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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ω-3脂肪酸とω-6脂肪酸

治療薬

アトピー性皮膚炎の原因?

アトピー性皮膚炎の原因として、「ω-6脂肪酸の過剰な摂取」を指摘されることがあります。また、ω-3脂肪酸が、アトピー性皮膚炎に良いという話をしばしば聞きます。

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たとえば、Wikipediaの「アトピー性皮膚炎」のページには、原因のひとつとして、ω-6脂肪酸であるリノール酸の摂取が挙げられています。

現代では高リノール酸食が蔓延している。必須脂肪酸であるω-6脂肪酸であるリノール酸から体内でアラキドン酸が生成し、この物質から炎症・アレルギー反応と関連した強い生理活性物質であるω-6プロスタグランジン、n-6ロイコトリエン等のオータコイド類が生成される。高リノール酸食用油やそれを素材とする食品が、アレルギー反応と深く関わっていると指摘されている[3][4]。アトピー性皮膚炎患者に対してω-6脂肪酸(主としてリノール酸)の含有量の低い食事を与えたところアトピーに改善効果が認められた[5]。 

Wikipediaにこのようなことを書かれると、困ってしまいます。アトピーについて知識のない人がWikipediaでアトピーのことを調べることは少なくないと思われますし、そこに書いてある情報を鵜呑みにしてしまう可能性があるからです。

たとえば、”高リノール酸食を食べ過ぎているからアトピーなんじゃないか? それならば自業自得だ”と決めつけてしまうかもしれません。

話を戻すと、このWikipediaの記述の根拠となっているのが「九州女子大学紀要第37巻2号」の論文です。ω-6脂肪酸の含有量の低い食事を4ヶ月間アトピー性皮膚炎患者に与えたところ、皮膚症状に改善効果が示されたというものです。

ところが、この研究では、食事を与えると同時に、ワセリンやステロイド外用剤も使用しています。

皮膚の乾燥症状に対しては白色ワセリンによるスキンケアのみを行った。しかしながら、患者の要望に応じてQOLの低下をきたさないよう配慮して、mediumとweakに属するステロイド外用剤を使用した。

投薬期間などはわからないのですが、ステロイド外用剤を使ったのであれば、皮膚症状が改善するのは当然です。食事療法というより薬物療法の結果ではないかと考えられるのです。また、研究は3月から始めて判定時期を7月~8月としています。この時期は、冬に悪化する乾燥タイプのアトピーであれば徐々に改善していく時期にあたります。

このように、この研究にはいろいろと腑に落ちない点があります。

 

さて、アトピーに良いと宣伝されるωー3脂肪酸に関しては、DHAやEPAの巨大なサプリメント市場があるためか、次々と研究が行われ、論文が発表されているようです。

例えば、アトピーの妊婦がn-3脂肪酸を含む魚油を経口摂取することで、子供のアトピー性皮膚炎の重症度が軽減されることが示唆されたとする研究があります。ただし、詳細な追跡調査が必要だと結論しています (PMID:14657879)。

 

一方で、ω-3脂肪酸はアトピーに影響しなかったとする研究も多数あります。

まず、DHAとEPAのサプリメントを摂取しても、乳児のアレルギーを防げなかったとする研究です (PMID: 22945403) 。

二重盲検ランダム化比較試験において、アトピーの高リスクをもつ乳児420人が、誕生から6か月まで、DHA 280gおよびEPA 110mgを含む魚油サプリメントまたは対照薬(オリーブオイル)を毎日摂取した。

グループ間比較は、感作、湿疹、喘息および食物アレルギーを含むアレルギーの発症に違いがないことを明らかにした。

 

次に、ω-3およびω-6脂肪酸は、小児のアトピーと関連がなかったとする研究です (PMID: 17379291) 。

ω-3またはω-6脂肪酸の血漿中濃度は、5歳時において、喘鳴、湿疹、アトピーと関連していなかった。全体的に、血漿中濃度として測定された脂肪酸の暴露、食事摂取量、栄養補助食品の服薬順守は、なんら呼吸性またはアレルギー性疾患のアウトカムと関連していなかった。*1

 

さらに、ω-3とω-6油についてシステマティック・レビューおよびメタアナリシスを行ったところ、有益性を示すエビデンスはなかったとする研究です (PMID: 19392990)。

ω-3サプリメントとプラセボを比較した4つの研究と、ω-6サプリメントとプラセボを比較した2つの研究で、アレルギー感作リスクの減少や有利な免疫学的分析結果に関する明確な有益性を示すエビデンスはなかった

基礎科学や疫学研究のエビデンスに反して、我々のシステマティック・レビューとメタアナリシスは、おそらくω-3とω-6油の補給が感作やアレルギー疾患の一次予防策として重要な役割を果たす見込みはないことを示唆している。*2

 

このように様々な研究が発表されているなか、アメリカ皮膚科学会は、アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインにおいて、n-3(ω-3)脂肪酸のアトピー性皮膚炎への影響については根拠がほとんどないとの判断を示しています。

皮膚における必須脂肪酸の欠乏が、アトピー性皮膚炎に関与するという指摘がなされてきた。魚油は、特にn-3脂肪酸が豊富であること、また、アトピー性皮膚炎の炎症要素を減少させる手段としてn-6脂肪酸と競合することが示唆されている。しかし、どちらもそれを裏付けるデータはほとんどない*3

 

これらの情報から、ω-6脂肪酸やω-3脂肪酸の摂取がアトピー性皮膚炎に与える影響は小さいと私は考えます。

もちろん脂肪酸は必要ですけれども、サプリメントから過剰に摂取することに合理性はなく、欠乏が心配ならより栄養豊富な魚を食べたら良いのではないかと思うのです。

 

私は生まれてきたときから、 ほとんど食生活に変化がありません。基本的には、ご飯とみそ汁、肉や魚、そして野菜を食べてきました。主食はコメの代わりに、ときどきパンやうどんなど小麦粉由来のものに代わることがあるくらいです。外食が続くといったこともなければ、加工食品やジャンクフードばかり食べていたということもありません。摂取する油の量や種類が極端に変化したこともないはずです。

そのようにして30年以上同じような食生活を続けてきた間、皮膚の症状が悪化したときもあれば、寛解していたときもあるのです。ですから、どうしても食生活や、ω-6脂肪酸の影響というものが、アトピー性皮膚炎の原因とは思えないのです。

 

(引用部分の翻訳および赤字による強調表示は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:C Almqvist et al. Omega-3 and omega-6 fatty acid exposure from early life does not affect atopy and asthma at age 5 years. Journal of Allergy and Clinical Immunology Volume 119, Issue 6, June 2007

*2:Anandan C, Nurmatov U, Sheikh A. Omega 3 and 6 oils for primary prevention of allergic disease: systematic review and meta-analysis. Allergy. Volume 64, Issue 6, pages 840–848, June 2009.

*3:Sidbury et al., Guidelines of care for the management of atopic dermatitis. J AM ACAD DERMATOL, December 2014 Volume 71, Issue 6, Pages 1218?1233.