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アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

ステロイド論争(その2)

脱ステロイド

標準治療派の医師や患者は、ステロイド外用薬およびタクロリムス軟膏の安全性と有効性を主張しています。一方、脱ステロイド派の医師や患者は、その副作用の危険性を主張します。なぜ、お互いの主張は対立してしまうのでしょうか。

双方の主張の根拠となる考え方を探るため、以下、アトピー性皮膚炎患者の典型的な病気の経過を追ってみたいと思います。

下図に示されたグラフは、縦軸がアトピー性皮膚炎の重症度、横軸が時間の経過を表しています。赤棒はステロイド外用薬の使用を表しており、この場合、縦軸は外用量です。

 

(A)ステロイド奏功型

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1回ないし数回のステロイド外用薬の使用で、きれいに皮膚症状が治まるタイプです。このタイプは、

  • そもそも慢性疾患(アトピー性皮膚炎など)ではない
  • 急性の炎症が起きていただけ

という可能性が高いと思います。急性であり、再発も起こらないので、ステロイド外用薬を長期連用することもありません。

 

(B)標準治療型f:id:atopysan:20150411202027p:plain

治療を始めてから、長期にわたりステロイド外用薬を使用しており、比較的良好にコントロールされているタイプです。悪化と寛解の波は穏やかです。

このタイプの中には、ステロイドの量を漸減して保湿剤のみで症状をコントロールできるようになる人もいるようですし、長期連用する間にステロイドの量が漸増して症状が抑えきれなくなる人もいます。後者の一部が脱ステロイド型へ移行します。

 

(C)脱ステロイド型

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(B)の後、一部の人がこの経過をたどります。ステロイド外用薬がだんだん効かなくなり、薬のランクが上がり、外用量も増え、ステロイドへの不信が高まったところで、脱ステロイドを実行します。

壮絶な1回目のリバウンドを経た後は、個人差があるようです。つまり、脱ステロイド期の長さが異なります。速やかに離脱症状から抜け出せる人もいるようですし、何年間もひどい悪化を繰り返しながら出口の見えない状況に悩まされている人もいます。後者の一部が、標準治療型Ⅱへ移行します。

推測ですが、脱ステロイド期の長さは、それまでの標準治療期の長さが大きく影響すると思われます。そのため、5年や10年にわたり、長期間ステロイド外用薬を使用していた人が、コントロールできなくなった場合、大変厳しい状況に追い込まれるのではないでしょうか。脱ステロイドをして一度寛解したとしても、いわゆる脱ステ後の再悪化が際限なく襲ってくるかもしれません。

 

(D)標準治療型Ⅱ

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(C)の後、一部の人がこの経過をたどります。脱ステロイド後、何年たっても良くならないために迷いが生じ、そうした時に標準治療の宣伝などに触れ、再びステロイド治療に戻るタイプです。家族が強制的に病院へ連れて行くケースもあります。

久しぶりに大学病院などの皮膚科を訪れた患者は、標準治療を受けないことを医師から責められ、ステロイドを処方されます。休薬期間が長く、また、比較的多量に外用するので、症状はみるみる治まります。すると、以前の自分のやり方は間違っていたと思うようになり、積極的にステロイド外用薬を使用するようになります。

個人的には、標準治療期Ⅱに入った人の5年~15年程度の長期経過を追跡してほしいと思います。はじめの数年間は、ステロイド外用薬が奏功すると思われるので、その後どうなるかがポイントです。なぜなら、過去に一度、ステロイドによるコントロールがうまくいかなかった実績があるからです。

標準治療でステロイド外用薬によるコントロールができなくなった場合、現在のところ、ステロイド内服、タクロリムス軟膏、シクロスポリン内服くらいしか選択肢がありません。いずれも免疫抑制剤です。

 

以上をまとめてみます。

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患者は、図中グリーン色で示された標準治療期にいる間は、標準治療派となります。 オレンジ色で示された脱ステロイド期にいる間は、脱ステロイド派となります。患者双方の主張が対立するのは、それぞれ自分の実践している治療が間違っていないと信じたいからでしょう。

医師の場合は、自らを脱ステ医と認める医師以外のほぼ全てが標準治療派です。日本皮膚科学会およびガイドラインが標準治療を勧めているので当然といえば当然ですが、もう少し検討を加えたいと思います。

患者は、オレンジ色の脱ステロイド期にいる間は、標準治療派の医師を訪れることはありません。脱ステ医を訪れる場合を除いて、どこの皮膚科にも行かないでしょう。なぜなら、皮膚科医のせいで最悪の状態になってしまったと考えているからです。

したがって、医師は、脱ステロイド後の最悪期の症状を実際に見ることはありません。見たことがないので、リバウンドをはじめとした副作用の存在をにわかに信じられないのです。

さらに、患者が脱ステロイドをあきらめて大学病院などの診察を受けた場合、そのひどい症状を見た医師は、患者がそれまで脱ステロイドを実践していたと聞くと、脱ステロイドへの嫌悪感を募らせることになります。ステロイド外用薬の使用がそもそもの発端であるとは露ほども考えず、脱ステロイドをするから症状が悪化するのだと決めつけてしまいます。

先に述べたように、この患者はいったんは良くなることが多いです。そして、「脱ステロイドをやめて標準治療を受け良くなった患者」として、標準治療派の医師の宣伝に利用されることがあります。標準治療を紹介するメディアで体験談を語る患者です。

一方で、脱ステロイド派の医師は、グリーン色とオレンジ色の時期のすべての経過を把握しています。ステロイド外用薬でコントロールできる場合があること、また、コントロールできなくなる場合があることを知っています。ステロイドへの依存やリバウンドなどの熾烈な副作用を目の当たりにして、臨床医として見て見ぬふりはできないのだと思います。

したがって、医師双方の対立は、知らないがゆえに不信感をもつ標準治療派と、知っているがゆえに後へは引けない脱ステロイド派の対立といってよいと思います。