アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

「論文が出た」だけでは正しさの保証にならない?

togetter に次のまとめが掲載されていました。

 

「毎日新聞の記事「アトピーにステロイド必須?」をめぐって:「論文が出た」だけでは正しさの保証にならない」

(※当ブログの常連読者の皆様は、わざわざクリックして読んでみても、得るものは少ないでしょう。)

 

毎日新聞の2017年4月7日付の記事「アトピーにステロイド必須?」に批判的なツイートをまとめたものです。

一読し、さまざま反論したい点がありましたが、個別の言及はしません。

なぜなら、ツイートしている人々の考え方がどうにも理解できず、飲み込めず、引用する価値が見出せないからです。こうした人々は、何が起きても、何やかやと過剰な発言をするのでしょう。

また、アトピーにステロイドが必須であろうとなかろうと、私がかつてステロイドを使って劇的に悪化し、ステロイドを使わないことで改善し、現在も一切ステロイドを使わずに症状を維持している事実は変わりません。

一方、ステロイドを使って症状を維持している患者もいますから、ステロイドを使ってはいけないと、ここで主張するつもりもありません。

 

アトピーにステロイドが必須かどうかを考えるうえでのポイントは、長期にステロイドを使用すると依存する可能性があることです *1 *2 *3

依存が生じた患者や、最初から依存を避けたい患者のための、ステロイドを使わない治療のノウハウが求められています。その意味においては、ステロイドは必須ではありません。

ともあれ、できるだけ客観的に、このようなtogetterのまとめをみて、どのような感想を抱いたかを書き記そうと思います。

 

このまとめでは、佐藤美津子医師や深谷元継医師らがまとめた論文 *4 が、Dove Medical Press という出版社のジャーナル Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology に掲載されたことを問題視しています。

具体的には、Dove Medical Press が、4年前にオープンアクセス学術出版社協会から、編集プロセスに厳格さを欠くとして1年間以上の会員除名処分を受けたこと。

また、研究者に対して投稿を呼びかけるメールを頻繁に送り付けたり、論文の要旨をまとめて採用か不採用かをチェックするだけの査読依頼をしているらしいこと。

その他、インパクトファクター(2015年時点)が、例えば 古江論文が掲載された British Journal of Dermatology の4.317と比べて、Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology は 3.26 と低いことなどが指摘されています。

つまり、togetter のまとめは、「毎日新聞が、信頼性の低いとみられる出版社に掲載された、信頼性の低いとみられる論文を記事で取り上げたこと」を問題視しているのです。

論点といえるのはこれくらいで、残りは、的外れとしか思えない指摘や、論文と直接関係のない、毎日新聞や執筆記者を貶めるような指摘が目立ち、見るに堪えませんでした。

 

けれども、出版社や雑誌の質が、掲載されたあるひとつの論文の質を、完全に、決定づけるものなのでしょうか。もしそうであれば、確かにその点を考慮したうえで論文を評価する必要があるでしょう。

この点、Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology の質が低いのかどうか、私にはわかりません。

ただし、今回の論文の結果に示された「ステロイドを使用しない場合の改善率」のデータそのものは、雑誌のインパクトファクターの高低によって変わるものではありません。この論文が Nature に掲載されようと、他の雑誌に掲載されようと、それが捏造等されたものでない限り、当該データそのものが変わるものではありません。

togetter まとめでは、この論文の要である当該データ「ステロイドを使用しない場合の改善率」への批判は見当たらず、論文掲載誌の信頼性や、毎日新聞の信頼性や、ランダム化比較試験ではないという試験の信頼性などに対する、私から見て本質を捉えていない批判ばかりでした。

要するに、"ステロイドを使う標準治療よりも、ステロイドを使わない治療の方が改善率が高いらしいこと" に対する、真正面からの批判はありませんでした。

これはすなわち、批判をする人たちが批判をすればするほど、「ステロイドを使用しない場合の改善率」が、批判の当たらない、非の打ち所のないデータであることを浮き彫りにしたといえましょう。

 

f:id:atopysan:20170414081227j:plain

 

私は、この togetter のまとめを読んで、何ら得るものがなく、心に響くものがなく、門外漢が好き勝手なことを言っているに過ぎない、という感想をもちました。 

それがなぜかを考えてみたところ、「ステロイドによるリバウンド」を経験しているか否かが、大きいように思います。

私は、いわゆるアトピー患者のなかでも、リバウンドを経験したことがある人の意見は、それなりに聞く耳をもって聞きます。リバウンドは生き地獄といってよいほど大変に辛いものです。あの辛さを乗り越えてきた体験をもつ者同士、同じ釜の飯を食ったというか、ある種の仲間感覚を持ちうるのです。

また、医師については、リバウンドを最初から最後まで見届けたことのある医師であれば、信頼することができます。皮膚が剥がれ落ち、滲出液が出て、全身真っ赤になった患者を少なくとも数か月間にわたり見守る責任を引き受けられる人物かどうかをみます。

一方で、ステロイド使用患者のうちリバウンドを経験したことがない患者、そして、医師のうちステロイドの短期投与経験のみでリバウンドを離脱完了まで見届けたことがない医師に対しては、ステロイドを語るな、という思いを抱くのです。

いわんや、ステロイド依存やリバウンドを認識すらしていない医師には、ステロイドを処方する資格はないと私は思います。

 

ところで、「論文が出ただけでは正しさの保証にならない」という指摘は、ステロイド治療にも当てはまります。

つまり、ステロイド治療が正しいとする標準治療も、論文を根拠としている以上、正しさの保証はないことになります。

私もそう思います。

 

*1:Fukaya M et al. Topical steroid addiction in atopic dermatitis. Drug Healthc Patient Saf. 2014; 6: 131–138.

*2:Hajar T et al. A systematic review of topical corticosteroid withdrawal (“steroid addiction”) in patients with atopic dermatitis and other dermatoses. Journal of the American Academy of Dermatology, March 2015, Volume 72, Issue 3, Pages 541–549.e2.

*3:Topical corticosteroid withdrawal | DermNet New Zealand

*4:A prospective study of atopic dermatitis managed without topical corticosteroids for a 6-month period