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ステロイド外用薬の副作用(3:皮膚萎縮)

皮膚萎縮はステロイドの代表的な副作用

ステロイド外用薬における副作用の代表ともいえるのが「皮膚萎縮」です。

網羅的にステロイド薬の副作用が記載されている添付文書においてはもちろん、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインにおいても取り上げられています。

局所的副作用のうち,ステロイド痤瘡,ステロイド潮紅,皮膚萎縮,多毛,細菌・真菌・ウイルス性皮膚感染症などは時に生じうるが,中止あるいは適切な処置により回復する.*1

 

皮膚萎縮とは、皮膚が薄くなることを指します。そのため、皮膚の下の血管が透けて見えることがあります。その他、シガレットペーパー様の老人のしわのような外観を示すほか、独特の光沢のある局面を示すこともあるようです。

 

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 ステロイドによる皮膚萎縮
(Hengge et al. Adverse effects of topical glucocorticosteroids. J AM ACAD DERMATOL JANUARY 2006.)

 

似たような名前の副作用として「線状皮膚萎縮症」があります。いわゆる妊娠線がこれに当てはまりますが、ステロイド外用薬の長期使用によっても生じるとされています。この線状皮膚萎縮は不可逆的です。つまり、一度生じると元に戻らないものとされます。

 

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アトピー性皮膚炎に3週間ステロイド外用薬を塗布して生じた皮膚線条
Copyright : © Indian Journal of Dermatology
Indian J Dermatol. 2014 Sep-Oct; 59(5): 456–459.
Attribution-NonCommercial-ShareAlike 3.0 Unported (CC BY-NC-SA 3.0)

 

 

 

皮膚萎縮とはどのような状態か

 

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表皮のケラチノサイトおよび真皮の線維芽細胞が、グルココルチコイドの標的細胞として知られています *2。そのため、ステロイド外用薬の使用は、表皮および真皮に対して次のような影響を及ぼすと考えられています。

 

表皮への影響

ケラチノサイトのサイズ縮小および増殖抑制。

セラミドなど細胞間脂質の合成抑制。

角質層の菲薄化、透過性の亢進、経表皮水分蒸散量(TEWL)の増加。

 

真皮への影響

繊維芽細胞の増殖抑制。

基質タンパク質の合成抑制。

真皮の菲薄化、皮膚の伸張強度および弾力性の低下。

 

ケラチノサイトは、表皮細胞の大部分を占め、主に角化に関与します。線維芽細胞は、真皮において、主に膠原線維や弾性線維などを産出します。

ステロイド外用薬は、主にこの重要な2つの細胞に変化を与えることで、皮膚を薄くし、弾力性を減らし、皮膚バリア機能を低下させるといえます。

 

皮膚萎縮について、より具体的には次の状態が確認されています*3

  • ステロイド萎縮が、6週間にわたるプロピオン酸クロベタゾールの継続的な密封療法によって3名の被験者に生じた。
  • 2週間内に、すべての被験者3名において萎縮が始まり、3週間内に、ステロイド萎縮の明白なサインを示すまでに深まった。全員が、明確な毛細血管拡張、皮膚紋理の消失、透過性の著しい亢進、ループ状毛細血管の減少に伴って生じたシガレットペーパー様の状態を示した。6週間内に、これらのサインは重症化し、表面はわずかに陥没した。
  • 表皮は、3週間内に目に見えて薄くなり、6週間内に著しく薄くなった。そのため、真皮表皮接合部は平坦化した。角質層は劇的に薄くなり、正常なバスケット織り構造とは対照的な角質細胞のかすかな層が現れた。表皮の厚さは59%減少した。
  • 真皮では、基質の損失により膠原線維と弾性線維の間の空間が減少し、より圧縮された乳頭層と網状層が生じた。この圧縮は、膠原線維と弾性線維の双方の再配列を引き起こした。線維芽細胞は、細胞の大部分が核で構成されるほどに細胞質が著しく減少した。

 

皮膚萎縮は治るのか

ステロイド薬を処方され、その使用が相当期間にわたると、皮膚萎縮のリスクが高まります。あるいは、すでにある程度の萎縮が起きているかもしれません。

酒さ様皮膚炎などに比べると地味な副作用なので、初めのうちは気にならないかもしれません。しかし、ステロイド薬からの離脱後など、炎症が落ち着いてくると、皮膚萎縮や色素沈着がどうしても治らない、というケースが少なくないと推測します。

その場合、もっぱらの関心事は、皮膚萎縮は治るのか、ということです。

先に引用したガイドラインでは、

中止あるいは適切な処置により回復する.

とあります。本当でしょうか。

ガイドライン作成委員長の九州大学皮膚科・古江増隆教授は次のように述べています。

「多毛」、「皮膚が少し薄くなる」がもっとも高頻度の副作用になります。これらの局所性副作用は、ステロイド外用量が少なくなると、6ヵ月で50%程度が再び回復することが分かっています。*4

半年経っても、半数程度は治らないとのことです。皮膚線条のように不可逆的なものであるかは明らかではありません。

 

この点、健常者に対するステロイド外用薬の短期使用においては、皮膚萎縮の回復を確認している研究があります*5

有志4名の健康な被験者に、3週間、プロピオン酸クロベタゾールを前腕に外用したところ、コルチコステロイドに誘発された角質層および表皮の菲薄化とケラチノサイトのサイズの縮小を示した。

治療2か月後には、角質層および表皮の厚さ、細胞の形態、色素沈着は、ほぼすべて治療前の状態に戻った

 

一方、長期使用ではどうでしょうか。

私自身、首周りの皮膚に皺が寄っており、萎縮していると思われます。皮膚の状態を正確に確認するには皮膚生検が必要となるので、実際に萎縮しているかどうかはわかりません。ただ、この首周りの皺は、ステロイド使用後に生じたものなので、ステロイドの影響があるものと推測しています。私がステロイドを完全に中止したのは約3年前ですが、なかなか改善の気配はみられません。

また、私の知人には、手と指にステロイド外用薬を約20年塗り続けていた人がいます。その結果、手と指はしわしわになり、まるで老人の手のようになってしまいました。指紋も薄くなり、指紋認識の場面で苦労するそうです。この人はステロイドを完全に中止して約10年経ちますが、まったく治りません。

こうした実例をみると、ステロイドによる皮膚萎縮は、長期使用の場合、不可逆的となる可能性がありそうです。

皮膚萎縮は、見た目を損なうだけでなく、すぐには治りにくい副作用です。ステロイド外用薬を使用するときは、皮膚萎縮が生じないように注意を払う必要があるでしょう。

(引用した英語論文の翻訳は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。)

*1:日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」2009

*2:Schoepe et al. Glucocorticoid therapyinduced skin atrophy. Experimental Dermatology 2006: 15: 406–420.

*3:Lehmann P et al. Corticosteroid atrophy in human skin. A study by light, scanning, and transmission electron microscopy. The Journal of investigative dermatology. 1983 Aug;81(2):169-176.

*4:アトピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう。」より

*5:El Madani et al. In vivo multiphoton imaging of human skin: assessment of topical corticosteroid-induced epidermis atrophy and depigmentation. Journal of Biomedical Optics. 2012 Feb;17(2):026009.