アトピー覚書ブログ

成人型アトピー 脱ステ・脱保湿患者のブログ

プロアクティブ療法はいつまで続ければよいのか?(2)

朝日新聞に

「アトピー、薬塗り続ける新治療 「見えない炎症」抑える」(2017年7月19日)

という記事が掲載されました。

 

内容は、

  • プロアクティブ療法の紹介
  • 新薬の紹介

の2本柱です。

 

ガイドラインの改訂から約1年半、プロアクティブ療法導入後の "うまくいっている" 症例が集まってきているのかもしれません。

記事は、学会が昨年、プロアクティブ療法を強く推奨したと説明、アトピーの新たな治療法として紹介しています。

ガイドライン2016年版を確認すると、「推奨度1:強い推奨」に該当するのは次の項目です。

  • ステロイド外用薬
  • 症状の程度に応じて1日の外用頻度を減らすこと
  • タクロリムス
  • プロアクティブ療法
  • 内服抗ヒスタミン薬
  • 保湿剤
  • シャワー浴
  • 患者教育

強い推奨とは、ガイドラインによれば、

推奨された治療によって得られる利益が大きく、かつ、治療によって生じうる負担を上回ると考えられる*1

というもの。

なお、新薬の紹介は、デュピルマブとネモリズマブについての既出情報でした。

 

さて、記事では、乳児期からアトピー性皮膚炎に悩まされてきたという、現在4歳になる子どものプロアクティブ療法による治療経過が紹介されていました。

そこで、わかりやすくするために図にまとめてみました。

なお、この図は、記事から判明する内容をもとに作成しています。重症度の推移等は当サイトによる推測を含みます。したがって、図が実際の経過を正しく表していない可能性があることをご承知おきください。

 

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子どもは、1~2歳時の12月からステロイド治療を始めたようです。

医療機関は、東京慈恵会医科大葛飾医療センターです。

子どもの母親は、当初ステロイド治療に抵抗感をもっていましたが、医師の説明に納得したうえで治療を開始したといいます。

子どもの薄い皮膚にステロイドを塗ることに抵抗があるという母親(33)に同センター小児科の堀向健太・助教は「今しっかり塗ってスキンケアを丁寧に続ければ、塗る量を減らしていける」と説明。納得した母は1日3回、入浴後の娘の全身にステロイドと保湿剤を混ぜたクリームを塗った。*2

毎日ステロイドを塗り、1カ月後には、湿疹はほぼ治まったそうです。

その1年後には、ステロイドは週2回に。

さらにその数か月後には、週1回と、ステロイドを塗る頻度は減っていったそうです。

そして、治療開始から現在まで、約2年半が経過しました。現在の状態は良いようです。

今は見た目でアトピーとわからないほどきれいな状態だ。母は「このまま保湿剤のみのスキンケアになれば」と話している。

これで、めでたしめでたし・・・なのでしょうか。

もしかしたら、この記事を読んだ人は、アトピーとわからないほどきれいになるのだから、プロアクティブ療法ってすごい、という感想をもったかもしれません。

 

私はまったく異なる感想をもちました。

それは、

いつまでステロイドを塗り続ければいいのか

ということです。

記事で紹介されていた子どもは、1~2歳時からステロイドを塗り始め、現在4歳になるまで、約2年半ステロイドを塗り続けているようです。

いったい、いつになったら、ステロイドを塗らずに済むようになるのでしょうか。

週1回の塗布頻度になってから、すでに1年以上経過しています。

記事によれば、母親は保湿剤のみのスキンケアに移行することを望んでいます。

医師は、母親に対してどのように説明しているのでしょう。初診時には「塗る量を減らしていける」と説明していたようです。

塗る量を減らせるけれども、ステロイドをやめられるかどうかの保証はないということでしょうか。

 

そのほか、いろいろと疑問はわいてきます。

  • 2年半ステロイドを塗っても、見えない炎症が残っているということか。
  • TARCの数値はどのように推移しているのか。
  • 2年半の治療中、悪化因子の検索は行われなかったのか。
  • 2年半ステロイドを塗っているのであれば、リアクティブ療法の方が、ステロイドの総使用量は少なかったのではないか。
  • 記事を読む限り、一度も再燃したことがないようだけれども、本当に一度も再燃しなかったのか。
  • リアクティブ療法だったら自然治癒に持ち込めたのではないか。

 

それ以上に、私が懸念するのは安全性です。 ガイドラインから引用します。

プロアクティブ療法は,ステロイド外用薬,タクロリムス外用薬を問わず,皮疹の再燃予防には有用であり,安全性に関しても,ステロイド外用薬で16 週間,タクロリムス外用薬で1 年間までの観察期間においては,多くの報告が基剤の外用と有害事象の差は無いとしており,比較的安全性の高い治療法であると考えられる.ただし,プロアクティブ療法の安全性について,それ以上の期間での検討がなされておらず,副作用の発現については注意深い観察が必要である.*3

プロアクティブ療法の安全性が確認されているのは、ステロイド外用薬の場合16週間です。

一方、この記事の治療では、130週間以上、ステロイド外用薬によるプロアクティブ療法を続けています。

善し悪しを別として、私が驚きを禁じ得なかったのは、この2年半という歳月です。

 

この記事を読んで、私は、私が患者だったら、次のことを初診時に医師に聞くべきだと思いました。

  1. プロアクティブ療法で、いつになればステロイドを塗らずに済むようになりますか? 
  2. プロアクティブ療法で、アトピーは治りますか?

この2つの質問に対して、少しでも言葉を濁すような医師であれば、その医師から2年半以上かかるかもしれないプロアクティブ療法を受けることに、大変に恐怖を感じます。

一般的な答えは次のようなものでしょう。

  1. プロアクティブ療法で、いつかはステロイドを塗らずに済むようになるかもしれない。
  2. プロアクティブ療法で、アトピーは治るとは限らない。

現時点では、アトピー性皮膚炎に対しては対症療法しかありません。アトピーを治せる薬はなく、アトピーを治せる医師は存在しないはずです。

その事実を曖昧にして治療を始めるのは、患者に対して誠実とは言い難いです。

一方で、その事実を医師と患者が認識したうえで治療が始まれば、のちに対立は生じにくいのではないかと思います。

 

さて、乳児に対するプロアクティブ療法について述べます。

かつて、子どものアトピーは、放っておいても、成長とともに自然治癒する病気であったはずです。

私見ですが、そのアトピー性皮膚炎に対して、ステロイドを長期使用したことにより、私のような成人アトピー患者が増えていったのではないかと思います。

この仮説が正しいとすると、子どものアトピーにステロイドを長期使用しなければ、その子どもは自然治癒して、将来成人アトピーに悩まされずに済みます。

この点、皮膚科学会等は、ますます子どものアトピーへの介入の度合いを深め、乳児期からのステロイド治療を標準化しようとしています。

経皮感作を防ぐために生後6か月以内からステロイド治療を推奨し、症状の再燃を防ぐためにステロイド長期治療、すなわちプロアクティブ療法を強く推奨しています。

このことが良いことなのか、私にはわかりません。

デメリットとしては、治療中にステロイドを長期連用しないとも限らないため、ステロイド依存の可能性があります。

また、その場合、ステロイドからの離脱に大変な苦痛を伴うと考えられます。

しかし、プロアクティブ療法を継続可能な個人の場合は、ステロイドへの依存に陥りにくく、離脱は問題とならないのかもしれません。

 

プロアクティブ療法で、生まれてから死ぬまで薬漬けになるかもしれない。

子どものときにプロアクティブ療法を始めてさえいなければ、薬に頼る人生を歩まずに済んだかもしれない。

これらは、100%否定される話ではありません。

そんな可能性の話をしてどうするんだ、という人もいるでしょう。

しかし、この可能性の話は、人生を左右する極めて重要な情報です。それを治療開始前に患者に伝えたのかどうかが問われるべきです。

ともかく、昨今行われ始めた積極的な乳児へのステロイド治療が、将来どういう影響をもたらすのか、子どもたちが成人するまで、また再発期を考慮して、少なくとも今後25年間は、長い目で見守る必要があると思います。

副作用を経験した私としては、子どもに依存やリバウンドが起きないことを、そして保湿剤のみのスキンケアに移行できることを祈るばかりです。

 

ところで、プロアクティブ療法が強く推奨されてから約1年半が経ちましたが、アトピー診療の現場に変化はあったのでしょうか。

私の印象では、プロアクティブ療法が導入されても、現場はあまり変わっていないのではないかと思います。

そもそもリアクティブ療法が有効な患者は、薬の漸減にも成功しやすく、プロアクティブ的な治療を既に行っているのではないでしょうか。

リアクティブ療法がうまくいかない患者は、脱ステしていると思われます。

一方で、アトピー性皮膚炎の新薬に期待する声が聞かれるようになりました。もしプロアクティブ療法が極めて有効であれば、新薬に期待する必要はありません。

なぜ新薬が開発され、それに期待する人が存在するのでしょう。  

朝日新聞は、プロアクティブ療法の有効性を伝えたかったようですが、私には空恐ろしさばかりが残りました。

いずれにしても、保湿剤のみのスキンケアへ移行できていない症例をもって、プロアクティブ療法の有効性を示唆されても説得力がありません。

 

(当サイトはいかなる治療法をも推奨するものではありません。また、当サイトに掲載されている情報を利用することにより発生したいかなる損害についても責任を負うものではありません。)

(引用部分の赤字による強調表示は当サイトによります。)

*1:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版

*2:アトピー、薬塗り続ける新治療「見えない炎症」抑える:朝日新聞デジタル 2017年7月19日15時00分

*3:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版