の語のうち、「酒皶様皮膚炎」と、その同義語である「ステロイド酒皶」、そして「ステロイド痤瘡」の3つの語は、医学大辞典に掲載されています。医学用語として認識されており、俗語ではありません。

確かに「ステロイド皮膚症」という語は、医学用語として認識されていないかもしれませんが、当時の論文において便宜的に3つの語を言い換えたものであり、読み替えれば済む話です。

また、ここで、医学用語であるか、俗語であるかは、大きな問題ではありません。言葉の問題に拘泥することなく、「ステロイド皮膚症」が指し示す、ステロイド外用薬の長期連用によって引き起こされる皮膚症状が現実に存在することに目を向けるべきだからです。

例えば、「尋常性ざ瘡」という、顔面,胸背部の毛包・脂腺系を場とする脂質代謝異常、角化異常、細菌の増殖が複雑に関与する炎症性疾患があります。この「尋常性痤瘡」には、同じ疾患を表す言葉として、「にきび」、「ざ瘡」、「アクネ」、「面皰」などがあります。医学用語としては「尋常性ざ瘡」が用いられ、俗語としては「にきび」が通りがいいでしょう。この場合に、「尋常性ざ瘡」という言葉を聞いたことがないからといって、「にきび」という疾患がない、ということにはなりません。

 

「ステロイド皮膚症」と同じような症状を表す語としては、次の語が考えられます。

  • ステロイド酒さ
  • 酒さ様皮膚炎
  • ステロイド皮膚
  • ステロイド誘発性皮膚症
  • ステロイド誘発性皮膚炎
  • ステロイド依存性皮膚症

英語であれば、次のような表現があります。

  • Steroid withdrawal syndrome
  • Steroid‐induced rosacea
  • Steroid-induced (rosacealike) dermatitis
  • Red burning skin syndrome

先に述べたように、医学用語としては「酒皶様皮膚炎」などがありますが、ステロイドによって引き起こされる点を理解してもらうには「ステロイド誘発性(依存性)」という言葉が頭にある方が適切でしょう。臨床像を適切に表す試みが積み重ねられた結果として、複数の語が混在しているのだと思います。

また、これらの語は、現在、一般的に皮膚科医の間で用いられています。次のような例があります。

  • ステロイド外用薬の添付文書
    ステロイド皮膚」(皮膚萎縮、毛細血管拡張、紫斑など)
    酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎」(ほほ、口囲等の潮紅、丘疹、膿疱、毛細血管拡張など)などの表現で記載されています。
  • 皮膚科の教科書「あたらしい皮膚科学 第2版」
    酒皶様皮膚炎」とともに、その同義語として、
    ステロイド誘発性皮膚炎」が記載されています。

こうした状況を鑑みることなく、ステロイド皮膚症という症状はない、などの記述を目にすると、困惑します。検索エンジンで「アトピー」と検索すると、現時点で、Wikipediaのアトピー性皮膚炎のページが上位に表示されるのです。誤解を持つ人が増えてしまうように思います。

 

個人的には、こうした場面にも、日本皮膚科学会による標準治療推進の影響が表れていると感じます。ステロイド外用薬は安全であり適切に使用すれば問題ないというメッセージが、極端に受け止められ、ステロイドの副作用による皮膚症は存在しない、と誤って解釈してしまう人を生み出しているからです。

日本皮膚科学会には、ステロイド外用薬の副作用に係る臨床的事実を踏まえて、こうした症状について病名等を整理したり、病態を定義づけてほしいと思います。言葉による混乱を招かないよう、誠実に対応することが求められていると思います。