アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

完治を謳うブログの誤り

インターネット上にはアトピー性皮膚炎に関する情報が氾濫しています。

悲しいことに、いい加減な情報ほど、検索エンジンの結果上位に上ってくるような気がします。

普段は無視しているのですが、最近、黙って見過ごすことのできない情報を目の当たりにしました。

それは、アトピーを完治させたという自称元アトピー患者のブログ(以下、ブログAという)における顔のアトピーについて書かれた記事です。

当サイトとしても他山の石とするべく、記録しておきたいと思います。

 

プロトピック軟膏の副作用

まず誤りについて。ブログAの当該記事において、

「プロトピックではステロイドのように酒さや赤ら顔になるような副作用が出ない」

旨の記述がありました。この記述は誤りです。

「プロトピック軟膏0.1%」の添付文書(第16版)には、副作用の項に「酒さ様皮膚炎」の記載があります。

これは、発売後に使用上の注意を改訂してわざわざ書き加えられたのものです。

 

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(厚生労働省医薬食品局監修, 日本製薬団体連合会編集・発行「医薬品安全対策情報ー医療用医薬品使用上の注意改訂のご案内ーNo.152, 2006.9.」)

 

プロトピックを使用して、酒さ様皮膚炎を起こす可能性はあります。

 

この他、ブログAには気になる点が続々とみられました。

今後、患者発信のブログを読むうえで、参考となる事例かもしれないので、記録しておきます。

 

顔アトピーに使える市販薬

ブログAの同記事は、顔のアトピーに使える市販薬があるとして、資生堂の「IHADA」とロート製薬の「メンソレータム かゆピット」を挙げていました。

しかし、IHADAシリーズのうち乳液タイプの「イハダ ドライキュア乳液」の添付文書には、次のように使用上の注意が記載されています。

次の人は使用しないでください(中略)

(3)アトピー性皮膚炎の人(軽い症状であっても医師の下で適切な治療を受ける必要があります)

これはアトピー性皮膚炎の人には使えないのではないでしょうか。

 

化粧品・医薬品等は、同じシリーズ内でも、効能効果が異なることがあります。

IHADAのラインナップの中には、アトピー性皮膚炎にも使えるタイプがあることでしょう。

しかし、IHADAの乳液タイプに限っては、アトピー性皮膚炎の人は使用しないでくださいと、メーカーが注意しています。

なお、IHADAにしても、かゆピットにしても、添付文書の適応症あるいは効能効果の欄において、皮膚炎や湿疹等の記載はありますが、「アトピー性皮膚炎」と記載されているわけではありません。

 

 

投薬や治療方法に関する指導

その他、ブログAを読んで気になったのが、顔に出たアトピー性皮膚炎に対して、

「皮膚科もしくはアレルギー科にて血液検査を受けてください」

とか、

「抗アレルギー薬の内服と抗炎症の塗り薬の処方となります」

など、指導とも受け取れるような、具体的な治療方法を指示していたことです。

患者同士の口コミやオススメ情報のやり取りとは、一線を画す印象を受けるものです。

ブログAの著者が自称するところでは、著者は患者であり、医師ではないはずです。

 

ところで、ネット上の Q&A サービスを運営する OKWAVE は、「禁止事項ガイドライン」において、医療関連の質問への回答者に対して、次のように注意を呼び掛けています。

医師法等に抵触のおそれのある投稿

医療や病気関連について意見やアドバイスを求めるご質問などの場合、医師や薬剤師との直接対話による医療行為では無いため、病状の改善を目的とした投薬や治療方法に関する直接的な指導は、医師法や薬事法・薬剤師法などに触れるおそれがございます。また、治療や投薬に関する副作用や、薬の正しい使用法などに関する情報の正確性・公正性の保証もいたしかねるため、当サイトではこのような投稿につきましては、削除・編集の対象とさせていただく場合がございます。*1

OKWAVE は、回答者の投稿内容によっては、違法行為にあたるおそれがあることを心配しているのです。

 

ブログAが提供する、先に示したような情報は、医師ではない者が、インターネットを介して、不特定多数の者に対し、治療方法を指導する行為のように、私にはみえます。

もしかしたら、ブログAのコメント欄に質問が複数寄せられた場合など、ブログAの管理者が、質問者に対し、質問者を観察することなく、投薬や治療方法に関する直接的な指導を、反復継続の意思をもって行う事例が出てくるかもしれません。

そのとき、薬による副作用など、指導した行為によって、人体に危害を及ぼすおそれがないとは言えず、正常な医療を受ける機会が失われないとも限りません。

 

しかし、仮にブログAの情報を信じて損害を被ったとしても、損害賠償を求めることは難しいのかもしれません。

日本インターネット医療協議会は次のような見解を示しています。

7 情報の利用は自己責任が原則

不特定の多数を相手に提供されている情報を利用して、万一利用者が不利益を被っても情報提供者の責任を問うことは難しくなってきます。「情報の利用は自己責任で」を基本に、冷静、慎重に情報を利用すべきでしょう。*2

自己責任が原則であれば、情報の利用者はリテラシーを身に着ける必要がありそうです。

 

サプリメントへの誘導

ブログAは、顔にアトピーが出て悪化した場合の治療方法を指示したうえで、

「根本改善には、腸内環境改善が必要」

である旨述べていました。

なぜ、唐突に、腸内環境改善を言い出すのか、不思議に思いました。

 

腸内環境改善の文字をクリックすると、腸内環境改善を解説したページが開かれました。

さらにそのページには、乳酸菌等のサプリメントのページへのリンクが張られていました。

サプリメントのページへ行くと、今度は様々なサプリメントメーカーのサイトへのリンクが張られていました。

このように、乳酸菌等のサプリメントの商品サイトへたどり着くように、丁寧にきちんとリンクが張られていました。

なぜなのでしょうか。

 

ところで、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインは、プロバイオティクスについて、次のような見解を示しています。

現時点では,プロバイオティクスは,アトピー性皮膚炎の症状改善に推奨するだけの明確かつ十分なエビデンスはあるとは言いがたい(CQ17:エビデンスレベル:B).*3

また、私は以前、乳酸菌のサプリメントを試したことがありますが、皮膚症状改善の効果は感じられなかったという個人の感想を申し添えておきます。

 

誰の情報かわからない

ブログAで気になった点は他にもあります。

ブログAでは、情報ソースの開示が必要と考えられる場合でも参照元が明示されず、その情報を「誰が」言っているのかがわからない場合が多いのです。

例えば、ブログAは、顔に出るアトピーについて、

「根本改善には、腸内環境改善が必要」

などと、客観的な事実であるかのように断言します。

通常のリテラシーを持つ者であれば、その事実を証明する根拠を知りたいと考えるでしょう。ところが、参照すべき情報の出所は明示されません。

そのため、この情報を、ブログAの著者が自ら主張として述べているのか、それとも他の誰かが言ったことを参照しているのかが、わからないのです。

一方で、同記事では、画像の出所についてはURLを示していました。一応、引用元のURLを確認してみると、引用元のウェブサイトはその画像を他から引用していました。

つまり、ブログAは、引用の引用、孫引きをしていました。 

 

いつの情報かわからない

さらに、ブログAの他の記事をチェックすると、それぞれの記事に投稿日の日付が付されていませんでした。

医療情報は、いつの時点の情報であるかが極めて重要な価値基準だと思います。医学の進歩が早く、日々新たな発見があるからです。

ですから、記事に日付を付すのは当然といえ、追記する場合も追記部分に日付を付して、履歴を残すのが一般的です。

しかし、どのような理由があるのかわからないのですが、ブログAの記事には日付が付されていません。

 

著作権について

ブログをやっているとよくわかるのですが、ブログで記事を書くときに、出所を明示しないことの "メリット" があると思います。

ここで、出所を明示しないこととは、外部の情報源からコピー&ペーストした文章を、引用部分とするのではなく、「てにをは」を変えて、あたかも自分で書いた文章のようにすることです。

もう少し詳しく説明します。

ブログを書く際、他サイト等からコピペしてきた、出所を明示すべき引用部分は、その部分が明確となるよう引用タグで囲みます。

そのとき、他サイトからのコピペが多いと、引用部分だらけになり、見た目が他人の文章の寄せ集めのようになってしまいます。

そこで、全体として自分で書いた文章のようにみせかけるために、コピペした文章の「てにをは」を変えて、手軽に自作の文章にしてしまうのです。

私自身は、こうした小細工だけはしないよう自らを律しています。他方、こうした小細工を弄して手軽に記事を書きたい者がいるだろうなという予想もつきます。

もっと言えば、インターネット上に氾濫する出所を明示しない情報は、他のウェブサイトからの無断転載や要件を満たさない引用、翻案等を組み合わせてできているだろうことが推察されるのです。

もしかしたら、当サイトも、どこかで出所を明示されずに引用され、あるいは翻案されているかもしれません。

しかし、こうした行為は著作権法に違反するおそれがあります。

著作権法には罰則規定が設けられており、著作権等を侵害すれば処罰されます。犯罪なのです。

 

アトピーが完治したかわからない

ブログAの著者は、自らのアトピー性皮膚炎を完治させたといいます。

ブログには、完治前後とみられる写真が掲載されていました。

しかし、私の印象では、すっかりきれいになったようには見えませんでした。うっすらと色素沈着が残り、炎症が残っているようにもみえます。

なぜか写真の明度が低く、鮮明ではないので、そもそも判別不能なのです。

 

インターネット上では、アトピー性皮膚炎を完治させたという患者による情報を目にすることがあります。

私はこうした情報を信じません。

なぜなら、第一に、その患者が本当にアトピー性皮膚炎かどうかわからないからです。 第二に、その患者から完治を証明する証拠が提示されないからです。

アトピーであるかどうかわからない症状が完治したと主張しているにすぎません。

また、私はこうした情報に大変悪い印象を持っています。

なぜなら、アトピー性皮膚炎への効果があるようにうかがわせておきながら、実際にはアトピー性皮膚炎に対する効果が確認されていない、特定の商品・サービスの紹介と結びついていることが多いからです。

私は、本当に、アトピー患者を食い物にする人たちが許せません。

 

今回、ブログAについては、プロトピックで酒さや赤ら顔になるような副作用は起きないというので、誤りを指摘せずにはいられませんでした。

この情報が誤っていることは、添付文書を確認すればすぐにわかることです。ブログAは添付文書すら確認していないのでしょう。

酒さ様皮膚炎は、私も経験がありますが、大変な苦痛を伴うものです。肉体的、精神的、経済的な損害を被ります。実害が大きいです。

自己の責任で自分の身を守るためにも、インターネット上の情報は、よく出所を確認した方がよいようです。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

*1:OKWAVEはじめてガイド

*2:日本インターネット医療協議会「インターネット上の医療情報の利用の手引き」より

*3:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版