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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

乳児湿疹について

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赤ちゃんにできた湿疹がなかなか治らないため、途方にくれているお母さん方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

湿疹の場所が広がったり、かゆがったり、かきむしったりしているのを見ると、何とかしてあげたいと思います。でも、具体的にどうしたらよいのかわかりません。

食べ物がいけないのか、ばい菌がついたのか、おむつかぶれなのか、アレルギー検査をしたほうがいいのか・・・。

夫に相談してみても、そのうち治るんじゃないか、などと生返事で頼りになりません。

インターネットで検索してみても、ニキビやら、脂漏性湿疹やら、あせもやら、アレルギーやら、どれにあてはまるのか、いまいちわかりません。

そして、ある日、意を決して、赤ちゃんを抱いて小児科または皮膚科を受診します。

さっと視診をした医師から「乳児湿疹ですね~」と診断されます。「これを何日おきに1日何回塗ってください」と言われ、保湿剤とステロイド外用薬を処方されて、あっさりと診察は終わります。

薬局で購入したステロイド。塗れとは言われたけど、本当に赤ちゃんにステロイドを使っても大丈夫なのでしょうか。

 

日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2009)では、乳幼児に対しても、ステロイド外用薬を使用するよう指導しています。

乳幼児,小児:原則として,皮疹の重症度が重症あるいは中等症では表2に示したよりも1ランク低いステロイド外用薬を使用する.ただし,効果が得られない場合は十分な管理下で高いランクのステロイド外用薬を使用する.

一方、ステロイド外用薬の添付文書では、小児等への使用に関し、特別な注意を促しています。

小児等への使用
長期・大量使用又は密封法(ODT)により発育障害をきたすおそれがある。また、おむつは密封法と同様の作用があるので注意すること。 
ロコイド軟膏の添付文書より

この「おむつは密封法と同様の作用がある」という点について、参考となる報告がありますので一部引用します。

背景:
ステロイド外用薬の長期連用は、視床下部-下垂体-副腎(HPA)系を一時的に抑制する。ステロイド外用薬を投与された乳児は、HPA系の抑制によるクッシング症候群や副腎皮質機能低下症の大きなリスクをもつ。なぜなら、グルココルチコイドは、おむつのあたる部分から高度に吸収されるからである。ここに、我々は、母親から処方箋なしに強力なコルチコステロイド外用薬(プロピオン酸クロベタゾールと吉草酸ジフルコルトロン)を投与されていた生後3~8か月の乳児6人(4人の女の子、2人の男の子)について報告する。

方法:
我々は、乳児のHPA系と強力なグルココルチコイド療法による他の副作用を調査した。コルチコステロイド外用薬の中止後、血清中のAST、ALT、脂質、早朝コルチゾールおよびACTH値を測定した。低用量ACTH刺激試験を実施した。グルココルチコイド離脱症候群を予防するため、ヒドロコルチゾン服用を開始し、その服用量を漸減した。脂肪肝を調査するため、腹部超音波検査を行った。

結果:
ACTH刺激試験は乳児のHPA系の抑制を示した。すべての乳児に肝腫大がみられ、3人に脂肪肝がみられた。5人に肝トランスアミナーゼ値の上昇がみられた。患者5人は、6~14か月にわたり追跡調査された。1人が全身性サイトメガロウイルス感染症のために死亡した。

結論:
医師はステロイド外用薬の危険な副作用について注意を怠らないこと、長期連用を避けるべきであることを、我々は強調する。また、ステロイド外用治療が選択されたときは、親に対して副作用の情報を提供するべきである。*1 

おむつにあたる部分からの吸収という点のほかにも、いろいろと考えさせられるケースです。強いランクのステロイドを長期外用させた母親の独断が招いた悲劇、とも考えられます。一方で、医師の管理下で低いランクのステロイドを一時的に使用するのであれば問題は少ない、とも考えられます。

  • 適切なランクのステロイド外用薬を使用する
  • 長期連用を避ける
  • 医師は親に対して副作用の情報を提供する

上記3つがここでのポイントになるかと思います。

「適切なランクのステロイド外用薬」については、さすがに、普通の湿疹の赤ちゃんにデルモベートやネリゾナを処方する医師はいないと思われます。ミディアムランクのアルメタ、キンダベート、ロコイドあたりが多いのではないでしょうか。

個人的には、「長期連用を避ける」ということが、一部の患者にとって難しいのではないかと危惧します。薬で一時的に抑え込んでも、再燃することがあるからです。寛解と再燃を繰り返す負のスパイラルに陥ってしまうかもしれません。

「副作用の情報の提供」については、小児科であっても、皮膚科であっても、副作用について時間を割いて説明してくれる医師はなかなかいないと思います。また、ステロイドを処方するにあたり、細菌感染・真菌感染・ウイルス感染の判別をしない医師がほとんどではないでしょうか。視診でわかる、確定診断には時間もお金もかかる、などと弁明されそうですが、この是非は論じられて然るべきと思います。ともかく、赤ちゃんに湿疹ができていれば、とりあえず乳児湿疹と診断されてしまうので、本当にステロイドによる治療が適切なのかどうかも慎重に判断する必要がありそうです。

 

日本では、アトピー性皮膚炎の情報に関して、日本皮膚科学会による標準治療の情報に偏りがちです。海外にはどのような情報があるのか、参考までに、アメリカ皮膚科学会のアトピー性皮膚炎ガイドライン(2014)の一部を引用してみます。

アトピー性皮膚炎治療におけるコルチコステロイド外用薬の使用に関する勧告

コルチコステロイド外用薬は、スキンケアや習慣的な保湿剤単独での使用が有効でなかったアトピー性皮膚炎患者に対して推奨される。

アトピー性皮膚炎の治療における特定のコルチコステロイド外用薬の選択に際しては、患者の年齢、薬剤を外用する体の部位、乾燥の程度や患者の希望、および薬価などの因子を含む、さまざまな要素が考慮されるべきである。

1日2回のコルチコステロイドの外用が、一般的にアトピー性皮膚炎の治療には推奨される。しかし、エビデンスは、いくつかのコルチコステロイドでは1日1回の外用でも十分かもしれないことを示唆している。

炎症の頻発部位における維持療法(1-2回/週)としてのコルチコステロイド外用薬の予防的(プロアクティブ)・間欠的な使用が、再発防止のために推奨され、かつ、保湿剤単独の使用よりもより効果的である。

視床下部-下垂体-副腎系抑制の可能性を含む、局所的および全身的副作用の可能性について、とりわけ、コルチコステロイドを使用しているアトピー性皮膚炎をもつ子供の場合には、考慮されるべきである。

長期にわたる強力なステロイド使用の間は、皮膚の副作用について身体検査による観察が推奨される。

アトピー性皮膚炎患者の全身的副作用について、推奨される特定の観察方法はない。

アトピー性皮膚炎におけるコルチコステロイド外用薬使用に関する副作用への患者の不安は、認められるべきである。そして、患者が積極的に治療を受けること(アドヒアランス)への改善に取り組み、不十分な治療を避けるべきである。*2

赤字の部分、子供の場合は、局所的および全体的副作用の可能性について考慮されるべきと注意喚起があります。また、ステロイド外用薬が第一選択ではないこと、そして、日本のガイドラインよりも副作用への配慮が感じられます。

 

ステロイドの長期連用のリスクを回避するために、重症例を除き、「しばらく様子をみる」という選択肢もあるかもしれません。たとえば、次のような、ステロイド外用薬の使用に否定的な医師の意見も傾聴に値するでしょう。

ステロイド外用剤が開発されていなかったとき、アトピー性皮膚炎は、重症と思われていても成人までに、ほとんどは2~3歳までに自然にあるいはステロイドの入っていない弱い作用の外用治療で治っていた。アトピー性皮膚炎は怖い病気ではなかったのである。この事実は非常に重要であるが、最近のほとんどの皮膚科医、小児科医には忘れられている。
佐藤健二「患者に学んだ成人型アトピー治療」より

次のリンクは、アトピー性皮膚炎・乳児湿疹は自然に軽快するとして、ステロイドを一切使わず治療している医師のブログです。

佐藤美津子のブログ

また、次のように語る医師もいます。

私にはっきり言えることは、私の子供がアトピーだったら、たとえ脱水で大変な思いをしたあとであっても、私は子供にステロイドを外用しません。依存に陥ってしまった患者の離脱の辛さ・苦しさを知っているから。
アトピー性皮膚炎の乳幼児の脱水症について

乳児湿疹の赤ちゃんにステロイドを使用するかどうか、最後に選択するのはお母さんです。言い換えれば、治療法を選択する自由は患者の側にあります。後悔のないよう、あらゆる情報を吟味してより良い治療を受けたいものです。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の翻訳は当サイトによります。正確な翻訳を期していますが、正確性を保証するものではありません。赤字は当サイトによる強調表示。)

*1:J Pediatr Endocrinol Metab. 2007 Nov;20(11):1173-82.
"Cushing's syndrome and adrenocortical insufficiency caused by topical steroids: misuse or abuse?"

*2:Eichenfield et al. Guidelines of care for the management of atopic dermatitis Section 2. Management and treatment of atopic dermatitis with topical therapies. J AM ACAD DERMATOL VOLUME 71, NUMBER 1