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アトピーの平均診察時間が2分以下?

ニュースイッチというウェブサイトに、2017年7月26日付で、

「アトピー性皮膚炎の平均診察時間が2分以下という深刻度」

という記事が掲載されました。

サノフィ株式会社がアトピー性皮膚炎患者1万300名を対象に行った自己意識調査の結果をもとに書かれた記事です。

目を引くのは、「平均診察時間が2分以下」というタイトルの文字。本文中にも同様の表現があります。

日本医科大学千葉北総病院皮膚科の幸野健教授は、アトピー性皮膚炎患者の31・3%が、平均診療時間が2分以下にとどまっているとの調査結果を嘆く。*1

この「2分以下」の文字を目にした読者は、なんと短い診察時間なのだと憤慨する人もいるかもしれません。

 

しかし、この記事タイトルの数字は、サノフィの調査結果と異なります。

サノフィのプレスリリースによれば、調査において、「診察室で医師または自分が話している時間」は、平均で4分あまりです。

「診察室で医師または自分が話している時間」は3分以下が54.7%
・「診察室で医師または自分が話している時間」は、平均4.2分だった。
・54.7%は3分以下、31.3%は2分以下の時間しか話ができていないと回答。*2

2分以下というのは、約3割の患者で2分以下しか話ができていなかったとのことです。平均診察時間ではありません。

マスメディアはインパクトのある数字をタイトルに用いる傾向があります。当該記事では「平均診察時間が2分以下」を目玉にもってきたのでしょう。確かにインパクトはあります。しかし、事実とは異なります。

昨今ではSNSで情報が発信されることが多く、こうした情報をソースを確認せずに拡散する人もいるので始末が悪いです。

細かい話をすると、「診察室で医師または自分が話している時間」の平均が4.2分だったのですから、診察室に入って椅子に座るまでの時間、服を脱いだり着たりする時間、視診や触診をする時間、採血をする時間、処方内容や次回予約を確認する時間などを含めずに、患者は回答しているかもしれません。そうだとすれば、診察時間全体としては、より長くなるはずです。 

 

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いずれにせよ、私は、アトピー性皮膚炎の診察において、初診ではなく再診であれば、2分~4分の対話時間はあり得る話だと思います。

そして、2分以下で終わったとしても、診察で必要な事柄が満たされているのであれば、問題はないと思います。

診察が長ければ良いというものでもありません。医師と患者双方にとって、診察に必要な時間が確保されることが大切です。

例えば、患者の話をさえぎるなど、患者に話をする機会を与えずに診察時間が短くなっているとすれば問題でしょう。

 

推測ですが、診察における対話時間が短い要因は、医師側の都合に限らず、患者側の都合も大きいように思います。

第一に、患者のなかには、薬さえもらえればよいと考える人がいます。その場合、対話時間は短くなるでしょう。

第二に、患者が医師との対話によるカウンセリング効果を期待していないことが考えられます。再度、サノフィのプレスリリースから引用します。

なぜ、患者さんは症状に付随して起こる「悩み」を医師に伝えていないのか?という質問では、殆どの患者さんが「医師に話すほどのことでもない」、「医師に話したところで解決しない」、「医師が忙しそうにしているので、時間を取ってもらうのは申し訳ないと思う」と回答。

これは私も同意するところです。

医師に話したところで解決しないのです。話しても無駄なので、うまく会話を終わらせるように話をもっていくこともあります。

患者は診察の事前にインターネット等で情報を得られます。私の場合、最近得られた知見について、医師からもっともらしく語られても、「そんなこと知ってるよ」と思ってしまうことがあります。

患者は、誰でもネットから得られる情報よりも、プロフェッショナルでしか知り得ない情報を話してほしいと考えていると思います。その話ができないなら、薬だけもらってすぐにも帰りますよ、という具合です。

医師と話せば話すほど、皮疹が良くなるわけではありません。

誤解されないように申し添えると、患者が医師に聞きたいことがあり、質問がなされた場合は、相応の時間を割くべきです。ケースによっては、10分でおさまらない場合もあるでしょう。

 

標準治療として行われるアトピー性皮膚炎の診察は、実質的に、ステロイドの処方手続であると私は考えます。

多くの医師は、皮疹をみて、ステロイドやプロトピックを処方することを決めたり、剤型やランクを調整したりすることに重きを置いています。

多くの患者にとっても、皮疹を改善させる手段はステロイドやプロトピックでしょう。ですから、患者が治療内容について特段聞きたいことがなければ、ステロイドの処方手続が済んだところで、必要以上に対話時間を設ける意味はほとんどありません。

 

ここで、診察がステロイドの処方手続という前提からすると、診察時間の長短よりも重要な問題があります。

再診時において、医師がこれまでに処方したステロイドの使用結果を評価できているかということです。とりわけ副作用を鑑別できているかという問題です。 

聖マリアンナ医科大学皮膚科教授(当時)の故溝口昌子氏は、次のように医師に対して警鐘を鳴らしています(引用文中のADとは、アトピー性皮膚炎のこと)。

漫然とステロイド外用を続ければ副作用は当然生じる。(中略)皮膚乾燥のみの軽症を除けば、AD治療の第1選択薬はステロイド外用薬であるから、皮疹と副作用を見分けることのできない医師はADの治療に当たるべきでないと考える。

以前よりADは自然治癒が遅れ、成人のAD患者が増えている。ADの遷延化に伴い、より長期間薬剤を使用することになるのであるから、副作用発現にはより注意を払う必要がある。*3

アトピー性皮膚炎の診察に関しては、診察時間よりも、ステロイドの用い方や副作用に注目するべきです。

仮に診察時間が1分であったとしましょう。1分とはいえ、ステロイドが処方されたため、皮疹が改善するケースがあるでしょう。一方、ステロイドが処方されたために、ステロイド依存になってしまうケースもあるでしょう。 

アトピー性皮膚炎の標準治療においては、医師が患者のステロイド使用状況を把握し、副作用に注意しつつ経過をみているのであれば、診察時間が短いとしても、大きな問題はないと思います。標準治療そのものの是非は措きます。

診察時間が2分以下であることに目くじらを立てるよりも、ステロイドを漫然と処方したり、皮疹と副作用を見分けることのできない医師を非難するべきでしょう。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の赤字による強調表示は当サイトによります。)

*1:アトピー性皮膚炎の平均診察時間が2分以下という深刻度

*2:サノフィ株式会社 2017年7月13日付プレスリリースより

*3:溝口昌子, アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用療法. 日医雑誌 第119巻・第2号, 1998.